ココロミタシテ
それは、誰もが生まれた時から持っているもの。
生き物が生きるうえで持っているもの。
そして、コノセカイに満ちているもの。
優越感や満足感、歓喜と言ったようなもの。
それは、心を満たして、一時の『しあわせ』を与えてくれる。
逆に悲壮感や恨みと言ったもの。
それは『かなしみ』や『怒り』を与える。
どちらにせよココロは満たされている。
もし、もしもココロがひろいものがいて─
─そのココロが満たされないならば。
ある日、ひっくり返って起きあがれなくなったムシを助けてあげた。
─満たされない。
ある日、落ちているゴミを拾って捨てた。
─満たされない。
ある日、壁にハマっているネコを助けた。
─満たされない。
ある日、ヒトにケシゴムを貸してあげた。
そのヒトはありがとうと言ってくれた。
─満たされない。
ある日、殴られているヒトを助けた。
そのヒトは、ありがとう、と言ってくれた。
─満たされない。
ある日、イジメにあっているヒトを助けた。
そのヒトは、アリガトウ、と言ってくれた。
─ああ、満たされない。
ある日、コイビトができた。いつもニコニコしていて楽しそうなヒトだ。
コイビトは、スキだと言ってくれる。
──満た、されない。
------------------------------------------------------------
ある日、ヒトにケシゴムを取られた。
─みたされない。
ある日、ヒトに殴られた。
─みたされない。
ある日、多人数のヒトに殴られた。
─ああ、みたされない。
ある日、コイビトはコイビトじゃなくなった。
わからない、そのコトバだけを残して。
──アア、ミタサレナイ。
満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、満たされない、みたされない、みたされない、みたされない、みたされない、みたされない、みたされない、ミタサレナイ、ミタサレナイ──
──いつしかそのココロは、「満たされない」で満たされていた。
ただ、それだけ。