大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 1
新章スタートです。
大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋)。
不倫騒動で、極寒のオホーツク海に落とされ、漁師に拾われたノゾミは知床半島のとある部族に拾われる。
その部族は、絶賛クマに襲われていた。
2mを越えるヒグマ、50.60匹に狙われているのだ。
ノゾミは自分を守ってくれる部族の屈強な男、妻子持ちのタイラーと過ごしながら、クマとの戦いに巻き込まれていくのだった。
一方マイコは、ノゾミの消息を知り、いいようのない衝動を覚える。
マイコは自分の想いを昇華するため、ノゾミに会いに、知床半島に乗り込むのだった。
―――雄大な大自然、知床半島を舞台に
―――今、壮絶な戦いが始まるのであった
◆登場人物
ノゾミ 不倫騒動で、部族に流れ着いた女。20代前半のOL。
マイコ ノゾミの親友。ノゾミを探して知床半島に乗り込む。
タイラー 部族の屈強な男。ノゾミを最初に拾ったため、部族の掟で彼女を守る。妻子持ち。
アイネ タイラーの幼馴染の女。部族の服を作っている。
------------------------
◆1
ノゾミが目を覚ますと・・・そこは小さな家の中だった。
昔話に出てくるような簡素な家だ。
暖炉が燃えている木の家。
薪がパキパキと割れている。
外は夜。
(ここは一体・・・・)
瞬時に思い出す記憶。
(そうだ、私は宗谷岬で、不倫相手の雪男に崖から落とされた・・・それで・・・)
ノゾミはそこからは思い出せなかった。
思い出そうとすると頭が痛いんだ。
(ここはどこ?)
辺りを見回すと・・・
「やっと気づいたか?」
クマの毛皮を来たの一人の男。
がっちりとした体系で、身長は190ch程ありそうだ。
どこか日本人ばなれした顔で、日本人とロシア人のハーフのような男だった。
「あの、ここはどこですか?」
私が聞くと。
「ここはイップス族の集落だ」
「イップス族?」
「あぁ、俺たちの部族だ。君は外の人間だろうから、君たちの言葉で言うと・・・・ここは知床半島だ」
「しれとこ・・・・」
男は大きな地図を持ってくる。
北海道の地図のようだ。
「ほら、ここだ、北海道の東の端。最近世界自然遺産にもなった」
「そうですか・・・」
私は地図を見て頷く。
現在地は分かった。
だが、何故私がここにいるかは分からない。
「あのー、私はどうしてここに?」
「んん?漁師の奴らが海で君を拾ってきたんだ。土産だっていってな」
(お土産・・・・え、まさか、私売られたの?この男の人に買われたの?)
ドキリと恐怖すると。
「はははっ、そんなに脅えるな。冗談だ」
「そ、そうですか」
ほっと安心する。
男の人の笑顔は優しく、害を感じなかったのだ。
「しかし、君、綺麗な顔してるね。体もここらの女に比べると細いし、道民にも思えない。本土の人かい?」
(本土・・・北海道以南の呼び名だろう)
「はい。出身は関東です。それに異国、スペインとギリシャの血も混ざっています」
「そうか、そうか。それでそんなエキゾチックな顔をしているのか。で、体は大丈夫かい?」
聞かれて気づくが・・・私は特に悪いところはなかった。
昔から体だけは頑丈なのだ。
「大丈夫です。特に違和感はありません」
「よかった」
ほっと一安心する男。
相手の体から力が抜けたのが分かる。
「あの、私、どれぐらい眠っていましたか?」
「そうだな・・・一月以上だ」
(え、一月以上・・・・そんなに)
私はショックを受ける。
というよりも、よく生きているなと思った。
「ほらっ、腹へっているだろ。飯にしよう、石狩鍋だ。たべるといい」
ぐつぐつと煮えている鍋。
そこにはジャガイモやら、お肉やら、お魚やら、えのきやら、色々な具財が入っていた。
匂いだけでお腹がすいてくる。
「あの、いいんですか?」
「気にするな。食べない方が心配だ。大丈夫、毒は入ってない、お腹、すいてるんだろ?」
