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何処の次元でもあるかもしれない話

村の近くの集落で夜を明かした京也達一行、今日は町に・・・


※注意※

この話の中盤の ※×※ の後には大変胸糞悪くなるような話が書かれています。表現を濁しておりますが、不快な方は読み飛ばし推奨です。

後に概略説明がありますので読み飛ばしても話が全く繋がらなくなるといった事はありません。

 早朝、日が昇りきる前にキリハに起こされて京也は目を覚ました。


 この集落にあまり長居しない方が良いと判断したようで、キリハはかなり早く起きたようだ。


 珍しくキリハに起こされたことを疑問に思っていると、奥の寝床ではサクラがまだ眠そうな顔で目を擦っており、隣では精霊二人がニヤニヤしていることから、どうやら精霊の差し金で起こしに来たのだろう。


 精霊の頭にデコピンをお見舞いしてから、早々に荷物をまとめた一行は朝食も取らずにボロ家を後にして町の外壁近くに辿り着いた。


 予想よりもかなり大きかった集落を迂回した為、町の堀に辿り着いたのは三十分後だった。


 昨日は夜になっていた為良く見えなかったが、辿り着いた町はかなり深い堀に囲まれており、その深さは軽く大人二人分はありそうだ。


 覗き込んで見ると、明らかなゴミから木材までさまざまな物が落ちているようだった。なかには目を背けたくなるような生々しい死体のような物もいくつか落ちており、京也は気分が悪くなり早々に覗き込むのを止めた。


 堀の内側には隙間なく丸太の柵が聳え立っており、中の様子をうかがう事は出来ない。


 どうやら京也達が辿り着いたのは町の裏側の様で、近くに入口は見えない。


 あまりにも巨大な町に京也が驚いていると、遠くで子供の声が聞こえた。


「・・・・・・! ・・・・・・!!」


「・・・・・!」


 京也には解らない言葉で叫ぶ子供の声は一つではなく、複数人要るようだ。


 気になってそちらを向くと、集落と堀の間で子供と思われる人影五人ほどが堀の方にある何かに向かって石を投げていた。


 京也がそちらを向いた事により、他の面々もそちらに顔を向ける。そして姉妹は顔を顰めて、精霊達は首を傾げる。


『あれは何をしているんでしゅの?』


「なんかに石を投げているみたいに見えるが?」


 京也の視力では堀の前にある茶色の物体が何かわからない。


「(あれは人間です)」


「人間・・・、いじめってことか?」


 キリハは微精霊と協力することにより、普通の人間より遥かにと遠くまで見通すことが出来る。その為、石を投げられているのがはっきりと見えていた。


 京也の居た次元でもいじめは多くあった、本人の感じ方次第のところもあるが、物理的に危害を加えるタイプのもの物もあっただろう。可哀想とは思うが、京也は関わらない事にしようと、視線を外そうとした時、キリハが気になる一言を発する。


「(いじめと言うよりは迫害に近いと思います。化け物と叫んでいますから)」


「化け物?」


 京也には見えないがキリハが人間と言う以上、人間なのだろうが、何が化けものなのだろうと疑問に思っていると、京也の目に不思議な光景が映る。


 キリハが人間と言った茶色い塊に石が当たるとほのかに赤い蒸気のようなものが上がるのだ。


「あれは・・・」


 赤というのは見たことが無いがあれは・・・


「「精霊の力の波ですね!(でしゅわね)」」


 京也の意識を読んだ二人の精霊の言う通り、風子達が力を使った時に見える色に似ている。


 違う点は色がぼんやりしている事と、量が少ない事だろう。


「二人は見えるか?」


 ヒョウカに精霊の力の色について簡単に説明してもらい、二人に見てもらったところ、サクラはぼんやり見える。キリハは見えないと回答が帰ってきた。


 一昨日の妖怪の件や風子の件もそうだが、この姉妹の違いは何処からきているのだろう。


 そんな事を思う京也だったが、今は別の問題の方が重要だと思い直して茶色い物体について再度確認を取る。


「なあキリハ、あれは人間で間違い無いんだな」


「(改めて聞かれますと何とも言えませんが、私には膝を抱えて顔を填める子供に見えます)」


「精霊って事もないよな?」


「(あの子供がですか? それはありません)」


 キリハによると、彼女ら交信者は精霊を感じる事が出来るらしい。どんな感じる聴いてみたが、苦い顔をされてしまった。どうやら口で説明するのは難しいらしい。


「あと考えられるのは・・・」


 後は一昨日と同じ妖怪という可能性だ。


 他にも居ると思うとゲンナリするが、カマイタチしか居ないというのも楽観し過ぎだろう。しかしその場合キリハに見えているのがおかしい。


 もしかしたら見える妖怪と見えない妖怪がいるのかもしれないが、それは推測の域を出ない。


「直接確認するしかないか・・・」


 危険は伴うが、後のことを考えると放置は出来ない。


 そう判断した京也は、妖怪の場合精霊が襲われる可能性を考えて姉妹にヒョウカ水筒を預け、精霊二人に待っているように言ってから石を投げられている子供に近づく。


 もちろん姉妹と精霊には危ないと止められたが、石を投げられても抵抗していない事や、こちらに向かって来ない事から大丈夫だと言って説得した。


 ゆっくり近づいて行くと、だんだんと輪郭がハッキリして来る。


 茶色いに見えていたのは服のようで、ボロボロの貫頭衣に、切りそろえられていないボサボサの地面に届くほどの長髪。貫頭衣からは薄く日焼けしたような肌が見えていた。顔は膝に埋められており今は見ることが出来ない。


