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この姉妹どうしたらいいと思う?

ヒョウカの問題をクリアし、後残る問題は・・・

一章も今回でラスト!読んで頂いた方々、本当にありがとうございます!

後書きにお知らせがありますので良ければそちらもご確認下さい。

 水筒をヒョウカの分体にする計画は予想よりすんなり成功した。


 分体を作るという作業に自体には苦戦したヒョウカだったが、一度わかってしまえば簡単なようで、問題なく分体作成を終えた。


「で、これがヒョウカの分体ってわけか?」


「そうでしゅわ」


 京也は水筒の蓋の上に立ったヒョウカそっくりの手のひらサイズデフォルメ三頭身ヒョウカに向かって声をかけ、


「「「ぷっ」」」」


 そのかわいらしい見た目としゃべり方と相反して、腕を組んで踏ん反り返った偉そうな姿に一人の人間と二人の精霊が同時に吹き出す。


「何か文句がありますの!!」


 それを見た本体であるヒョウカが顔を真っ赤にして不満をあらわにする。


「い、いや、悪い悪い。あんまり可愛い物が出てきたからついな」


「そ、そうです! 私の分体は鳥の形なのにずいぶん可愛らしいなと思いまして!」


「っ!!?? そういう事は先に言えですわ!!」


「良いんではありませんか、と、とてもかわいらしい(ぷっ)ですし」


「ソウ、あなた喧嘩売ってますのね、安く買いますわよ?」


 ソウの一言にとうとうキレたヒョウカが全身に水色のキラキラした力をまとわせて水際に足を踏み出す。


「まあ、ヒョウカ落ち着・・・」


「・・・・・!!」


 止めようとしていた京也の耳にサクの声が聞こえる。


 ヒョウカの対応ですっかり忘れていたが、サクはサヤに抱きついたままだった。


 何かあったのかと目を向けると、どうやらサヤが目を覚ましたようだった。


「(私はどうして・・・)」


 気になって京也が近づいていくと、薄く目を開け、まだぼんやりとしている様子のサヤが、抱きつくサクを不思議そうに撫でていた。


「悪いが俺が池から引き上げた」


『私の使者が貴方を池から引き上げたのです』


 二人に声をかけられて顔をこちらに向けたサヤは、サクを抱いたままゆっくりと起き上がる。


「(そうです、私は池の精霊様のもとへ赴いたはず・・・、どうしてまだ意識が・・・)」


『貴方はまだ死んでいないからです』


『村人のお願いは確かに聞き入れましたわ。この私の池から魚を取ることを許しましたの』


「(では何故私は・・・)」


『そもそも、私達は一度も人間の命など捧げるように言った覚えはありません』


「(やはりそうでしたか・・・、ではやはり私の行動は無意味だったのですね・・・)」


 腕に抱いたサクをゆっくりと撫でながら、サヤは沈んだ表情のまま落胆する。


『そうでもありませんわ』


 そこに捧げられた当のヒョウカが声をかける。


「(それはどういう・・・)」


『貴方のおかげで、思わぬ自由が手に入りましたわ。感謝しますの』


「(自由?)」


「ほら、これだ」


 目を細めて怪訝そうな顔をするサヤに、京也は手に持った水筒を掲げて声をかける。


 何を言っているかは解らなかったようだが、声をかけられた事には気がついたサヤがゆっくりと京也の方を向き、水筒の所まで目線が行くと、驚いたように目を丸く見開く。


「(きれい・・・)」


「綺麗? これがですか・・・ってなんですかこれ!?」


 とても綺麗とはかけ離れたはずの見た目ねんどろいどヒョウカに目を向けた風子が、驚きの声をあげる。


「いったいどうしたん・・・、おい、これはなんだ?」


「な、なにって、わ、私の分体ですわ・・・」


 ジト目の京也から目線をそらすようにヒョウカ(本体)が気まずい表情で明後日の方向を向く。


 京也が持った水筒の上に居たのは、先ほどまでのねんどろいどでは無く、虹色に輝く長い尾びれに美しい流線型ボディーをした魚だった。


『いつの間に・・・』


 あまりの呆れ具合にソウはサヤ達にも聞こえるように言ってしまっていることにまるで気がついていない。


「(あの池の精霊様これは・・・)」


「(かわいい・・・)」


「『『『かわいい?』』』」


 いつのまにか自分達の周りに人が集まっている事に気がついたのか、サクが埋めていた顔をあげて呟いた言葉に一人の異次元人と三人の精霊の言葉がシンクロする。


『ちょ、ちょっとあなた、この姿をかわいいというのはちょっと失礼ですわ』


「(え、ごめんなさい。ちっちゃいお人形さんみたいだったから、つい・・・)」


『なっ!? あ、あなたどうして本当の姿が見えますの!?』


『ヒョウカさん話方、話し方!』


『そ、そう言うソウこそ素が出ていますわよ!』


「お前ら落ち着け、信者が困ってるぞ・・・」


「そうですよ!みっともない!」


『『風子さん(貴方)に言われたくありません(わ)』』


「だから落ち着けって・・・」


 突然キャラクターが崩壊して言い合いを始めてしまった信仰対象に、目を白黒させながら呆然とする二人に、わからないことを承知で「ちょっと待っててくれ」と声をかけてから、精霊二人を引っ張って水際で落ち着かせる。


 五分後、


『お、おっほん、恥ずかしいところをお見せしてしまいましたわ』


「「((は、はあ・・・))」」


 落ち着いて戻ってから再度二人に声をかけたヒョウカだったが、今更取り繕っても後の祭り、信者二人の表情は唖然としたままだ。


 今まで抱いていた精霊への信仰心とかが揺らいでいないか心配だ。


「とりあえず、ソウ、今の状況を説明してやってくれ」


「・・・わかりました」


 釈然としない表情のまま、ソウはサヤを京也が助けた経緯などを大雑把に説明した。普段であればもっと細かく説明するはずなのだが、どうやらソウもかなり居心地が悪いらしい。


