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第一話 重力加速度

友人に触発されて書きました。

分かりづらい言葉遣いや稚拙な表現、誤字脱字などあるかもしれませんが、

幼い子供の遊びを見るような温かい目で見ていただけると幸いです。

「もうこんな世界は嫌だ...」

そう呟きながら俺はベランダの手すりに足をかける。

手すりの上に立つと秋風が頬を掠めていく。

普段ならなんとも思わないただの風だろうが

この時ばかりは僕を慰めてくれているような気がした。

「...ッ」

一瞬足に力を込める。

すると、体は逆さまになり重力加速度に従って徐々に加速していく。|


ーーガサッーー


「おい!君、大丈夫か!誰か救急車を!」

「キャー、血が」



「...痛ぇ」


そこで意識は途切れた

てっきり死んだものだと思っていた

いや、むしろ死んでいてほしかった

もう、全て終わって欲しかった



「うっ...眩し...」

しかし、なぜか自分は生きているらしい。

「窪田さん、回診の時間ですよ。」

パンツスタイルの白衣を着た女看護師が俺に呼びかける。

先ほど生きている”らしい”といった理由はここにある。

 俺はあの夜、投身自殺をしてからこの看護師以外とほとんど話をしていない、そのため生きているのかどうか判断しかねているのだ。

文字通り彼女は白衣を着た天使で、ここは既に天国という可能性も大いにある。

その場合俺の自殺は成功、晴れて天界の住人という訳だ。

そんな議題を脳内会議にかけていると。

女看護師が不意に

「窪田さん?どうかされましたか?」

と言いながら俺の顔を覗き込む。

「あぁ、いやちょっと考え事を。」

これ以上踏み込まれても面倒なので逃げておく。

この言葉を聞いてまだ踏み込んでくる人はなかなか居ない。

そんな彼の予想は見事的中したようで。

「そうですか」

もとよりそこまでの興味が無かったのだろう。

看護師はあっさり引き下がった。

脳内が混乱している今は女看護師の一見すると冷酷とも取れる無関心が心地よかった。

それ故にここで油断したとて誰も彼を責められないだろう。

看護師は続けざまに言葉を発した。

「明日、退院出来るそうですよ。よかったですね」

「へ?」

思わず変な声が出てしまった。

退院?ここは天国では無いのだろうか。

「だから、退院出来て良かったですねって言ったんです」

「退院...って俺が?」

事態が把握できず、的外れな質問をしてしまう。

「他に誰がいるんですか」

看護師はまるで地球外生命体でも見るような目つきでこちらを見ている。

「とにかく荷物まとめておいてくださいね。明日には迎えがいらっしゃるようですから」

看護師は返事も待たずそそくさと病室を出ていく。

「ははっ...やっぱ死ねなかったのか...。投身自殺は痛いし死ねないしダメダメだな...」

そこから先はよく覚えていない。

記憶がないから、多分寝ていたんだろう。


ーー翌日ーー


「直樹!」

この声は母親か。相変わらず大きい声だ。

ここは病院のロビーだぞ。ちょっとは周りの迷惑も考えろよ...。

「誰かしら...(ヒソヒソ)」

「さぁね、ちょっとは場所を考えてほしいものだわ(ヒソヒソ)」

ほら、言わんこっちゃない。

「久しぶり」

これ以上会話を途切れさせておくとまた大きな声で呼ばれそうなので一応挨拶だけは返しておく。

そんな母親の後ろをよく見ると幼馴染みの姿があった。

その手には白杖が握られている。

彼女は滝本直子(たきもと なおこ)

小学六年生の時に俺の野球を見に来ていて運悪くファールボールが直撃し光を失った。

後天性の全盲だ。

母親の横をスルーし直子の横に立つ。

「よう、直子」

俺の声を聞いた直子はこっちを向いて。

病院内での常識的な範囲内に収まるよう抑えられた声で名前を呼んだ

「直樹!?」

「そうだよ」

「良かった、生きてて」

彼女は俺の心臓のあるあたりを手のひらで触れ、そう言った。

「悪かったな、心配かけて」

「本当だよ、もうこういう事はやめてね?」

彼女は心底心配そうな表情でそう言った。

「あぁ、もう(投身自殺は)しないよ」

俺自身あんな痛い思いはもうごめんだ。

「直樹~、直子ちゃんそろそろ帰りましょう」

俺たちが話をしてる間に退院の手続きをしたらしい母親が俺たちを呼ぶ。

俺は直子の手を取り歩き出した。


それからの数カ月は病院に通いカウンセリングを受けた。

そして今日から高校生最後の年が始まる。

俺が入院していた間の休みの理由は生徒の混乱を避けるために”体調不良による入院”されたそうだ。

まぁ、自殺未遂で入院なんて多感な高校生には刺激が強すぎるだろうから賢明な判断だといえるだろう。

そんなこともあって、俺の自殺未遂について知っている人物は両親と直子、それと俺のの唯一といってもいい親友の加藤真だけとなった。

真には言った覚えがないのに何故か知っていたので問いただすと、直子から聞いたらしい。

全く余計なことを、真が能天気だから良かったものの。

万が一、真が俺を避けるようになる可能性とか考えないのかアイツは。

”体調不良”で入院するまで俺は野球部に所属していた。

今も籍は野球部に残っているが退院しても活動には参加せずほとんど幽霊部員になっていた。

始業式から何日か過ぎたころ、そんな俺に真は「部活しろとは言わねぇからとりあえずグラウンド来いよ」と言ってきた。

正直、面倒くさいと思ったが今日は何となく気が向いたのでグラウンドに行ってみることにした。

この行動が後の人生に大きな影響を与えるとも知らず...。


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