大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 4
暫くして。
私とタイラーは集落の入り口に向かう。
そこには何人かの若者が、複数のグループで集まっていた。
みんな大きくて強そうだ。
190cm程あるタイラーをも大きいが、彼らも同じように大きいのだ。
男の人は180cmを超えている人がたくさんいる。
女の人も皆私より大きい。多分、170はある。
タイラーが彼らを説明する。
「今回の狩りは複数のチームで行われるんだ。皆グループごとに固まっている」
「そうなんだ」
「で、俺たちが参加するのがあのチームだ」
タイラーが目線を向けると、そこには青年少女の姿。
彼が一人一人に目線を向けて説明していく。
「単髪赤髪で、刺青がはいってる荒っぽい男がアラン。あいつは気性が荒いから気をつけろ」
「その横のデカイ狙撃銃を持って、肩にインコを乗せている奴。
あれがイーグル。狙撃が上手い。あんまりしゃべらない寡黙な奴だが、かわりにインコが話す」
「で、黒髪の一番子供っぽい奴がエクト。正義感が強い」
「その隣のきつい顔した女がウイナ。あいつは女だけどかなり強い。戦闘技術だけなら俺の上だ。
後、エクトの事が好きだから、ウイナの前でエクトには関わるなよ。嫉妬で殺されるぞ」
「で、一番小さい女の子が、オカリナだ。戦闘技術はしょぼいが、この中で一番頭が良い」
「分かったか?」
タイラーが私に確認する。
「うん。大体」
私はタイラーが説明したことを頭に入れる。
気性の荒い刺青赤髪=アラン
冷静狙撃銃&インコ=イーグル
子供=エクト
きつい女性=ウイナ
小さくて頭良い女性=オカリナ
(よし、頭に入れた)
「うん。大体分かった」
「じゃあ、彼らに加わる。今回はあのグループに加わるようにと、族長からいわれている」
私は知らない人ばかりで緊張していた。
だが、タイラーが私の頭を撫でる。
「心配するな。見た目は怖いが皆仲間だ。信用しろ。後、皆呼び捨てて良いからな。さんづけはやめろ」
「う・・・うん」
私たちは彼らに近づく。
赤髪のタイラーがこちらに気づく。
アラン:「タイラー、なんだ、外の女じゃねーか?」
ウイナ:「なぜここにいるの?」
2人がギロっと私を睨む。
(こ、怖い・・・・特に赤髪刺青のアランがすっごい顔で睨んでくる)
オカリナ:「まぁ、アランもウイナも落ち着こうよ。きっと何か理由があるんだよ。ねぇ、タイラー」
オカリナが二人をなだめる。
「俺も狩りに加わるからだ。それにノゾミも一緒だ」
タイラーが私の肩をポンっとおし、皆の前に押し出す。
「えっと・・・よ、宜しくお願いします」
私はペコリと挨拶した。
オカリナ:「よろしくね。ノゾミ」
エクト:「お、おう・・・頑張ろうな」
二人は快く受け入れてくれるが・・・・
アラン:「あん?タイラーふざけてんのか?その細い女が使えるってのか?相手はヒグマだぞ。うさぎ狩じゃねーぞ!こらっ!!」
ウイナ:「そうだよ。あたしも嫌だよ。足手まといが増えるのは。他のチームじゃだめなの?」
アランがキレ気味に話し、ウイナも露骨に嫌そうな顔をする。
でも、タイラーが私の前に出る。
「アラン落ち着け。俺が責任をもつ。お前らはノゾミを守らなくても良い。いつも通りで。
それに、族長様にこのチームに加われといわれた」
タイラーが説得しようとするが。
アラン:「うるせー。部族以外の人間がいるの方がおかしいんだよ。なんで族長様もこんな色白女を・・・」
オカリナ:「まぁまぁアラン、落ち着こうよ。それに族長様の言葉なら仕方がないよ。何かきっと考えがあるんだよ」
激昂するアランを抑えるオカリナ。
アラン:「ふんっ、まぁいい。どうやって外の女が死ぬか見ものだな。狩りの楽しみが増えたぜ」
怪しく笑うアラン。
ウイナ:「嫌だけど。族長様の意見なら、私も問題ないわ」
ウイナも納得する。
「納得してくれて良かった。で、どうやって狩るんだ」
タイラーが聞くと。
アラン:「オカリナ、話してやれよ。うちのチームの参謀はお前だろ」
アランから話を振られたオカリナは、私とタイラーを見て話す。
