【記憶】 ノゾミ 高校時代2-5
6月。
雨の季節。
しとしととふる雨。
そんな中、私は海比君の部屋に来ていた。
「ノゾミの中、暖かくて、すっげー気持ち良い。最高っ!」
私たちは体を合わせていた。
香織に隠れて関係を続けていたのだ。
週に2回は彼の家に来ている。
行為が終わると・・・・
「ノゾミ。俺、香織と別れるよ」
急に海比君がいいだした。
(え?)
正直驚いた。
「え、なんで?」
「だって香織といるより、ノゾミといる方が楽しいから。それに・・・隠し通すのも嫌なんだ。こういうのはダメだろ」
海比君はさっぱりとした運動部タイプだからか、香織のことを気にしているようだ。
「いいよ。そのまま付き合ってて」
「なんで?ノゾミだってオープンに付き合いたいだろ。学校で手だってつなげるようになる」
私は今の関係で満足していた。
もし、海比君が香織と別れて私と付き合うようになれば、今の充実した関係が終わってしまうと思ったのだ。
香織のモノでない彼に、魅力を感じられるかどうか自信がなかった。
「かおりんに悪いから。かおりんが自分から別れたいっていうまでダメ。私、かおりんの親友だよ。そんなことできない」
「だけど・・・こういうのはダメだろ」
海比君が渋い顔をする。
「いいの。私はいいから。かおりんだって何もいってないんでしょ?」
「それは・・・・俺が隠してるからで」
実際香織は気づいていないようだった。
2人の関係は上手くいっているように見える。
「じゃあ今のままでいいじゃん。楽しいでしょ」
「それはそうだけど・・・」
不安そうな海比君。
「何、かおりんのこと嫌いなの?」
「いや、嫌いじゃないよ」
海比君は複雑な表情で呟く。
「ちっちゃくてかわいいもんね」
「・・・・うん」
「じゃあ、今のまま。付き合ってれば良いよ」
「・・・・そう・・・だな」
彼が何かを飲み込んで「うん」と頷くと。
ピコリンっ!
海比君のスマホがなった。
メール音だ。
「あっ、私、みーちゃおっ」
「ちょ、こら、ノゾミ」
私が彼のスマホ画面を見ると、香織からだった。
香織:さびしくなっちゃた。今、何してる~?
「かおりん、寂しいって。かわいいね」
「返せ。俺のスマホ」
「いやっ。私が返信してあげるねー。香織に何してるか教えてあげないと」
「ば、ばか。やめろ」
私はスマホを操作して打ち込んで送信~
海比:遊んでる
海比君は画面を見て安心する。
そんな彼の顔を、私はニヤニヤして見る。
「ビックリした?私がへんなこと書くと思った?」
「あ、あたり前だろ。心臓が飛び出るかと思った」
ピコリンっ!
再び海比君のスマホがなった。
メール音だ。
香織:いいなぁ~。私は勉強中
「香織、勉強してるって」
「俺も一緒に画面見てるから分かるよ」
「じゃあ、勉強中邪魔しちゃ悪いから、返信はしないでおこうね」
「はぁ?こういうのがすぐに返さないとダメだろ」
「大丈夫、寝てたっていえばいいよ。かおりんは気にしないよ」
「そうかな・・・・」
海比君は渋るが・・・
私は彼の体の一部をみる。
「あっ、また元気出てきた。もう一回しよっか?」
海比君の体を触ると・・・
「・・・・・そうだな」
彼も納得するのだった。
私たちは再び体をあわせたのだった。
ピコリンッ!
