大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 24
ぐつぐつ鍋が煮えている。
鍋が沸騰している。
鹿鍋だ。
タイラーが今朝調達してきた鹿肉や、私とオカリナが調理した野菜が入っている。
ウイナ、エクト、オカリナと一緒に食べる。
ちょっと早い夕食タイム。
エクト:「うまいなーこれ。やっぱりオカリナ、料理上手いよな」
オカリナ:「えへへへ、そうかな」
エクト:「そうだよ。里でもかなり上手い方だよ」
ウイナ:「エクト、私の料理は?」
ウイナが無表情でエクトに聞く。
エクト:「それは・・・その、気持ちが入っていて良いよ。この鹿肉も柔らかいな」
ウイナ:「・・・・・オカリナ、後でこの料理教えて」
オカリナ「うん、勿論だよ」
エクト:「それに、この野菜の切り口、見慣れない、ノゾミか?」
(あっ、やっぱり気づかれた。タイラーも気づいたけど・・・・)
「うん。そうだよ。皆気づくんだね」
エクト:「そうだな。ノゾミのは特別分かりやすい」
「そうなんだ」
エクト:「多分、センスあるよ。切り口を見れば大体戦士の才能が分かるんだ。族長が言っていた」
ウイナ:「うん。ノゾミは才能有る。私もそう思う」
2人が頷く。
オカリナ:「よかったね。ノゾミ、ウイナはすっごく剣の扱いが上手いの。滅多に褒めないウイナが褒めたんだから、相当だよ」
「なんだか恥ずかしいな。でも、ありがとね」
(本当に・・・恥ずかしい)
私は照れくさかった。
エクト:「ノゾミは銃でクマを倒したんだろ。剣はもってないのか?」
エクトが私の服装をみながらきく。
他の皆は腰に剣を下げているが、私だけ下げていないのだ。
「小型ナイフなら、タイラーから貰ったよ」
エクト:「そうか。戦士になったんだから、剣を貰えよ。族長様に言えば、きっともらえるぜ」
エクトは自分の腰につけている剣をみせる。
ウイナ:「私もそう思う」
ウイナの腰にも剣がついている。
でも、私は疑問に思った。
そもそも何故皆剣を持ているのか。
「銃でたたかっているのに、剣が必要なの?」
エクト:「大必要だぜ。銃は弾に限りがあるし、威力が限られる。それに、大抵の精霊術と相性が悪いんだ。
イーグルとか、銃特化の精霊術だと別だけどな」
ウイナ:「エクト、外の人に精霊術の話はしちゃだめ」
ウイナが冷静に注意する。
エクト:「あっ、そうだっけ。でもいいだろ。精霊様に選ばれたんだから。なぁ、オカリナ」
オカリナ:「うん。いいと思う。それにもうタイラーの精霊術をノゾミは見たみたいだし」
エクトとウイナが驚いて私を見る。
エクト:「本当か?あのモコモコを見たのか?」
「あはははっ、うん。背中に乗せてもらった」
(確かにモコモコしてた)
ウイナ:「不思議。タイラーが一人で精霊術できるなんて・・・」
ウイナは首をひねる。
オカリナ:「違うよ。タイラーはノゾミと交信して使ったの」
エクト:「へぇー。そこまで相性が良いのか・・・って、いいのかよっ!?タイラー、奥さんいるだろ。キイネさん」
エクトがばつの悪そうな顔をする。
オカリナ:「しょうがなかったんだよ。危ないところだったみたいだから」
エクト:「そ、そうだな。まぁ、命にかかわるんならしょうがないか。でも凄いな。きたばっかりで交信ができるなんて」
エクトは興味深そうに私を見る。
だが、そんなエクトを見てから、ウイナはじーっと私を見る。
ウイナ:「ノゾミ、一つ言っておく。エクトに触らないで」
(えっ・・・)
私はウイナにきつく見られる。
エクト:「な、なに言ってるんだよ、ウイナ」
オカリナ:「そうだよ、ウイナ」
驚く二人。
ウイナ:「エクトは黙ってて。交信は心を交わすこと。心を重ねること。だからノゾミはエクトと交信しちゃダメ。これは本気。
もしやぶったら、よくないことが起きる」
エクト:「・・・・・」
オカリナ:「・・・・・」
場の空気が凍る。
ウイナは本気っぽい。
確かタイラーがいっていた。
ウイナはエクトのことが好きだから、絶対にエクトには触れるなと。
もしやぶったら、大変なことになると。
「うん。大丈夫、安心して」
オカリナ:「そうだよ。ウイナは変なこと心配しなくても大丈夫だよ」
エクト:「まったく、飯がさめちまう」
微笑むオカリナと、鍋を食べるエクト。
オカリナ:「ジャガイモおしいね」
エクト:「だな」
ウイナ:「うん・・・おいしい」
再び暖かい団欒に戻ったのだった。
どうも、赤ポストです。
短編が好評?であったため、連載を始めました。
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「【連載版】生産職の俺は彼女を寝取られたので、パーティーを抜けて自立することにした」
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