 自分が助けられた経緯や、精霊が分体として移動するといわれたサヤは、途中までは唖然としたままだったが、終盤は神妙な面持ちでその話を聞いていた。


『と、いうわけです。それで、使者からあなたに聞きたいことがあるそうです』


 一通り説明を終えたソウは、そう言って京也の後ろに下がる。


 前に出た京也は二人の目線まで腰を下ろして真剣な表情で問いかける。


『「直接聞けなくて悪いけど、これで我慢してくれ」』


 代弁してもらうのでは無く、京也はそのままの言葉の翻訳をソウに頼んで二人に問いかける。


『「俺はサクに頼まれてここまでサヤと話をしに来た。聴きたい事は一つだけ。お前は本当にこれでいいのか?」』


 サヤの目を真っ直ぐに見つめながら京也は問いかける。


『「意味が無いと知りながら人身御供になって、妹は残して精霊の元へ行く。お前はそれで本当にいいのか?」』


 京也の話を一緒に聞いていたサクが、胸から顔を離してサヤを見上げる。


「(わ、私は交信者です。村人の為に身を捧げるのは当然で・・・)」


『「じゃあ捧げ終わって、尚あるその命はどうする? また無駄と知りながらこの池の精霊の下へ行くのか?」』


 消えかかりそうな小さな声を風子は確実に拾い、京也に伝える。その言葉を聴いて、京也はソウを通じてサヤに問いかける。


 京也の問いかけに、サヤは傍らで見守るヒョウカに目を向ける。


『私は何も要求しませんわ、村人との約束は対価とともに完遂してしまいましたの。貴方が今から身を捧げようと、私には何も用意出来ませんわ』


「(しかし私は・・・)」


『貴方と話がしたいというこの男の条件を私は叶え、対価も頂きましたわ。そして、そこはすでに私の管理外ですの』


 そこ《・・》と言いながらヒョウカはサヤの座る地面を指差す。


 そこは地面の上。ヒョウカが管理する池とは離れた場所。


 それはヒョウカの管理区域から持ち出された事を表す。


 つまりサヤはすでにヒョウカの人身御供ではなくなったのだ。


『「だ、そうだ。それでサヤはどうしたいんだ?」』


「(私は・・・)」


「(お姉ちゃん・・・)」


「(サク・・・)」


 二人の姉妹は顔を見合わせて、互いの服の裾を強く握り締める。


「(お姉ちゃん、私はもっとお姉ちゃんと一緒に居たい!!)」


「(サク・・・)」


 握り締めたままの服を強く引き、再び胸に顔を押し付けてサクはサヤに抱き付く。まるでもう離すことがないようにと、しがみつく様に。


『「だそうだ、サクはこう言っている。それで、サヤはどうするんだ?」』


 しがみつくサクを見下ろしながら目を泳がせるサヤに、京也は静かな声で何度目かわからない問いかけを繰り貸す。


「(私は・・・、わ、私も、サクと共に居たいです!!)」


 京也の問いかけに、しがみつくサクをサヤは抱きしめる。強く閉じた瞳からは涙がこぼれだして、次々とサクの服を濡らして行く。


 その様子は、京也が二人を無理やり引き合わせたあの日の光景そのものであった。


「やっぱり仲良し姉妹じゃないか」


 二人をやさしく見つめながら京也はゆっくりと立ち上がり、ヒョウカに目を向ける。


『「なあヒョウカ、お前の分体は通訳することは出来るか?」』


『当たり前ですわ、誰の分体だと思っていますの?』


