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爽やかな朝のひと時と不穏な香り

またもや野宿となった京也達が一行に爽やかな朝がやって来る・・・

「・・・ヤ、・・ウヤ」


 暖かな布団で眠る京也に何か声が聞こえる。しかし、ここ数日の疲れが溜まった体に暖かな布団が気持ちよく、とても起きる気にならない。


『京也さーん、そろそろ起きないと殺されますよー!』


 そんな京也の頭に直接風子の声が響く、しかも随分物騒なことを言っている。


 もしかしたら何かトラブルがあったのかもしれない。そう思いながらも、京也はすぐに意識を覚醒することが出来ずに、ゆっくりと頭を回転させていく。


 確か今は森の中、サクラとキリハと共に簡易の寝床で眠ったはずだ。


 ここで、京也は一つの疑問に辿り着く。はて、昨日布団なんてあっただろうか? っと。


 サクラの荷物には結局二枚しか大判の絹布は入っておらず、一枚敷いて、一枚はかけて眠りについたはずだ。 


「・・・・・! ・・・・、キョウヤ、・・・!」


 そんな事を考える京也の耳に再度声が聞こえる。どうやらサクラが呼んでいるらしい。


 それならば仕方無いと重たいまぶたをゆっくり開けると、そこには・・・


「えっ、どういう・・・状況だ?」


 京也の目の前で限界まで小弓を引き絞った姿で、鬼のような形相を浮かべるキリハが居た。


「目の前の状況より、今の自分の状況を見るといいでしゅわ」


 横から聞こえるヒョウカの声に従うように自分の状況を確認する。今、京也は寝床の上で寝ている。横を向いた状態で何かを抱きしめながら・・・


「抱きしめながら?」


 状況を考えて疑問に思い、恐る恐る下を向くと、そこには顔を真っ赤にしたサクラが照れた表情で京也を見上げていた。


 簡潔に説明すると、京也はサクラを抱き枕のように抱いた状態で横になっていた。


「なっ!?」


 ぼんやりとした頭が一気に覚醒した京也は、慌ててサクラを離して寝床から飛び起きる。


「なんでこんなことになってる!?」


「それはこっちが聞きたいでしゅわ」


「そうですよ! 昨日何度か寝返りしたかと思うと、急にキョウヤさんがサクラを抱きしめたんです!」


「俺が!?」


 まったく状況がつかめない京也だが、必死になって記憶を探る。しかし、寝ている間の記憶など出てくるわけもなく、代わりに一つのことを思い出す。


 京也は元の次元で寝る時、飼っている犬と一緒に寝ることがあった。つまり・・・


「犬と間違えたってことか!?」


「なんかすごい失礼なことを言ってしゅわね」


「そのまま翻訳してあげましょう!」


「やめろ!? ってかキリハに弓を下ろすように言ってくれ!」


 向けられた弓矢に冷や汗を流しながら京也は何と説明したものかと、今までの中でもっとも頭を回転させて考えるのだった。


※※※ ※※※


「はっ・・・、はっ・・・、はっ・・・」


 昨日と同じく道無き道を一向は進む。


 しかし昨日と明らかに違うことがある。それは、


「京也さん大丈夫ですかー!」


『大丈夫じゃない! もう限界だ!』


 進むスピードが昨日より格段に速いということだ。


 朝のハプニングを寝ぼけていただけだと、ほぼ土下座状態で謝った京也は、当の本人であるサクラの助言もあり、なんどとか無事キリハに弓矢を下ろしてもらうことが出来た。


 ただし、助言しているはずのサクラから「暖かかったから大丈夫だったよ!」と言う問題発言が飛び出し、今度はナイフを持ち出す自体となったが、それはまた別の怖い話だ。


 因みに許されたはずの京也だったが、朝食は生で食べられる山菜のみという罰を受けた。用意してもらっただけマシな気もするが、朝から疲れた上に食事が葉っぱだけだった京也のテンションは今までに無いほど低いものだった。


 その上、


『いつになったら休憩するんだ!?』


 もはや声すら出ない京也は聞こえないと解っていて、頭の中で叫び続ける。


 手早く出発の準備を終え、いざ出発したまではよかったのだが、キリハの歩くスピードが尋常ではない。ほとんど平坦な道を競歩しているくらいの早さだ。しかも、サクラが止めてくれるかと思いきや、京也の方を振り返っては赤い顔をしてキリハの後ろまで走り去ってしまう。


 しかも困ったことに、競歩しているにもかかわらず、絶妙なタイミングで速度を合わせて京也の目線から出ない様に調整されている。


 いっそ見えなくなれば諦めて休憩するのだが、これでは休むに休めない。


「しかたないですね!」


 見るに見かねたのか、ここで京也に風子からの助け舟が出される。


『お? なんか急に楽になった?』


「私が回復しているんです! 感謝して下さい!」


 京也の周りに薄緑の帯が纏わりつく。始めは風子の追い風かと思ったが、森の中では風子はあまり力を使えない。どうやらソウが前にやったように京也に直接生気を送り込んでいるようだ。


