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ディーバ超次元戦記 〜The World of Twenty-eight Dimensions  作者: 八雲、
2章 〜レンジャーの仕事〜
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31.事後処理

「……以上のことから、今回の件は”事故”ではなく”事件”で間違いないでしょうな」


 その日の夜、通信機を介して各ギルドとリレイクのレンジャー達による報告会が行われていた。リレイクからはジョアンが出席しており、救援作戦終了後の調査結果を報告したのだ。


 救援作戦自体の功績は、他のギルドがメンバー選出にもたついている中で、早々と招集を掛けながら簡易な作戦で被害を最小限に留めた魔王軍による独占であった。


 —— アースから切り離されたリレイク領域は、シャドウ討伐作戦が完了した後もアースには再併合されず、全領域による共同統治となることが決まっている。


 だがその際の各領域の優先度などは何も決まっていない。このため各領域は、主にギルドを通してリレイク領域における影響力を競い合っているのだ。


 そんな中での初めて起きた大きな事件である。元々この手の対応には強い魔王軍であったが、完全に独占されるとまでは思ってなかった各ギルドにとっては手痛い結果となった。


 だがそれとは別に浮上したもう1つの問題。レンジャー曰く、今回の次元の間を塞ぐ扉の不具合は故意的に起こされたものだというのだ。


「つまりは……シャドウに迎合する者がいる、ということかね」


「そこまではわかりかねます。ただ故意的に壊されたというだけなので、どのような意図かは不明です」


「ふーむ……」


 出席者の間に沈黙が流れる。


「……一点、関連すると思われる報告があります。先日、当領域への渡航船内にシャドウが侵入した件ですが、そちらも偶然入り込んでしまったのではなく、何者かが貨物の中に仕込んでいた可能性が高いという結論が出ています」


 追加の報告に、ますます戸惑うような空気が漂う。


 現在、どのギルドも最優先で討伐に当たっている危険生物のシャドウである。それをテロに利用しようとする者達がいるというのは、にわかには信じられない話であった。


「では現時点ではそのようなテロ行為が行われている可能性があるという内容で、各ギルドに持ち帰りとしましょう。今後シャドウが現れた場合は念の為に疑って掛かり、周辺で証拠を集めて犯人を炙り出していくよう努めてください」


「わかりました。では」


 通信が切れる。


(相変わらずギルド間の会議では、大したことは決まらないですね。結局、各ギルドで判断して対応する、に落ち着きますし。まあ主催が実戦経験の無い方々である以上は、仕方無いのですが)


 次元開発機構の管理部門の面々を内心皮肉りつつ、普段いるクエスト受注用カウンターとは違う自身のデスクに肘を突き、椅子に深く腰掛けながらニーナは考え事を始めた。


 何者かはわからないが、シャドウに与する者がいるのは間違いないのであろう。当然それらに対しては、ギルドとして徹底的に潰していく必要はある。


 だがそれとは別の観点からは、不謹慎ではあるがありがたく思うところもあった。


 テロのような突発的な事象への対応は、指示系統が明確であり独断でも結果が伴えば大概のことは許容される魔王軍の得意分野である。


 これらの迅速な対応は、リレイクは勿論のことディーバにおける魔王軍の影響力を拡大する良いネタになり得る。


 もっとも戦闘能力の高い魔族が本気で掛かれば、ディーバ全域を支配下に置くにはひと月あれば十分であろう。そうすれば影響力だなんだというのは、考える必要すらなくなる。


 とは言えそのようなことは、穏健派である魔王が認めないことは容易に想像できる。また何より、ニーナ自身ももしそのような選択肢を与えられたとしても、絶対に取らないと断言できた。


 ニーナ自身も穏健派の考え方に賛同しているのは勿論だが、アースと繋がる以前のパンデムでは考えられなかった、そして魔族間では今後も存在することが無い”力以外の基準による競合い”を楽しいとさえ感じているためだ。


(これも魔神さんの提案に乗ったおかげですね)


 そう考えながら、ニーナは誰もいない部屋に笑顔を向けた。その意味を知る者は誰もいない。

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