12.不穏な気配
受付へと戻ったニーナが端末でギルドの在庫を確認していたところに、4人組のレンジャーが現れる。
「お疲れ様です、ダビドさん。どうでしたか?」
ニーナの問いかけに、ダビドと呼ばれたリーダー風の男が返す。
「先程連絡させていただいた通り、シャドウ1体の討伐は確認出来ました。他の個体も確認できなかったです」
「ありがとうございます。では依頼完了となりますので、報酬は支部でお受け取りください」
そう言うニーナに対して、ダビドの表情が曇る。
「どうされましたか?」
「あー……その、実はちょっと気になることがあって。これを見てもらってもいいですか?」
ダビドが端末を開いてニーナに画像見せる。
「これは……?」
「格納庫です。映像も見て来ましたが、シャドウはここにいたみたいです」
「……」
これ自体は特段驚くことでは無い。暗い所を好む傾向があるとされるシャドウが格納庫にいたということは、渡航船の中に現れたという事実を考慮すれば当然と言える。
「それで、このコンテナが唯一内側からの衝撃で破壊された跡があることから、シャドウはこの中にいたと思うんですが……。これ、中身が何も無いんです」
「……!!」
ニーナはダビドの意図を察して、驚きの表情を浮かべる。
「……つまり、シャドウを運ぶためのコンテナだったと?」
「断言はできませんが。そもそも渡航船はシャドウの侵入に備えて、かなり厳しい警戒を敷いていますよね。今回も格納庫にシャドウが現れた時点で警報が出てましたし。それをすり抜けてシャドウが侵入したのかと言われると……」
ニーナは口元に手を当て、写真を食い入るように見る。
「……わかりました。情報ありがとうございます。写真をこちらに転送していただけますか?」
ダビドは端末を操作して画像を送る。
「念の為、ギルドから対外的な発表があるまでは、このことは口外しないようにお願いします」
「はい。では失礼します」
そう言ってダビドを先頭に4人組は受付奥のドアへと消えた。
(事実だとしたら……相当に大きな問題ですね……)
もし故意的にシャドウを操ろうという者がいるのだとしたら、今後”この程度”では済まないことも起きるであろうとニーナは直感していた。
ようやく落ち着き始めていたシャドウの事件が、再び大きくうねり始めようとしていた。