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第二話 靡く黒髪

 その日の放課後、直樹は部活動見学に来た新入生に紛れてバックネット裏に立っていた。

「へぇ、結構上手くなったんだな」

思わずそんな声が漏れていた。

なぜなら、自分が部を休むようになるまではこんなにやる気のある部ではなく、お遊び程度の部で万年一回戦負けの弱小校。

それが今は、まるで強豪校のように腹から怒声のような声を出し、ノックを受けている。

自分が居ぬ間に何があったのか気になった直樹は偶然近くを通りがかった男子の陸上部員に聞いてみた。

「なぁ、最近野球部で何かあったのか?」

すると陸上部員は少し考え込むようなそ素振りを見せ。少し経ってからこう答えた。

「確か可愛いマネが入ったとかで盛り上がってたな。」

「可愛いマネ?新入生か?」

少なくとも直樹の知る範囲では可愛いマネージャーは居なかった。

「えぇ、たぶん。」

「そっか、ありがとう」」

直樹が建前的な礼を述べると陸上部員は走り去っていった。

純粋に野球が好きな直樹からすると、女性絡みでやる気を出すなど到底、球児とは思えなかった。

それなのに...いやそれだからだろうか直樹はそのマネージャーを探していた。

野球部の連中をやる気にさせるほどだ、それなりに容姿も整っているのだろう。

直樹はそれがどの程度のものなのか確かめたかった。

確かめたところでなにをする訳でもないのだが。

そうしてグラウンドを見回して女性を探し始めてすぐ探し人は見つかった。

今は外野のノックの手伝いをしているようだ。

如何にも初心者という様なたどたどしい手つきでコーチにボールを渡している。

ボールを渡すためコーチに歩み寄るたび、帽子の下の長い黒髪が揺れその髪を春の柔らかな日差しが照らす。

風に吹かれ靡いた髪が視界に入り邪魔だったのだろう。

彼女はその墨汁のように黒い髪を空いていた右手でそっと背中へと流した。

「綺麗だ...」

最初は誰の言葉か分からなかったが、数秒の思考停止を経て脳が自分の言葉と気付き条件反射的に口を抑えた。

どうやら小声だった事と、彼女までの距離が幸いして本人には聞かれなかったようだ。

彼女は特に気にした様子もなくボール渡しを続けている。

そんな彼女の様子を直樹はジッと見つめていた。

何故だか視線が惹きつけられて離れようとしない。




「ありがとうございましたっ!」

一際元気なあいさつでノックが終わりクールダウンに移行する

ついに放課後の練習が終わってしまったようだ。

「...帰るか」

教科書の入っていない(学校に全て置いてきた)鞄を持ち、校門を出て最寄りの駅へと足を運ぶ。

入院する前にチャージしておいたICカードを使って改札を抜け階段を下りホームへ向かう。

新人マネージャーを見ていたせいか、いつもより4本程遅い電車に乗り込み帰路に就く。

到着した電車はいつものように完璧な停車位置で直樹の目の前に停まった。

電車に乗り込み車内を見渡し座れる場所を探す。

しかし見つけたのは空席ではなく幼馴染みだった、それもかなり面倒な事に巻き込まれている。

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