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114.目標

「さて、仕事に戻るか。すまないが依頼が溜まっておってな。キアラちゃんも武器の修理が必要な時はいつ来ても構わんからな」


「ヴァプラおじさまの作品ですもの。100年使っても壊れませんよ」


 和かに微笑んで応えながらナックルを取り出したキアラ。アッシュはふと、今までキアラの武器をしっかり見たことが無かったなと考える。


 派手な黄金色に細かな装飾まで付いているそれは、一目でメーカー製では無いとわかる。また蹴りを多用するキアラは脛当てやブーツも着用しており、それらはナックルとセットであることがわかる造りになっている。


 特注品であるとは思っていたが、匠王ヴァプラ直々の作品となると相当な値打ち物に違いないだろう。ヴァプラに言わせれば、レイの太刀ほどでは無いのかもしれないが。


「レイはまだ見ていく?」


「ん。今日はもういい。オリハルコンのコーティングを依頼出来る相手も見つかったから」


「ここはドワーフ種の中でも実力者揃いだが、オリハルコンの加工はまだ儂しか出来ん。いずれは増えるだろうがな。だが増えたとしても、その案件は儂がやらせてもらうつもりだ。……いかん、考えただけでもニヤけてしまう」


 玄関口で鍛冶場用の履物を着用していたヴァプラは、そう言って口元を拭う。本当に太刀が好きなんだと改めて思いつつ、アッシュ達も後に続いた。


「ではな。コランの外殻の件はいずれ指名依頼を出させてもらうから、その時にはまた来るといい」


「はい。ではまたよろしくお願いします」


 ヴァプラは軽く頷くと鍛冶場へと戻っていった。


「僕達も帰ろうか」


「そうだな。今日は面白いものがたくさん見れた」


「うん。私も武器を造ってるところは初めて見た! それにしてもレイ、オリハルコンのコーティングがしたいなんて、なかなか大きな目標だね」


 アイリの”目標"という言葉を聞いて、アッシュも気付く。


 確かに依頼出来る相手は見つかったが、肝心の素材であるオリハルコンがそう簡単に入手出来るものでは無いのだ。


 コーティングであれば然程の量は必要にならないが、それでも一般的な水準の収入では生涯を掛けて貯金し続けても届く届かないかというレベルである。


 レンジャーとして最前線で活躍を続けても、大きな発見に関わらない限りは数十年後になるだろう。


「ん。けど私は、そのためにレンジャーになったから」


 どれだけ掛かるかはレイも試算しているはずだ。だがそれでもレイの言葉には必ずやり遂げるという確かな信念が感じられ、アッシュもまた身が引き締まるようであった。


「……僕も頑張らないとだ」


「そうそう。私達が活躍する程にレイの目標も近くなるんだから。Sランクになったくらいじゃ止まれ無いよ」


 アッシュとしては自分のSランクレンジャーになるという目標のことを言っていたのだが、アイリの言うことも間違いでは無い。


 レイの目標がアッシュの今の目標を達成した後の目標になり得るということでもあるのだ。


「私もSランクになったくらいじゃお母様には到底敵わないし。まあ、貴方達が動けなくなるまでは付き合ってあげるわよ」


 冗談なのか本気なのかわからないことを言うキアラ。魔族ジョークということかもしれない。


「んーよくわからないけど、僕も強くなる!」


 それぞれが目標まで努力し続ける決意を新たにしたところで、村のポータルへと到着した。


 これから先のレンジャーとしての長い人生の中でも今日という日は忘れないだろうと思いつつ、アッシュはギルド支部へと戻った。

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