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18.【E-調査】ヘイス草原⑥

 結局、残り2箇所では特にこれといった収穫は無かった。勿論何もなかったわけではないが、もう十分に採ったエーテル草が植えられていただけだったので、これ以上は残しておこうというアイリの提案に乗ったのである。


 アッシュ達は転送されてきたベースへと戻ってくる。


「ふう……これで後は手続きすれば終わりだね」


「うん。大収穫だったね」


 その時アイリの腹から、なかなかの重低音が響く。アッシュは聞かなかったことにした方がいいのかと一瞬迷いつつも、ついアイリの方をチラリと見てしまう。


「あーお腹空いたー」


 だがアイリは特に気にする様子も無く、むしろ腹が減ったことを口に出して告げてきた。アッシュは端末を開いて時間を確認する。もう少しで正午になるところだ。


「じゃあ帰ろう……と、そうだ。借りてた物は返さないと」


 アッシュは棚に駆け寄って、短剣やロープを片付けていく。端末を確認し終えると、再び通信機のところに戻ってくる。


「何かやり残してることはない?」


「大丈夫。早くご飯にしよう」


「ん。問題ない」


 アッシュは2人の返事を確認すると、通信をした機械を操作して『完了確認』を押す。


「全チェックポイントへの到達を確認しました。これより帰還処理を開始します」


 機械音声を聞きながら、アッシュは目を閉じて転送を待った。


***


 3人の変換器の扉が開くと、通路にニーナが立っていた


「お疲れ様です。では報酬をお渡ししますので、受付までお越しください。初めての依頼はどうでした?」


「色々採れて大満足!」


「それは良かったです」


 歩きながらのニーナの問いに、アイリは笑顔で応える。アッシュは、ふと先程気になったことをニーナに聞いてみることにした。


「あの草原って、ギルドが開発したところなんですか?」


「そうですね、元々草原があった場所ではありますが、ギルドが拡張と整備をしてるんですよ。……何か気になる物でもありましたか?」


「いえ、レンジャーが使いそうなものが揃っていたので、どのくらい手を掛けているのか気になったんです」


「そういうことでしたか。そうですね……1ヶ月に1回は、職員がレンジャーに同行してエーテル草などの様子を見て回っていますね」


 隠れ道を見つけてしまったことがバレるかと思ったが、上手く誤魔化せたようでアッシュは安堵した。更にニーナが言ったことから、その月一のタイミングで自然調査だったりも行ってる可能性が高いと考えられた。


 話しているうちに受付に着いた。ニーナは席についてパソコンを操作しつつ、カウンターの舌から何かを取り出す。


「ではこちらが報酬になります。規定の3000ディルに、へリスト駆除報酬の2000ディルを2体分で、計7000ディルになります。後こちらがギルド内通貨ですね。ディルは間違いが無いか、念の為にご確認ください」


 そう言ってニーナは、お金が入った封筒と10QPと印字されたカードをアッシュに手渡した。アース —— D0では現金を見る機会は少なかったため、アッシュは封筒の中身を確認しながら少々感慨深い気持ちになった。


 パンデムではエレーネクはかなり発展しているが、それ以外の地域はまだそこまで発展しておらず、現金の方が取り扱いやすいのだ。そういう点ではギルド内通貨は、アースでの感覚に近いと言えた。


「続けて依頼を受注をしますか?」


「いえ、今日はこれで終わりにします」


「わかりました。ではまた明日。冷凍用の端末は後日返却をお願いします」


 ニーナと分かれたアッシュ達は、ギルド窓口の前で相談を始める。


「今日はこれで終わるの?」


「うん。もう昼飯の時間だし、拠点用の食料の買い出しとかも必要でしょ。それにみんな引っ越しとかの作業も必要だから、最初のうちは1日1つでいいかなと思って」


「りょーかい。じゃ、買い出しだね」


 アッシュは驚いてアイリの方を見る。てっきりまずは食堂に行こうと言い出すのかと思っていたためだ。


「ねえ、今日のお昼は家で食べない? 私が作るからさ」


 そのアッシュにアイリが顔を向けてニヤリと笑いながら、おもむろに提案してくる。


「いいけど、どうしたの?」


「へリストが丸々手に入ったし、それ使いたいんだ」


「そういうことね。ならお願いしようかな」


 アイリがどのような料理を作ろうとしているのか楽しみにしつつ、アッシュは冷凍用端末をアイリに手渡す。


 そしてエレベーターで1階へと降りてから、エレーネク市街へと歩き出した。

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