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雪国グルメ編 (タコしゃぶ カニ 塩ラーメン) 3

 ノゾミと雪男は日本最北端の地、宗谷(そうや)岬に来ていた。

 アイヌ語で、「裸岩の地」と呼ばれる場所だ。


 むき出しになった岩と、遠景にはロシアが見える。

 広大な大地と海が広がっている。

 偶に、海の中を大きな氷が流れているのも見えるのだ。


 2人で一緒に海岸デートする。

 空を飛んでいく海鳥を眺める。

 偶に取りにエサをあげる。


 そんなことをしていると・・・・

 途中にある観光名所、平和の鐘につく。


「ノゾミ、一緒に鳴らそうよ」

「いいの。これ、噂で聞いたけど、恋人同士が結婚を誓い合って鳴らすんでしょ」


「いいだろう。もう、同じようなものだ」

「うん。そうだね」


 2人は一緒に鐘を鳴らす。

 まるで結婚式のウェディングベルのように、鳴り響く鐘の音。

 北の大地に高い鐘音が響くのであった。

 二人は自分達の将来を想像して笑顔になったのだった。



 この時。

 雪男の想いは完全にノゾミに向いていた。

 遠く離れて会えない妻子よりも、身近にいて温もりを感じるノゾミの方が大事になっていたのだ。

 いつからそうなっていたか分からないが、雪男は強い愛情をノゾミに抱いていた。

 電話で妻子の声を聞いても、この頃は彼の心に以前ほどひびかなくなっていた。


 ノゾミとの関係が続けば、ゆくゆくは結婚も視野に入れていたのだ。



 2人が鐘を鳴らし終えて歩いていると・・・・ノゾミは見覚えの有る姿を見つけたのだった。

 それは過去の亡霊。

 お腹を大きくしたマイコだった。


 マイコはノゾミを見て一言。



 ―――「見つけた!」



 ノゾミはその声に、ゾクっと震えたのだった。

 過去からの亡霊が、現実を揺らしたのだった。







「ノゾミ、知り合いか?」


 マイコを見て、雪男が聞く。


「う、うん、昔の友達」

「そうか、なら、話してくるといいよ。俺はここで海鳥にエサをあげてるから」


 雪男はほがらかな笑顔で促す。


「そ、そうだね。ありがと」


 ノゾミは雪男から離れ、マイコに近寄る。


 暫く黙って見つめてから・・・


「マイコ、久しぶり」

「ノゾミ、2ヶ月ぶりね。北海道は寒い」


 ファミレス以来あっていなかったノゾミとマイコだが、打ち解けた挨拶を交わす。

 婚約破棄のどたごたで、二人して話す機会がなかったのだ。

 だからか、二人とも距離を測りかね、結局一番なれた友達同士の挨拶をしてしまう。


 ノゾミはマイコのお腹を見る。


「マイコのお腹は大きくなってるみたいね」

「おかげさまで順調に育ってるわ」


 嫌味にならないように話すマイコ。

 お腹をさする。



 暫く世間話をした後、ノゾミが切り出す。


「それでマイコ、どうしたの?旅行にでもきたの?」 


 ノゾミがマイコに用件を聞く。

 彼女は気になってしょうがなかったのか。

 マイコを見た時から、ずっと悪い予感がしていた。

 すぐに用件を聞こうと思ったが、ふんぎりがつかず、時間をかけてしまった。


 マイコはすぐには答えずに、ノゾミの後ろの人影を見る。


「アノ人、雪男さんよね?」

「ええ・・そうだけど。何で知ってるの?」


 その質問にはマイコは答えず。


「ノゾミ、間違ってたらごめんなさい。あの人、既婚者よね?」

「・・・・・」


 黙るノゾミ。

 マイコはそれを是認と受け取った。


「あなた、まだこりてないの。不倫して左遷までされたのに」

「それは・・・・ただの仕事上司、友達だよ」


 ニコニコして答えるノゾミ。友達だといいはる。


 マイコは目を細める。


「ノゾミ、嘘を言わないで。数ヶ月前、私に同じ嘘をついたわよね」

「本当に、ただの上司だから」


 ノゾミは粘る。

 だが、マイコは・・・


「私、証拠持ってるの。あなた達が関係してるって。探偵雇って調べたんだから」

「・・・・・」


 マイコは一枚の写真を見せる。

 それは探偵がさぐった、ノゾミと雪男の不倫現場の写真だった。

 その写真を見て驚愕に震えるノゾミ。


「マ、マイコ・・・なんでこんなことするの?」


 動揺しながらマイコを見る。


