大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 2
翌朝。
ノゾミは起きた。
起きると良い匂いがした。
家を出ると、外で男が川魚を焼いていた。
「おきたか?朝食にする。魚は大丈夫か?」
「はい」
で。
私は思った。
この人の名前を聞いてなかたっと。
「あのー。すみません。お名前はなんというのでしょうか?私はノゾミといいます」
「俺か、俺はタイラーだ」
「そうですか。タイラーさん。昨日からありがとうございます」
「礼には及ばん。ほら、朝食だ」
「はい」
私は朝食の焼き魚を食べた。
塩焼きで、とれたてのせいか、とても甘かった。
その後、タイラーさんに聞く。
「あの、市役所なり、電話なりの場所はあるのでしょうか?」
私は自分の家に帰ろうと思ったのだ。
「うーん。ここにはない。そういうのは街まで行かないと」
「そうですか・・・」
確かに、この付近は森しかみえない。
電信柱一本も見えない。
「街にはどうやって?」
「山を10個程越えるといける」
「山10個?」
「でも、今の季節の山越えは難しい。注意が必要だ」
「はぁー。山越えですか」
私はどうやら未開の地に来てしまったようだ。
「まぁ、そう困り顔をするな。そのうち帰れる。それより今はクマが大変だ。山もこえようにも、大量繁殖したクマに襲われて終わりだ」
(そういえば、昨日もクマの叫び声が聞こえた)
「そんなにいるんですか?」
「そりゃー、そこらじゅうにいる。集落の人間も何人かやられた」
(え・・・本当に?それはかなりまずい)
「因みに何匹ぐらいいるんですか?」
「分からんが・・・多分、50~60匹はいると思う。足跡を見分けるのが上手い奴がいる。
エド爺っていうんだけど。エド爺はそういっていた」
(50,60匹って、大丈夫なんだろうか?)
「それに、かなり大きなクマがいる。
普通のヒグマは2.5-3m程で、体重は250-500kg程。
でも、一匹だけ5mぐらいある奴がいた。多分、体重は1000kg以上ある。あれがボスだろうな」
(5m?1000kg・・・・ヤバイ、ここヤバイ。早く逃げないと)
「そんなに大きいのは、いくら銃をもっていても危ないんじゃないですか?自衛隊や警察に頼んだ方が・・・・」
「そうする場合も難しいだろう。誰も町に連絡できない。
この前の洪水で道は崩れているし、ここは電波も通らないので携帯も使えない」
「はぁー。そうなんですか」
「それになにより、一度人を襲って肉の味を覚えたヒグマは、もう一度襲ってくる。早くなんとかしないといけない」
「なら一層・・・」
「大丈夫だ。俺たちの力でクマなら追い返せる。いつもそうしてきた」
「そうですか・・・・」
(大変な時期にきてしまったようだ)
だが思い出す。
「私は船で運ばれたと思うんですが、船で助けを呼ぶのはどうですか?」
「船は、2ヶ月に1回しかこない。次の船を待っても意味はないだろう。まぁ、昼に集会があるから。それまでゆっくりしているといい」
「はい」
私は頷いたのであった。
「それと、俺のことはタイラーと読んでくれ。タイラーさんだとくづぐったい。それに気を使わなくても良い」
私はちょっと恥ずかしかったけど。
「分かった。タイラー」
そう呼んだのだった。
◆
昼の集会。
集落には大勢の人が集まっていた。
中々の数の人がこの集落には住んでいるようだ。
数で言うと、100人ぐらいいるのかもしれない。
学校の3クラス分だ。
この集落の全員なのかもしれない。
で。
集会の中央では、変なお面を被ったお爺さんが叫ぶ。
「皆の者、昨夜までで、我が集落から2人の犠牲者が出た。これは由々しきことじゃ」
被害者家族か、「うんうん」と強く頷いている。
タイラーが耳元で説明する。
「襲われたのは、子供と老人。川遊びをしていたところだ」
(そうなんだ)
「これより、有志を選抜して、クマを狩りに行く。我らの力を見せつけるのだ」
「族長、道民に頼まないのですか?」
一人の者が聞く。
「これはワシらの問題だ。道民の手はかりん」
「そうだーそうだー」
「それでいい」
「外の者の手など不必要だ」
「我らには精霊様の力がある」
加勢する声。
どうやら、この集落では外の力を借りたくないようだ。
「猟銃は多くある。それに戦士も足りておる。
これより戦える者全員でクマとの戦いを始める。一部の者は集落の防衛に残ってもらうが、他は総出だ。
それと、周りの集落にも伝達にいってもう。この件に村の存亡がかかっておるのじゃ」
「「「おおおおおう!!!」」」
そんなこんなで盛り上がった集会。
色々決まっていく中、最後に私が紹介された。
タイラーが族長に私のことを話したのだ。
それまでもチラチラ私は見られていたが、ここにきて注目が一気に増した。
「族長、この子の紹介をさせてください。客人です」
「確か、漁師が海で拾ってきた娘っ子だな」
「はい。名前はノゾミというらしく、本土の人間のようです」
「ほーう。では、発言を許そう」
私はタイラーに耳元で 「ほらっ、自己紹介だ」っと促され、集会の中央に押し出される。
(え、その、何を言えば・・・・)
集落の人の注目が集まる。
とりあえず私は自己紹介をした。
「ノゾミです。20代前半です。それと未婚です。資源開発関連の会社に勤めております」
こんな感じで。
周りの人はポカーンとしていた。
私が助けを求めるようにタイラーを見ると、彼が手招きする。
どうやら、これでいいらしい。
私は彼の元へ戻る。
族長が再び集会の中央へ。
「うむ。では、タイラー。主は引き続き客人の世話を頼むぞ。勤めを果たすのじゃ。妻子のことは安心せい」
「はい。族長様」
こうして集会はお開きになった。
タイラーの家に帰りながら、私は集会で気になったことを聞く。
「タイラー、族長さんがいっていた、勤めってどういうこと?」
「それは昔からの決め事だ。客人が着たら、第一発見者が面倒をみて、最後まで責任を持つ」
(ということは・・・)
「じゃあ、タイラーが私を一番に見つけたの?」
「あぁ、漁師から引き取ったんだ。氷の様に君がつめたかったから」
「へぇー。あと疑問なんだけど、タイラーって妻子がいるの?」
「あぁ、いる」
「もしかして、さっきの集会にいた?」
私は注意してみてたけど、それらしき人を見つけることは出来なかった。
「いや、いない」
「一緒に暮らしてないの?」
「他の集落にいるんだ。異なる部族間で結婚した時は、子供を育てるために実家にいることが多い。
それに冬の集落は厳しいからね。俺の家はまだ小さかっただろ。子育て向けじゃない」
「確かに・・・・」
「じゃあ、次はノゾミだな」
「何が?」
「今からノゾミの着るものを用意する。その格好はボロボロだろ」
私は自分の服を見た。
よくある女性の私服だが、確かにボロボロだ。
なんせ、オホーツク海を漂流していたのだから。
汚れた雑巾のようになっている。
「この集落にも女性用の服がある。アイネのところにいく」
「別にいいよ。このままでも」
(ほんと、今は見た目をきづかっている場合じゃない)
「だめだ。客人がボロ切れを着ていると、俺が皆に白い目で見られる。ボロしか着させない男だと。それは困る」
「そうなんだ・・・」
私はタイラーに迷惑をかけたくなかったので、彼についていくことにした。
とまっていました以下の作品、連載再開しました (暫く毎日投稿です)
※ページ下部のリンクよりどうぞ
『チートスキル「美容整形」持ちの俺は、目立ちたくないのにハーレムに』