大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 28
私たちが歩くと・・・夜になった。
その日は特に何も見つからなかったのだ。
途中で見つけた洞窟で一休みすることになった。
食べ物は「秋山の峰」で収穫したものをもってきていた。
それに、途中で果物や動物を狩った。
「よし、俺が番をするから、皆寝てくれ」
タイラーが告げる。
私は驚いた。
(タイラーって、ここ最近ずっと寝ていないんじゃないかと)
「大丈夫?タイラー、ずっと寝ていないと思うけど」
「大丈夫だ、片目をつぶれば、ほぼ睡眠は確保できる」
(なにそれ・・・・忍者みたい)
エクト:「いいや、今回は俺とウイナも見張りにつくよ、交代制にしよう」
ウイナ:「それがいい。一人に負担が集中するのはよくない」
オカリナ:「それなら私も・・・」
タイラー:「オカリナは戦闘系じゃないだろ。それに参謀だ。頭が冴えていないと困る」
エクト:「そうだぜ。オカリナとノゾミは大丈夫」
ウイナ:「そう。私たちがやる」
オカリナ:「うん。ありがとう」
「ありがと」
私もお礼をいっておく。
心苦しいが、私が見張りに立つのは逆に危険だと思ったから。
私だと、クマの接近されても近づかないことが多いかもしれと思ったからだ。
タイラー:「じゃあ、最初は俺がやるよ。2時間交代で良いな?」
エクト:「あぁ、いいぜ。次は俺で」
ウイナ:「その次は私。エクト、私を起こしてね」
エクト:「任せろっ!」
こうして私は寝ることになった。
次の日。
問題なく朝を迎えた。
私たちは「夏山の峰」を目指して歩き出す。
途中、クマの存在跡を発見したが、これというものには出会わなかった。
一匹もクマに遭遇しなかったのだ。
夕方。
森の中を歩く。
タイラー:「妙だな。まったくクマに出会わない」
エクト:「だぜ。ここまでいないなんて・・・何かおかしくないか。二日前はあれ程襲ってきたのに」
ウイナ:「・・・確かにおかしい。オカリナ、何か分かる?」
オカリナ:「うーん。具体的には分からないかな。
でも、クマ達は今回かなり組織的に動いているようだから、無駄な戦闘は仕掛けてこないのかもしれない」
タイラー:「すると・・・いつかは襲ってくるために準備でもしてるのか?」
オカリナ:「その可能性はあると思う」
エクト:「それヤバクないか」
ウイナ:「・・・・まずいかも」
オカリナ:「なるべく早くクマを見つけたいけど・・・いないね」
タイラー:「あぁ。でもまぁ、明日には夏山の峰につくんだ。そこに何かあるかもしれない」
エクト:「そうだな。なかったらなかったで里に戻れば良いし。そういえば・・・イーグルとアランは里に戻ったかな?」
タイラー:「どうだろう。メモに気づいてくれれば良いが」
オカリナ:「きっと大丈夫だよ。それに、メモに気づかなくても、一旦里に戻るだろうから」
ウイナ:「そうするはず。狩のルール」
タイラー:「じゃあ、歩くか」
私たちは進み・・・・
その夜。
昨日と同じように、途中で見つけた洞窟で夜を明かしたのだった。
この二日間は、まったくクマの襲撃を受けず、平和な日々だった。
◆
次の日。
「秋山の峰」を出発して三日目。
暫く歩き、昼ごろには「夏山の峰」へ到着した。
が。
私たちはその場をみて唖然とした・・・・
エクト:「な、なんだよこれ?」
タイラー:「どうなってるんだ?」
ウイナ:「・・・・・・・・」
オカリナ「これって、全部死体?」
私も驚いていた。
「夏山の峰」。山の頂上付近にもうけられたちょっとしたスペース。
そこに多量のクマの死体が置かれていたのだ。
あたり一面まっかっかだった。
50体以上の死体だ。
タイラーが死体を観察する。
タイラー:「この死体、一撃で斬られるな。どうみても人の仕業だ」
エクト:「それに、並みの腕じゃないぞ。尋常じゃないレベルだ。ウイナレベルじゃないか」
ウイナ:「分からない。私より上かもしれない」
驚愕に震える。
タイラー:「それに胸に穴が開いている。心臓がないぞ」
エクト:「本当だ。牙は放置してるくせに、心臓だけとっていっているみたいだな」
ウイナ:「・・・・不思議」
「他のチームが先にここにきたのかな?」
私は思ったことを呟いてみた。
オカリナ:「いいや。来たんなら牙をとっているだろうし、心臓だけとるのは聞いたことがない」
タイラー:「だな。一体誰の仕業だ」
エクト:「・・・・・・・」
ウイナ:「・・・・・・・・・・」
オカリナ:「・・・・・・・・・・」
皆心当たりがないようだ。
オカリナ:「とりあえず、手分けして何かないか調べてみよう」
タイラー:「そうだな」
皆で調べる。
死体の間を歩きながら周りを見る。
数十分後。
タイラー:「全員同じ奴に切られてるな。切り口が同じだ」
エクト:「そうだ。かなり上手いぜこれ」
ウイナ:「これだけの数を一人。しかも短時間・・・・」
ウイナがうなる。
オカリナ:「皆、一旦里に戻ろう。これはちょっと大きな問題かもしれない」
不安顔なオカリナ。
タイラー:「何か分かったのか?」
オカリナ:「分からない。でも、何か分かりそうな気がする。とにかく戻ったほうが良いよ」
タイラー:「そうだな。このままここにいてもしょうがないし」
エクト:「よーし、帰るか」
ウイナ:「うん」
私たちは「夏山の峰」を後にしようとした時だった。
それが起こったのは・・・・
突如、死体のクマが起き上がったのだ。
タイラー:「ノゾミ、危ないっ!」
一匹が私に突っ込んできた。