「わるい、たすか、る」


「いえいえ、向こうも精霊の力を使ってますからいいでしょう!」


「せいれい、の、ちから?」


 風子に話によると、キリハは自分自身の体の精霊と意思疎通して基礎体力を上げているらしい。キリハの驚異的な体力や、前に京也を射た時の命中力はそれを応用したものらしい。


「そんな、ことが、できるなら、おれも・・・」


「貴方には恐らく無理でしゅわ」


 それがあれば楽に山登り出来ると考えた京也に、ヒョウカから絶望的な一言がかけられる。


 通常の交信者と違って精霊と会話できる力しか無い京也は、自分の体の精霊などの微量の意識しかないような精霊と会話することは出来ない。その為、自身に力を貸してもらうことも難しいらしい。


「まあ、加減を考えない精霊が体を壊しても良いのでしたら使ってみてもいいでしゅの」


「さすがに、それは、かんべん、だ」


 人の体は自分を守る為に脳がリミットをかけており、二十%程度の力しか普段使っていないらしい。


 つまり自身の脳の精霊がリミット解除すれは本来の力が出せるということだ。しかし、調整が出来ない京也がそれを行えば、体が壊れる可能性が高いということだろう。


 少し見えた甘い希望を打ち砕かれた京也だったが、風子からの回復のおかげで多少ましになった為、なんとか置いていかれることなく後に続いた。


 それでもさすがに出発から四時間経った頃には筋力の限界が来てしまい。その場で動けなくなった。


『も、もう、むり・・・』


 意識の中さえも酸欠になった京也が倒れこむと、それを合図に休憩を取ることになった。


「(思ったよりがんばりましたね)」


「(サクラも疲れた・・・)」


 どうやらいつ京也がギブアップするかとタイミングを見計らっていたようで、少し無理して進んでいたようだ。しかし、それでも二人にとっては少しなのだ。


『ヒョウカ、みず、のみほして、いいか』


『ダメに決まってましゅわ!? 一時間もすれば浄化できましゅから我慢しゅるんでしゅの!!』


 ここまでの道中で水筒の三割はとっくに飲んでしまっている、話しかける余裕が無かった為、サクラの荷物から補給もしていないので飲み水がないのだ。


「(どうかしましたか?)」


 京也が意識で問いかけた為、つい意識伝達で返してしまったヒョウカの声を聞いたキリハが京也の近くまで降りてくる。


 水袋の水を直接飲めないことや、自分の分体の状態を伝えたヒョウカの説明で、水が飲めるようになるまで一行は休憩することとなった。


 京也の水筒に水を注いだキリハだったが、サクラの荷物確認し、


「(やはり水が足りませんね・・・)」


 っと眉をひそめる。


 どれ位残っているのか聞いてみたところ、残りはおおよそ三分の一。元々2人分として三リットルほど入る水袋が二つとサクラの腰についている一リットルの水袋しかし無かった為、三人分となると量が足りないのだ。


「風子、近くに小川でもいいから川はないか?」


「森に中は見にくいですからねー、そうだ、山の精霊さんか森の精霊さんに聞いて見ましょう!」


「このパターンは・・・」


 シーン・・・


「あれ? いつもだと精霊から声をかけれれるんだが・・・」


今まであればすぐに精霊が出てきて一悶着あるというのがパターンなのだが、まるで声をかけられる様子が無い。


「いいえ、居るのは居ましゅわ。ただ・・・」


「えらく意識が貧弱なんで京也さんには見えないと思います!」


「そうなのか?」


今まで会った土地の精霊はソウだけだった為、自然と土地精霊は見えると思っていたが、そうではないらしい。


「いいえ、貴方の認識で間違いないでしゅわ」


 どういう事か聞いてみると、元々土地精霊はよほどに事が無いと世代交代しない為、自ずと意識が強いなるそうだ。しかし、何故かこの山の精霊や森の精霊は生まれて間もないらしい。


「どういうことだ?」


「解りません! 本人も自分自身である山の事は自然と解りますが、前任の事までは解りませんから!」


結局、京也には見えない山の精霊に風子達が聞いてみたところ、近くに湧き水がある事が解った。


 しかし、どうして精霊達が世代交代してしまったかは解らずじまいだ。


 何かモヤっとした気分のまま、京也達は休憩を終えると、水の補給の為に少し道から外れた湧き水を目指したのだった。

ここから若干おかしな展開に発展しますがテコ入れなどではなくプロット道理ですので悪しからず。

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