大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 23
夕方。
秋山の峰
私の腕に数字『21』が刻まれたこともあり、暫く大事を取って休むことになった。
タイラーは周りの警備を、オカリナは夕食を作っていた。
すると・・・
「んん!?ノゾミ、オカリナ、何かが近づいてくるっ!後ろに下がれっ!」
タイラーが私達の前に出る。
「うん」
オカリナは料理を中止して銃を持つ。
私も起き上がって銃を持つ。
襲撃者に備えるのだ。
(クマかな・・・・またクマが襲ってくるのか・・・)
私が不安に思っていると・・・
「タイラー・・・これ、違う、この気配」
「オカリナ・・・た、確かに、これは・・・・」
二人が視線を向けた先から現れたのは・・・・見覚えの有る2人だった。
「ウイナっ!、エクトっ!」
タイラーが叫ぶ。
そう。同じチームの2人だった。
強そうな女性のウイナと、子供っぽい男の子、エクトだ。
2人はこちらをみる。
ウイナ:「三人だけ、他の人は?」
エクト:「そうだよ、イーグルとアランはどこだよ?」
2人は私たちの後ろを見る。
イーグルとアランの姿を探しているのだろう。
タイラー:「ここには来ていない。多分・・・直に来るだろう」
オカリナ:「そうだよ。でも2人とも無事でよかった。ねぇ、ノゾミ」
「うん」
私も頷く。
タイラー:「でも、2人にしては少し時間かかったな。クマにでも襲われたのか?」
エクト:「違うよ。本当はもっと早くこれたんだ」
エクトは悔しそうに話す。
タイラー:「じゃあ、何してた?」
エクト:「ウイナがゆっくり進みたいっていって聞かなかったんだよ」
タイラー:「ゆっくり?」
タイラーは不思議そうな顔だ。
エクト:「何回も休憩したんだ」
エクトは疲れた顔でいった。
オカリナ:「ウイナ、どこか怪我したの?」
ウイナ:「してない。エクトともう少し2人でいたかったの」
(・・・・・・・・・・そ、そうなんだ。確か、二人は恋人だったかな)
タイラーとオカリナも拍子ぬけしたようだ。
つまり、2人は森の中をデートしていたらしい。
タイラー:「そ、そうか・・・」
エクト:「本当なら昨日のうちにこれたんだ。俺は早く来たかったのに」
不満そうなエクト。
オカリナ:「まぁまぁエクト、2人とも無事でよかったよ。休憩も大事だし。それに、2日以内に集合ってのが目標だったわけだし」
場を和ませるオカリナ。
ウイナ:「そう。私は約束を守った」
エクト:「そういう問題じゃないだろ。チームのことを考えないとっ」
エクトがちょっと拗ねる。
彼は本当にもっと早く着たかったのだろう。
そんな彼が私を見る。
エクト:「でも、ノゾミが無事でよかったよ。客人を死なせるわけにはいかないからな」
「ありがとう。でもタイラーが守ってくれたからだよ。ここにきてからはオカリナにもよくしてもらったし」
私がいうと、タイラーが前に出て。
タイラー:「いいや、ノゾミは自分の力で生き延びたんだ。既に3匹もクマを倒してるだから」
嬉しそうに話した。
エクト:「ま、まじかよっ!すげーな。どうやったんだ?」
エクトが目を輝かせる。
話に食いついてきた。
「別に・・・ただ、偶々銃があたっただけだから」
オカリナ:「ううん。ちゃんと狙ってたよ。それに偶々でも凄いんだよ。ほらっ、ノゾミの右腕見てみて」
エクトとウイナが私の腕を見る。
そこには・・・・
『21』ペインティウス・ウノ
エクト:「・・・・・」
ウイナ:「・・・・・・」
2人とも驚愕の表情を浮かべている。
固まっている。
エクト:「ま、まじかよ・・・・すげーな。どうなってるんだよ、これ」
ウイナ:「ほんと・・・・ノゾミ、外の人なのに・・・」
まじまじと私の腕を見ている。
表情が乏しいウイナも目を輝かせている。
タイラー:「そういうことだ。ノゾミは精霊様に認められた。これでちゃんとした仲間だ」
エクト:「そうだな。これまでは客人って感じだったけど・・・本物だ」
ウイナ:「・・・戦力になる」
エクト:「ノゾミ、よろしくな」
エクトが私に向かって手を差し出すので、私は握手をする。
「こちらこそ」
エクトを見て、ウイナも手を差し出す。
ウイナ:「私も・・・よろしく」
「うん、よろしくね」
ウイナとも握手した。
2人と2言3言はなしてから。
エクト:「でも、本当すごいよなー。ノゾミ、しかも21だぜ」
ウイナ:「欠番・・・・ここ数十年でてない数字」
「えっ・・・・・」
私は驚く。
てっきり、ただの21番だと思っていたのだ。
でも、2人は意味深に頷いている。
21は特別な番号なのかもしれない。
エクト:「ノゾミ、文様、ちょっと触っていいか?」
「えっ」
私は驚いてしまう。
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったのだ。
ウイナ:「エクト、だめ。失礼。変わりに私の文様に触れれば良い」
ウイナは『4』の文様を見せる。
エクト:「ウイナのはいつも見てるだろ。21って貴重だぜ」
ウイナ:「私の数字も貴重」
ウイナがエクトの手を掴む。
エクト:「わ、わかったって。ウイナ、そんなに強い力で掴むなよ」
ウイナ:「・・・・うん」
オカリナはごたごたする2人を見て。
オカリナ:「あはははっ」
と苦笑い。
オカリナ:「ウイナもエクトも休みなよ。ご飯も用意してるから。お腹減ったでしょ」
エクト:「そういえば良い匂いがするな。飯だ飯」
ウイナ:「ご飯・・・・ゴクリ」
オカリナがさっきまで作っていた料理の匂いがしてきたのだ。
タイラー:「そうだな。俺が周りを見張ってるから、ノゾミも2人と一緒に食べると良いよ」
タイラーが何気なく呟く。
(え、タイラー何を・・・私はまだ2人と打ち解けてないのに・・・)
オカリナは空気を読んだのか。
オカリナ:「私も一緒にいくよ」
(よかった、オカリナも来てくれるらしい。彼女がいれば場が和むと思う)
私は食事に向かった。