 近づくにつれて子供たちが何やら騒ぎ出すが、京也が視線を向けると石を手に持ったまま固まってしまう。


 どうやら奇妙な服と見ない顔にたじろいでいるようだ。


 都合よく投石も止んだ為、さらに近づいて京也は子供の正面に回り込んでしゃがむ。


「解らないだろうけど、ちょっといいか?」


 通じないのは承知の上で、京也は声をかけながら子供を再度よく観察してみる。


 キリハの言った通り一見普通の人間の子供にしか見えず、痣だらけではあるが、先程のように精霊の力は見えない。あと、かなり失礼だがかなり異臭を放っている。

 

「普通の人間にしか見えませんね!」


 観察する京也の頭上から脳天気な声が聞こえる。相手はもちろん、


「なあ、風子。俺は待ってろと言ったよな?」


「やっぱり京也さん一人に出来ません!」


「お前襲われたらどうするんだ?」


「一緒に逃げます!」


「わかった、お前を囮にすれば良いんだな」


「もう囮はやーです!!」


「だったら大人しく待ってろ!」


「それも嫌です! 一緒に愛の逃避行しましょう!」


 泣きながらアホなことを言いつつ京也の袖を引っ張る風子を引き剥がそうと京也が奮闘していると、うずくまっていた子供の顔がゆっくりと上がる。流石にやかましかったのかもしれない。


 子供が顔を上げた事に気がついた京也が言葉の通じない相手に何と謝ろうかと考え出したところで、完全に顔が上がり、その顔を見た瞬間考えが吹き飛ぶ。


 子供はどうやら女の子だったようで、泥と痣で汚れた顔は思っていたより整っており、感情を感じさせない瞳は炎の様に赤い。年齢はおそらくサクラより少し下くらいで、少し血色が悪いように見える。


 しかし、京也が驚いたのはそんな事ではない。ひときわ目を引く、


「角?」


 長く伸びた前髪を分けるように額から突き出す短く太い真白な角だ。


※※※ × ※※※


 彼女の最近の日常になっているのは硬い物を投げられることだ。


 少し前までは大勢の大きな人達に一日中体の穴を棒で突かれ続けるのが日常だった。


 いつからそんな日常を送っていたのか覚えていない。そもそも森を彷徨っていた時から前のこともわからない。


 意識が芽生えたのは森で大勢の大きな人に会った時からだ。


 大きな人は何かずっと口から発しているようだったが、それがなにかわからないまま、頭の毛を引っ張られて一日中薄暗い場所に入れられた。


 ここに来てからは毎日同じことの繰り返し、体を突かれ、水をすすり、寝る。それの繰り返し。


 初めは痛みで目から水が流れ、口からは音を発し続けたが、ある時から痛みがなくなり何も感じなくなった。


 何も感じなくなってから、どれくらいかしてから何かを被せられ、突かれるだけではなくあらゆる物で叩かれるようになった。


 今までに無い痛みに再び水が流れて音を発する。


 すると前よりさらに多くの人達に突かれるようになった。


 しかし、それも徐々に何も感じなくなってきた頃、一人の大きな人がキラキラ光る細くて薄い物を持ってきた。


 それが何かわからずいつものように突かれ続けていると、突然手のひらに今までで一番の痛みが走る。


 あまりの痛さに今までで一番大きな音を出してしまう。


 それと同時に額と目が熱くなり、顔を見た大きな人達は口から音を発して何処かへ行ってしまった。


 この出来事から、新しい日常が始まった。


 大きな人達は来なくなり、代わりに小さな人達が来るようになった。


 小さな人達は体を突くことはなく、変わりに硬いものを投げてきた。


 この頃からすする水が無くなった。


 硬い物の量はどんどん増えていき、時間も長くなってきた。


 また最近、長い物を首に引っ掛けられて明るい時と暗いときが入れ替わる場所に連れて行かれ、硬い物を投げられるようになった。


 その場所は途中から歩くところが無くなっており、その距離はだんだん短くなって来ている。


 あらゆる方向から投げられる硬いものは顔に当たることが多く、他のところに当たるより痛みが強い為、顔を埋めるようになった。


 周りが暗くなると小さな人達は居なくなり、明るくなるとまた現れる。

 

 今日も同じ一日が始まると思っていた時、不思議な事があった。


 まだ明るい内から硬い物が投げられなくなった。


 不思議に思っていると、目の前から音が聞こえる。


 これまで聞いてきたどの大きい人や小さい人とも違う音。


 不思議に思って顔を上げてみると、目の前で大きな人よりちょっと小さな人が何処かに向かって音を発していた。


 小さな人ではないという事はまた穴を突かれ続けるようになるのだろうか。


 でも、その方が痛くない。


 硬い物を投げられる前にしていたように、その場に横になる。


 突かれる時はこの方が痛くないことが多い。


 しかし、大きな人っぽい人は突くことは無く、いきなり体を持ち上げて移動しだす。


 どうやらまた違う日常が始まるようだ。


 彼女は大きな人よりちょっと小さな人に抱えられて運ばれていく。


 これから今までとはまったく違う日常が始まることをまだ知らないまま。

新たな登場人物角少女です。

終盤の話は彼女の設定に関するお話になります。

不快になられた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。

町に入る前に彼女の話がもう少しあります。

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