毒見するように、一口救って食べる男。
「毒だなんて・・・そんな。疑っていません」
「いいんだ。いきなり見知らぬ人に拾われたんだ。警戒して当然」
男はおわんにお肉とじゃが芋をすくい、私の前に。
「嫌いなものじゃないと良いが」
「ありがとうございます」
私はお腹がすいていることもあり、目の前の料理がとても魅力的に見えた。
おわんを両手で持ち、一口すする。
(美味しい・・・・)
素直な感想だった。
とても美味しかった。
(これまで食べた料理の中で、一番美味しい)
体が栄養を求めていたのだろう。
そのため、とてもつもない美味に感じてしまうのだ。
体が震えるほど美味しかった。
私は、瞬く間におわんを空にしてしまう。
「いいたべっぷりだ」
男は私のおわんに再び料理をいれる。
だがその時・・・・・・・
「GUOOOOOOOO!!!!」
外から化け物ような叫び声が聞こえてきた。
「っち、奴らがきたかっ」
おわんを置き、荒々しく近くから猟銃を取り出す男。
私は初めてみた銃に驚く。
「な、なんなんですか?一体?」
「大丈夫だ。ちょっと外でクマが暴れているだけだ。俺が倒してくる」
男は家を出て行こうとするが・・・
振り返った私を見る。
そして、近くの箱から猟銃をもう一つ取り出す。
「君、銃は使えるか?」
「いえ、使えません」
「そうか。じゃあ、今から教える。ほらっ」
ポンッっと猟銃を渡される。
私は慌てて受け取る。
ずっしりと銃の重みに恐怖する。
「いいか?ここに弾を入れて、こうやってトリガーをひく。後は打つだけだ。簡単だろ?」
男は私に銃の使い方をレクチャーする。
(でも、なんで私に)
「あの、私に銃が必要なんでしょうか?」
「もしかしたらクマが家の中に入ってくるかもしれない。その時は銃で追い払うんだ。音を聞いただけで逃げる、安心するといい」
「はい」
男は出て行ったのだった。
私は突然のことで何が何だか分からなかった。
だが、その後。
「GUOOOOOOOO!!!!」
パンッ パンッ パンッ
化け物の叫び声。
多分クマの叫び声と、猟銃の音が聞こえる。
周りでは駆ける足音が聞こえる。
私は恐怖に震えた。
まさか・・・こんなことになるとは思わなかったのだ。
クマに襲われる村?にいることなんて。
というか、なんでいきなりこんなことに。
私は銃を抱いて小さく丸まる。
ひたすら入り口をみて恐怖に震えたのだった。
暫くして。
何かがこの家に近づいてきた。
足音がするのだ。
まっすぐ入り口に近づくてくる・・・
(や、やばい、どうしよう・・・クマかもしれない・・・私、食べられちゃうかも)
私は銃を入り口に向ける。
男の話した銃の使い方を思い出し、心の中で反芻する。
そして入り口に大きな黒い影が目に入った瞬間、引き金を引こうとする。
「ば、化け物ー!」
銃を撃とうとするが。
影は思いもしない速さで動き出し、私に覆いかぶさる。
「いや、離して。食べないでっ!」
「なにする!落ち着け、俺だっ!」
(クマがしゃべった?)
よくみればさっき家を出て行った男だった。
黒い毛皮を着ていたので、クマと間違えてしまったのだ。
私はとっさに反抗をやめる。
「すみません。間違えました」
「まぁいい。で、大丈夫だった?」
男は私から離れてほっと一息つく。
「はい。なんとか。そちらはクマを狩れたのですか?」
「ダメだ、逃げられた」
「そうですか・・・」
私は不安になった。
耳にクマの叫び声が残るのだ。
だが、目の前の男の姿を見ると安堵する。
クマのように大きな男だったからかもしれない。
男は入り口をみて睨み。
「今夜は俺が番をする。君は寝なさい。朝になれば、集落の者にも会わせる」
「分かりました」
私は不安と緊張に押しつぶれそうだったけど、満腹になって気が抜けたせいか・・・・
ぐっすりと寝むったのだった。
とまっていました以下の作品、連載再開しました (暫く毎日投稿です)
※ページ下部のリンクよりどうぞ
『チートスキル「美容整形」持ちの俺は、目立ちたくないのにハーレムに』