オカリナ:「うん。アランとウイナで先行してクマの生息地に向かい、劣りになってクマをある地点までおびき寄せる。
その後、残る全員で撃ち殺す。簡単言うとこんな感じかな」
タイラーはその説明を「うんうん」と頷きながら聞き、質問する。
「具体的にはどうするんだ?」
オカリナ:「これを使うんだ。被害現場にあったモノだ」
オカリナは布切れをかかげる。
オカリナ:「クマの習性で、彼らは自分達の匂いがついているものを強く求める。
だからこれをアランとウイナに着て貰う。で、走り回ってポイントにおびき寄せる。
その後、残りのメンバーで谷間の上から一方的に銃撃して殺す」
イーグル (インコ):「イーグル、外さない、イーグル、外さない、百発百中」
それまで黙っていたイーグル (インコ)がポツリと告げる。
アラン:「まぁ、イーグルの射撃なら安心だな。オカリナとエクトは怖いが。俺たちにあたるんじゃないかって」
エクトの悪口をいわれたためか、ウイナがアランを「ギロッ」っと睨む。
ウイナ:「エクトが何?エクトの射撃は上手い。何か文句あるの?」
アラン:「そ、そうだな。そんなに怖い顔でにらぬなよ、ウイナ。冗談だよ。不安なのはオカリナだけだな。はははっ」
笑いで誤魔化すアラン。
オカリナ:「僕は安全に撃つよ。難しいところはイーグルに頼むから」
イーグル (インコ):「イーグル、外さない、イーグル、外さない」
インコが騒がしく叫ぶ。
「計画は分かった。で、俺たちも待ち伏せに加われば良いか?」
オカリナ:「そうしてほしい。ノゾミは、銃を使えるの?」
「え、その・・・・」
私が困ったようにタイラーを見ると。
「ノゾミは昨日を銃を触ったばかりだ。だから近距離以外は難しい」
アラン:「けっ。やっぱりつかえねーな。これだからよー。妙なことしたら、速攻でヒグマのエサにするからなっ!」
エクト:「ほ、本当か?その、大丈夫なのか?」
ウイナ:「タイラー、真面目に。本当に大丈夫?格闘術でもできるの?この子死ぬわよ」
心配そうなウイナとエクト。
「格闘術できるのか」っと、タイラーが耳元で私に聞く。
私は答える。「体育の授業で柔道を少し」。つまり、素人だ。
タイラーは私の答えを察して。
「それもできない。でも、俺が守る、お前らは気にするな」
アラン:「ふーん、まぁいい。掟だからな。ちゃんとお前が守れよ。でもよー、あれだな。
妻子がいる身で他の女を守るなんてな。タイラー、その女がそんなにいいのか?
ずっと二人で家にこもってたんだろ。一体二人で何をやっていたんだか・・・」
アランが下種い笑いを浮かべる。
オカリナ:「やめなよ。掟なんだから、しょうがないよ」
エクト:「そうだ。掟は守るべきだ。それに昨日まで客人は寝たきりだったんだろ」
二人が援護してくれる。
アラン:「どうだかな。あんな古臭い掟」
アランは「けっ」っといいきる。
「アラン、アホなこといってないで、もうそろそろ出発した方がいいんじゃないか。他のチームは出発しただろう」
タイラーの発言で皆が周りを見回す。
気づくと、他の若者達は消えていた。
残っているのは私たちのグループだけだ。
アラン:「そうだな。話が長くなった。オカリナ、途中まで道案内頼む」
オカリナ:「うん。じゃあ、別れるポイントまで移動しよう」
ウイナ:「エクト、いくよ」
ウイナがエクトの手を取る。
エクト:「ば、ばか。手を触るなよ。自分で歩ける」
ウイナ:「本当?あたし心配」
エクト:「本当だ」
ウイナ:「本当に本当?」
エクト:「だから本当だって」
いちゃつく二人。
その姿を見てアランはイライラする。
アラン:「おい、お前らいちゃつくな。今から狩りにいくんだぞ!集中しろ!クマに食われるぞ!」
エクト:「言われなくても分かってるっ!ウイナ。手を離してくれ」
オカリナ:「そうだよ、ウイナ。今はさっ」
エクトとオカリナに言われたためか・・・
ウイナ:「わかった」
すねたような顔のウイナ。
オカリナ:「じゃあ、皆で協力して頑張ろうね」
エクト:「おう」
陽気にオカリナが声を上げるが、エクトしか続かなかった。
私は不安に思いながらも、私達は歩き出したのだった。