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ディーバ超次元戦記 〜The World of Twenty-eight Dimensions  作者: 八雲、
2章 〜レンジャーの仕事〜
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29.【A-特殊】リレイク救援作戦⑤

 アッシュの放物線爆撃、アイリとレイの斬り込み、バッカスの爆発する右手。向かってくるシャドウを次々に消滅させていき、基地の防衛作戦は順調進んでいく。


 次第にシャドウの出現数も減ってきており、ドアの前で警戒しながらシャドウの位置を伝える役割のダビド達から見ても、問題がないことは明らかだった。


 だがダビドはそれを認識しながらも、なんとも言えない不安を感じていた。


「ルカス、ミキス、ニコス……なんか違和感がないか?」


「動きが単調だ」


「あまり強くない」


「正面からしか来ない」


 3人の言葉にダビドは頷く。概ね感じていることは一緒のようだ。


 シャドウの強さは個体によって大きくバラつく。多くはダビド達でもなんとか討伐できる程度のものだが、中にはAランク以上のレンジャーに出動要請が入る程の個体もいる。


 このためシャドウが発見された際は、まず最初にダビド達のような低ランクレンジャー向けで、先行して大凡の強さを調べにいくという内容の特殊依頼が出る。


 渡航船の時もそうだったように、ダビド達はそれを幾度となく受けてきた。


 その経験から言うと、今のところ出現しているシャドウは弱い方に偏っているとダビド達は感じていた。加えて正面から現れては次々と消滅させられていくだけである。


 シャドウは思考能力が無いと言われればそうなのかもしれないが、それでも拭えない違和感があった。


 何か起きる気がする。もしそれが気のせいならば、それに越したことはない。


 と、そこにジョアンがハンマーを担いで戻ってくる。


「遅くなった。だが変換機も復旧した」


「よーし! これで作戦自体はだいたい終わりだな。ジョアン、シャドウの討伐任せるぞ。アッシュ達は警戒続けておけ」


 バッカスが端末を取り出して、どこかに連絡をし始める。すると前方遥か先から渡航船が飛んでくるのが見える。上空で待機していたようだ。


 渡航船は段々と高度を落としていき、基地から数百メートル程先で車輪を出して走行モードに入る。そのまま居住区用の建物の脇まで来て停止すると、ドアが開かれる。


 バッカスが建物の中へと入っていき、少し待っているとレンジャーらしき者達がゾロゾロと出てきた。


「ジョアンが変換機を復旧した。あんたらもエーテル体になって参戦してくれ」


「わかった」


 レンジャー達は先程ジョアンが向かっていった方向へと消えていく。それに続いて今度は作業着やスーツ姿の者達が出口の辺りに溜まり始めた。


「まずは戦えない連中を避難させるぞ」


 バッカスはそう言いつつ渡航船の方へと歩いていく。


 その時、頭上で何かを引き摺るような微かな音が、ダビドの耳に届く。ハッとして建物の上を見上げると、その屋上からシャドウの一部がはみ出していた。


 そして核が下を見るかのように伸びて来たかと思うと、突然シャドウが下に落ちてくる。


「6時の方向! 建物の屋上です!」


 ダビドは叫びながら剣と盾を構える。その目の前に、大きな水玉が地面に落ちたような音を立ててシャドウが着地する。同時に鞭が建物の中にいる非戦闘員達に向かって伸びる。


 ダビドはなんとかシャドウと非戦闘員達の間に飛び込んで盾で鞭を受ける。しかし姿勢が悪く衝撃に身体を支えきれず、ドア横の壁に叩きつけられた。


「ぐっあ!!」


 これまで遭遇した中でもかなり強い個体である。少なくとも今までであれば、即座に撤退して応援要請をするレベルだ。


 視界が霞み、立っていることすらままならない。だがダビドの後ろには、エーテル体ですらない非戦闘員が大勢いる。彼らを巻き込む訳にはいかなかった。


「おおおお!!」


 ダビドは気を振り絞って大声を上げながら、剣をシャドウに向かって振る。だがその横から更に鞭が振るわれて、ダビドの身体がドアから数メートルの所まで弾き飛ばされた。


(くそっ……!! これでは……)


「ダビド! よくやった!」


 バッカスが右手を飛ばしながら叫ぶ。飛んでいった右手は大きな爆発を起こし、シャドウがよろめくように後退する。だがやはり強力な個体なのか、消滅まではいたらなかった。


「チィッ! 強えやつか!」


 バッカスが悪態をつくが、今度はジョアンがシャドウの横に跳んでくる。


「ぬぅんっ!!」


 その見た目からは想像できないパワフルなハンマーの振りが、シャドウの身体に叩きつけられる。シャドウは大きく吹き飛ばされ、数十メートル程離れた場所に立っていた石碑にぶつかる。シャドウがぶつかった衝撃で石碑が中央から折れてしまった。


「しまった……また作り直しだ……」


「助かったぜ、ジョアン。石碑の整理は今のツケで俺も手伝ってやる」


「それなら酒にしろ。アッシュ……といったかな? 今の個体はかなり強力だ。まだ倒しきれていない。私とお前でやつを狩りにいくぞ」


「は、はい! 」


 心配そうにダビドを見ていたアッシュは、ジョアンに声を掛けられて緊張したように返事をすると、その後に続いて飛んでいったシャドウの方へと走っていった。


「ダビド! 大丈夫か!?」


 それと入れ替わるように、三兄弟がダビドの方へと駆け寄る。


「大丈……ぐぅっ!?」


 立ち上がろうとしたダビドの腹に、凄まじい痛みが走る。


「大丈夫じゃねえなそりゃ。骨がイっちまってる。しゃーねえ、お前らはこいつと一緒に戻れ」


「え……ですが……」


 つまりは帰還ということになるのだろう。


「安心しろ、救援作戦はこれで終わりだ。後はさっきの上位連中で一帯のシャドウ討伐をするだけだ。この次には陽動班も帰らせる。……おーい、もう大丈夫だ。さっさと乗り込めー!」


 バッカスが建物に向かって叫ぶと、非戦闘員達がおずおずと建物から出てきて、走るように渡航船へと乗り込んでいく。


「これで全員か?」


「はい」


「じゃあ最後にこいつらも頼むぜ」


 バッカスはルカス達にダビドを運ぶように指示する。ルカスとミキスが両脇からダビドを支えるように肩を入れる。その後ろでニコスがオロオロしている。


「持つとこねえんだからしゃーねえだろう。さっさと乗れ」


「す、すいません……」


 ダビド達が乗ったのを確認し、バッカスは操縦席へと駆け寄る。


「行ってくれ。向こうで下ろしたら、また戻ってきてくれ」


「了解しました」


 操縦士の返事と共に渡航船のドアが閉まり、ゆっくりと動き出す。それを見送ってから、バッカスはアイリとレイに声を掛ける。


「アイリ、レイ。おめえらも次の便で上がりだ。それまでに陽動班を回収しに行くぞ」


「はーい」


 2人はバッカスと共に、陽動班が走り去った基地の左方へと向かった。

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