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ディーバ超次元戦記 〜The World of Twenty-eight Dimensions  作者: 八雲、
2章 〜レンジャーの仕事〜
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28.【A-特殊】リレイク救援作戦④

「11時の方角! 建物の影です!」


 ダビドが声を張り上げる。バッカスは素早く端末から短剣を取り出して右手に持つと、右の手首を左手で握りながら短剣をシャドウに向けた。


 何をするのかとアッシュ達が見ている中、バッカスの右手首が切れてシャドウに向かって飛んでいく。


 シャドウは身体の一部を鞭のように伸ばして撃ち落とそうとするが、右手はそれを上下左右に細かく動きながら避ける。


 飛んでいった右手は、ナイフを深々とシャドウの核へと突き刺す。そしてそれと同時に、ナイフを握っていた右手が弾け飛んだ。


「っ!!」


 かなりの大きな音にアッシュは思わず顔を覆う。


 腕の隙間から見るとシャドウの核は粉々に砕け散っており、シャドウはその場で僅かに震えたかと思うと、核の破片を地面にばら撒きながら消滅する。


 バッカスはいつの間にか再生させた右手で飛んできたナイフをキャッチした。


 これがSランクレンジャー・バッカスである。スライム種としての特徴を最大限に利用しつつ、たった一撃で核を破壊してシャドウを消滅させたのだ。


「凄い……」


「大方のは今ので倒せる。だが見てわかる通り、1回に1体ずつだ。その上に連発はできねえ。繋ぎの牽制はお前らの仕事だぞ」


「3時方向から1体ー!」


 話している暇無く、次のシャドウが現れる。


 アッシュはランチャーを取り出して照準をシャドウに合わせ、相変わらずの不快な見た目に躊躇うことなく引き金を引く。


 だが当然と言えば当然だが、ランチャーの弾はシャドウの鞭によって撃ち落とされ、地面に着弾し爆発する。


 その両サイドからアイリとレイが走り寄る。アイリは渡航船の時のように盾で攻撃を往なしながら、レイは鞭を切り落としながらシャドウとの距離を詰めていく。


 アッシュはランチャーをしまってライフルに切り替えると、正面からエーテル弾の連射を浴びせる。


 数が多いライフルの弾まではさすがに全ては撃ち落としきれないようで、半分程度の割合ですり抜けてシャドウの身体に当たる。


 その中でも更に数発が核を捉えるが、やはりライフルでは大したダメージにはならないようで、シャドウは怯んだ様子も見せない。


 と、スコープ越しにアイリが見えたため、アッシュは射撃を中断する。シャドウに近づいたアイリは、渡航船の時と同じように大きく跳躍し、鞭を利用しながら勢い付けて核を斬りつける。


「やるじゃねえか!」


「でしょ!」


 着地したアイリが自慢げに応える。そのアイリと入れ替わるように、今度はレイが大きく跳躍した。


 そして空中で脚を上げて向かってきた鞭を踏みつけると、その上を走り一気に核に詰め寄って無数の鞭諸共核を斬りつけた。


 レイの一撃を受けて核が分断されるが、シャドウは大きく仰け反ったような格好になって鞭を振り回し始める。どうやら核を分断しても消滅するとは限らないようだ。


 その時、そのシャドウの背後から更にもう1体シャドウが出てくる。


「うそ! もう1体!?」


「引く」


 アイリとレイが後退する。2体同時となると、どれだけ弱くても厄介な相手になるのだ。


「構わん。後は任せろ」


 2人の後退に合わせて、バッカスが再び右手を放つ。今度は高速で回転しており、バッカスの右手は鞭を蹴散らしながら一直線に前方のシャドウへと飛んで行く。


 そして核があった辺りに大穴を空けながら貫通し、そのまま後ろのシャドウの核まで短剣を差し込んだ。


「終わりだ!」


 右手が爆発して核を破壊する。前方の1体も貫通の際にナイフで核を刻まれたためか、2体のシャドウは合わせたように消滅していく。


「さっすがー!」


「おめえらの攻撃があったからこそだ。……さて」


 そう言いつつバッカスがアッシュに目を向ける。


「アッシュ、お前2人に負けてんぞ」


「うっ……すいません……」


「謝ることじゃあねえ。仕方がねえことでもあるしな。シャドウ戦にガンナーは不向きだ」


 実戦を経てセオリーとの乖離は薄々感じていたが、バッカスにはっきり言われてしまえば否定のしようがなかった。


「エーテル弾を使うライフルとマシンガンは、一撃の威力が低すぎダメージにならん。かと言ってランチャーは撃ち落とされてまず当たらん。まあエーテル弾でも出力がどうにかなりゃいけるが、Aランクの平均以上は必要だな。とてもじゃないが今のおめえには無理だろ?」


「はい……」


「しゃーない。牽制には十分役立ってるから、今回は勉強だと思っておけ」


「12時方向! 1体出現しました!」


 バッカスの言葉に若干被りながら、ダビドがシャドウの出現を告げると、アイリとレイがそれに向かっていく。


 アッシュもライフルを構えて少し出力を上げて撃つが、有効打になっているかという点では、ほぼ無意味に等しいように見える。


 それどころか、出力を上げた分だけ照準がブレてしまってヒット率が落ちており、トータルで見れば無意味どころかマイナスである。これならまだ当てる方に注力した方がいいだろう。


 アッシュはスコープ越しにシャドウを見ながら、悔しさに唇を噛むことしかできなかった。


 再びアイリがスコープ内に入ってきたため射撃を止める。バッカスの言った通りランチャーを当てることができれば話が変わるのだが、当たる前に撃ち落とされてしまうのだから難しい話である。


 だが、


(……そっか、撃ち”落とされる”のか)


 アッシュはふと妙案を思い付いてランチャーを構える。狙う先は遥か上、何も無い空である。


(この型式のランチャーの飛距離を考えると……)


 アッシュは頭を動かす。水平から大凡80°から82°。上手く行かなければ、今回はおとなしく牽制に徹すればいい。アッシュは覚悟を決めて引き金を引いた。


 発射音に振り向いたバッカスが、その軌道を追うように空を見上げる。打ち上げられたランチャーの弾が段々とその速度を落としていく。


 そして基地の屋上よりも遥かに高い位置でその推進力を失うと、今度はその重い頭を下に向けて落下を始めた。


「アイリ、レイ! 一旦引いて!」


 アッシュの呼び掛けに、2人は向かってきていたシャドウの鞭を斬り付けながら、素早く後退する。2人を追うように少し前進したシャドウに向かって、ランチャーの弾が降ってくる。


 シャドウが気付いたように鞭を上に向かって伸ばす。だが重いランチャーの弾はそれらを弾いて真っ直ぐにシャドウへと落ちていき、シャドウの頭に直撃して爆発した。


 硝煙が晴れると、核が大きくひしゃげたシャドウの姿が現れる。バッカスのように一撃とはいかなかったが、相当な威力にはなったようだ。


 シャドウが藻掻くように蠢くが、生やした鞭もほとんどが地面に落ちており、明らかに動きが鈍っていることがわかった。


 アッシュはその隙を逃すまいと、今度は正方向にランチャーを撃ってシャドウの核を爆撃する。その追撃で核が完全に破壊され、シャドウは消滅した。


「はははっ!! やりやがった!! まさかそんな方法で当てるたぁな! いいぞ! それもっとやれ!」


 バッカスが大笑いしながら褒め称える。アッシュは上手くいったことに安堵しつつ、バッカスに褒められたことを喜んだ。

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