「被害者を減らすためよ。ノゾミ、あなたも真っ当に生きなさい。他人のモノを欲しがらずに」


 だが、ノゾミはマイコの言葉など聞かず。

 プルプル震えて・・・バシっとマイコの手から写真を奪う。


「ノゾミ、無駄よ。写真は何枚もあるから。それもコピーだから」

「・・・・」


 厳しい表情をするノゾミ。


「今すぐ関係を切りなさい。そうすれば、相手方の奥さんに公表する気もないわ」

「・・・・・・・イヤ・・・絶対イヤ。私は悪くない」


 拒絶するノゾミ。


「悪くないって・・・気は確か?」

「自分に男を引き付けられない、魅力のない女が悪いの。本当に魅力があるんなら、他に心が動くわけないでしょ」


 かたくななノゾミ。

 自分がまちがっていないと信じている。


「ノゾミ、何を・・・・」

「私は良いことをしてるの。私といた方が相手だって幸せよ。ひのきの棒の様な女を付き合うよりかは」


 マイコは察する。

 ため息をつく。


「そう。何をいっても無駄みたいね。ならしょうがないわ」


 マイコはノゾミのソバを通り過ぎ、雪男の元に向かった。

 雪男はほがらなか笑みを浮かべる。

 

 マイコは切り出す。


「雪男さんですね?私はマイコです。ノゾミの友達の」

「はい。これはどうも」


 雪男は丁寧に挨拶する。


「実は、あなたにお知らせがあるんです」

「なんですか?」


 雪男は軽く聞く。

 世間話でもするように。


「ノゾミのことです。彼女が何故ここ、稚内に来たかしっていますか?」

「詳しいことは知りませんが・・・・」


 何かあるんだろうな、という顔をする。


「彼女は不倫をして、その相手が会社の金を横領したから、ここに飛ばされたのです」

「・・・そうでしたか」


 雪男は察していた。

 何かよくないことをノゾミがしたんだと。

 でも、それを受け入れていた。


「雪男さん、あなた、ノゾミと不倫関係ですよね?」

「・・・・」


 黙る雪男。

 すぐには答えない。


「証拠はあります。それに、公にする気はありません」


 『公にする気はない』という、マイコの言葉を受けてか。


「・・・・・はい」


 認める雪男。

 これ以上否定しても意味がないと思ったのだ。


「しかし、知っていましたか。ノゾミはあなた以外とも不倫関係なんですよ」

「!?」


 驚く雪男。

 明らかに動揺している。


「これは知らなかったようですね。こちらです」


 マイコは調べた結果を報告した。

 ノゾミが一人だけと不倫するんなんてありないだろうと思い、調べたらすぐ出てきたのだ。

 雪男の他にも、もう一人と不倫していたのだ。


「・・・ま、まさか」


 驚愕に震える雪男。

 目の前の写真が信じられないのかもしれない。

 目を見開いている。


「ショックですね。お察しします。それなら今すぐ別れてください」

「・・・・・・・・」


 だが、雪男はマイコの言葉を聞かずに、横を通り過ぎる。


(あれ・・・・・・・)


 雪男はノゾミのソバに。


「ノゾミ。どいうことだ?これは?俺以外にも男がいたのか?」

「・・・・・」


 黙るノゾミ。

 雪男はこらえ切れなかったのか、ノゾミの胸元を掴む。


「どうなんだ?他にも男がいたのか?俺をだましていたのか?」

「・・・・いた。でも、あなただって妻子がいるでしょ。同じじゃない」


 雪男は激怒する。

 自分が裏切られて事に対して激怒しているのだ。

 信じていた女に裏切られた。

 自分が心を許した女に裏切られた。

 そこに自分に妻子がいる、相手がどうこうは関係ない。

 

 想いを押さえ切れなかったのか、雪男はノゾミを突き飛ばす。

 

 バシャンと雪に埋もれるノゾミ。


 だが、裏切られた雪男は怒りが収まらないようだ。


「俺に・・・嘘をつきやがって」

「何、被害者ぶってるのよ、あなたも同じじゃない」


 ノゾミは叫び、雪の中、走り出して逃げた。


「ま、まてっー!」


 それを追う雪男。

 二人はマイコから遠ざかっていく。


(これは・・・危ないわね)


 マイコは大きなお腹を気遣いながらも、後を追ったのだった。

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