大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 3
私とタイラーは一つの家を訪れる。
タイラーが中の人を呼ぶと、一人の女性が出てきた。
毛皮を着た女の人、モノノケ姫みたいな格好の女性だ。
「よう、アイネ。今朝取れた魚だ」
タイラーが川魚を渡す。
「タイラー、毎回ありがとね」
親しそうに受け取る女の人。
「それと、客人、ノゾミに服を用意してやってくれないか。アイネ、得意だろ」
「いいけど。それより、随分元気になったんだね、この子」
私を見つめる女の人。
「ねぇ、あたしもあんたが寝ている時に見舞いにいったんだよ。覚えてる?」
「え、その・・・すみません。覚えていません」
(寝ている時の記憶はなかった)
「はははっ、そりゃそうだよねー。寝てたし」
「おい、アイネ、アホいってないで。服を頼む」
「分かってるよ、服は用意する。幼馴染を信用しなさい。
ほらっ、タイラー、あんたは外で待ってな。ノゾミはこっちにいらっしゃい」
私を招き寄せるアイネさん。
「じゃあ、ノゾミ。アイネが変なことしたら叫べよ。俺はすぐ外にいるから。それと、終わったら呼んでくれ」
「うん」
「何もしなよ。ほらっ、しっしっし」
タイラーはアイネさんに追い払われた。
私は家の中に入った。
二人きりになると、アイネさんは私の体を目推してから、ささっと体のラインをさわり、家の奥から毛皮を取り出す。
それを私の体にあわせる。
どうやら結び目で服のサイズを調整しているようだ。
「ノゾミ、あんた細いね。海から流れてきたからかい?」
「そうかもしれません・・・・でも、元からこれぐらいです」
(少しやせた感じはあったけど、ほんの少しだ)
この集落の人は皆体が大きく、線も太い人が多い。
太いとは、太っているという意味ではなく、体の線が太くがっしりとしているのだ。
アメリカのNFLの選手みたいだ。
「肌も白いのね」
「普通ですよ」
「そうかもね。うちらは皆褐色だから、ノゾミの白さが目立つ」
「褐色の肌も良いと思いますよ。健康的で」
で。
調整が終わると、私にぴったりのサイズができあがり。
アイネさんから大きなイヤリングとネックレスを貰う。
「これは何ですか?」
「この部族の証」
アイネさんは私の首にネックレスをかけ。
耳にイヤリングをつける。
「いいですよ、そんな大事なもの。もらえません」
私は外そうとしたが・・・
アイネさんにとめられる。
「ダメ。これがないと、他の部族にあったら襲われるかもしれない。
あんた綺麗だから、いきなり知らない男の妻にされるよ。それでもいいの?」
(いや、それはさけたい)
「あ、ありがとうございます」
ペコリとお礼する。
「じゃあ、タイラーのとこに戻ってやりな。さっきからチラチラこっち見てるから。落ち着きがなくて困る」
アイネさんが家の外を見ると、タイラーがちょうどこっちを見ていた。
目線があうと、さっとタイラーは視線を外した。
「はい、そうします」
私は外に出る。
タイラーが私を見て。
「おう、似合ってるな。これで部族の女らしくなった。少しだけだが」
「ありがと」
それから2人で移動する。
途中、タイラーは同い年ぐらいの集落の若者を見る。
彼らは狩の準備をしているのだ。
その姿をうらやましそうに見ている。
「タイラー、狩りにいきたいの?」
「そうだ。そのために毎日鍛えているんだから」
タイラーはきっぱりと言い放つ。
「そうなんだ・・・・」
「でも、俺は君を守る必要がある。だから安心しろ。危険なところにはいかない」
タイラーは青年達から目を外す。
「・・・・うん」
私は思う。
タイラーにはここに流れ着いて以来、お世話になりっぱなし。
だから、私も彼のためになりたかった。
「タイラー。私のことは気にしないで。狩りにいっていいよ」
「ダメだ。掟で俺は君のソバを離れられない」
「なら、一緒に狩りに行くよ。私、大丈夫だから、銃だって使えるよ」
「いいのか?」
タイラーは驚いて私を見る。
(本当は怖いけど・・・・)
「勿論」
私は笑顔で答える。
「そうか・・・・本当にいいのか?死ぬ可能性があるんだぞ」
「うん。いく。大丈夫だから」
「本当にいいのか?」
タイラーは再度私を見る。
私の意志を確かめるように。
「大丈夫だよ」
私は精一杯明るく答えた。
「・・・・・分かった。ありがとう。俺はお前を守る。傍を離れるなよ」
「うん」
「絶対だからな。離れるなよ。離れたらお前も守れない」
「うん」
「それなら、さっそく族長に相談しないと」
2人で族長の家に向かう。
私は中には入れなかったけど、タイラーが中に入って数十分後。
彼は笑顔で出てきた。
「どうだった?」
「許しが出た。俺も狩りにいける。ノゾミもだ」
「やったね」
「そうだな」
私とタイラーは握手して、家に戻った。
そして武具を着込み、狩りの準備をしたのだった。
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