『そうでしゅわ』


 わざと二人に聞こえるように言った京也の問いに、いつのまにかねんどろいど状態に戻ったミニヒョウカとオリジナルヒョウカは、二人で同じように腕を組んだポーズふんぞり返る。


 そのシュールな光景に若干苦笑いをしながら京也は言葉を続ける。


『「俺はー、今から西北西の町に行ってー、食料や情報を収集しなくちゃならないんだがー、通訳を頼めるかー?」』


『・・・いきなりなんですの? って、ああそういうことですの・・・。貴方はバカですのー?私たちはー、普通の人間とは会話できませんわー。交信者でなければー』


「二人とも棒読みがわざとらしいです!」


「やかましい、わざとなんだからいいんだよ」  


 空気を読んでいるのか、いなのか解らない風子のツッコミに、京也は呆れた表情で答える。


 その間に泣いていた姉妹は涙を止めて京也とヒョウカの会話に耳を傾ける。


『「そうかー、それは困ったー、何処かに通訳の渡し約ををしてくれる交信者はいないかなー」』


「ってそろそろこの演技疲れます」


「もうちょっと我慢してくれ」


 京也の言葉を棒読みのまま通訳していたソウまでも呆れた様子でため息をつく。その様子を精霊二人も苦笑いで見守る。


『「困ったなー」』


「(でしたら私が!!)」


「(サクも!!)」


 わざとらしく腕を組んで困ったように見せる京也に、姉妹が身を乗り出して志願する。


「よし、決まりだな」


 ニヤリと笑った京也は、そう言いながら二人の頭にそれぞれ手を置いてやや乱暴に撫でる。


 最後はわざとソウが翻訳しなかった為、何を言われたか解らないまま困惑し、されるがままになっている二人の顔は、背格好や年齢は違えど瓜二つだった。


「さーて、これからどうするかな」


 おそらくそのまま付いてくるであろう風子。分体ではあるが、外の世界へ連れ出すと約束したヒョウカ。さらには人身御供上がりの交信者姉妹。たった三日間の間にずいぶん多くなった旅の仲間を見渡して、もはや新しい口癖となった言葉を吐く。


 ソウが一緒に行けないは残念だが、彼女とも旅を出来る可能性はまだ残されている。


 ソウのお願いをノーと言えずにこんなことになってしまった、ノーと入れる人間を目指す京也はいつの間にかその口癖を吐いていないことに今更ながら気がついた。


「んー・・・」


 だが、再び自分の周りを見渡し、京也は思う。


「ま、いいか」


 時の精霊はまだ手がかりしか掴めていない。目指すは西北西にある町、そこに至るまでの山道を越える算段はまだ立っていない。それどころか食料は三人分に増えてしまった。


 考えなければいけないことは山ほどある。


「これからどうするかな・・・」


 改めて状況を整理して、京也は結局頭を抱えたのだった。

京也達の精霊探しがやっと始まりました。

これで第一章は終了となります。

ここで前書きでも書いていたお知らせがあります。

この『異次元精霊探索記』ですが、名前を変更する事になりました。詳しい理由については活動報告に記載してます。新しい名前ですが、

『異次元精霊サバイバル!?』です。


もしよろしければ第二章からもよろしくお願いします。


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