再び海比君のスマホがなったが、私たちは無視した。
多分、香織からのメールだと思った。
でも何故か、そう思うと心が充実した。
◆
学校。
最近どこか香織の元気がない。
表向き香織と海比君は上手くいっているように思える。
でも、元気がないのだ。
だから皆で香織を励ます。
「どうしたの?かおりん」
「何かあったの?」
私たちの言葉に対して、香織は笑顔で答えるが・・・・どこか暗い。
「別に何もないよ・・・ただぁ・・・」
「何々?」
「教えて。私たち、かおりんの味方だよ」
香織は暗い顔をしてから。
「なんかね。海比君が最近ちょっと変なの?」
「具体的には?」
「なんか最近そっけなかったり、連絡しても時々返信が遅いの」
「しょうがないよ。男の子だし」
「そうそう。うちの弟も全然返信遅いよ。お母さん、いつも怒ってる」
「部活が忙しいんじゃないの?ほら、運動部だし」
私たちは励ます。
香織の不安を打ち消す。
「そうかも・・・・でもね、ちょっと可笑しなところもあるんだ」
「何?」
「なんかね。最近変なの。変としかいえないんだけど、なんだろう、やっぱり変なの?」
香織は「変」という言葉を繰り返す。
具体的に何がおかしいか分からないのだろう。
「気にすることないよ。すっごく上手く言ってるように見えるよ。うらやましいぐらい」
私は香織を褒める。
私がマイコに目を向けると。
「うんうん。元気だしなよ」
マイコも香織を慰める。
「気にすることないよ。付き合うと関係は変わるし。私の経験はあてにならないかもしれないけど。
相手がゲスだったから」
私が自虐ネタを披露する。
ちょっと沸き起こる笑い。
「うんうん。ゲス宮は別として、海比君は良い人でしょ」
「そうだよ。あんなのと比較しちゃダメ」
「そうだね」
香織は少し元気を取り戻したようだった。
彼女を励ましていると、私は何度かマイコに見られたきがした。
マイコが何をいいたいのか・・・私には分からなかった。
◆
学校の廊下。
私が偶々一人になったところを見計らってか、二宮君が現れた。
こりずに私に話しかけてくる。
「ノゾミ、なぁ、やり直さないか?」
無視しても、何度も話しかけてくる。
「ノゾミ、なぁ、俺が悪かったよ。反省した、だからやり直さないか」
「俺は変わったんだよ。もうあんなことしないからさ。お願いだよ」
「俺さ、自分の心を見直したんだよ」
二宮君は一方的に話す。
私が「面倒だな~」と内心思っていると。
「おい、お前、離れろ!まだこりてないのか!」
海比君が現れて、二宮君を怒鳴る。
一瞬ビビル二宮君だったが、すぐに臨戦態勢に。
「はぁ?なんだよ?俺はノゾミの彼氏で・・・」
「お前は元だろ!彼女が嫌がってるから近づくなっ!」
「じゃあ、お前は何だよ?」
二宮君が海比君を睨む。
「俺は・・・・」
少しいいよどむ海比君。
「俺は彼女の友達だ。さっさとどっかいけっ!」
二人の騒ぎを聞きつけてか・・・・「何だ?何だ?」っと周りに人が集ってくる。
「ゲス宮だってよ」「また?」「こりないな」っと声が聞こえる。
私たちを囲む生徒達。
二宮君は状況が不利だと察したのか。
「くっ。くそっ・・・・ノゾミ・・・諦めないから」
捨てセリフを吐いて海比君を睨む二宮君。
海比君もにらみ返す。
2人がにらみ合ってから、二宮君は去っていった。
二宮君が完全にさったのを確認してから、海比君が私を見る。
「大丈夫か?」
私を心配そうに見る海比君。
「うん。ありがとう。なんともないよ」
「そうか。よかった」
いつのまにか香織もそばにいた。
「なにか声が聞こえたけど・・・ノゾミ、大丈夫?」
「うん。かおりんの彼氏が助けてくれたから」
「よかった。お手柄だね、海比」
微笑む香織。
「偶々みかけたから」
謙遜する海比君。
「でも、二宮君もしつこいよね~。別れてもう一ヶ月以上たつのに。しかもあんなことして・・・」
「・・・うん。中々ふっきれてくれないみたい」
ほんと。
不思議なぐらい二宮君は私につきまとっている。
一体私のどこがいいのか?
私自身分からない。
「ノゾミ、十分に注意しなきゃ」
「・・・うん。そうだね」
私は二宮君に対して少し不安を抱いたのだった。
この光景を、マイコは遠くから神妙な顔で見ていた。