大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 21
秋山の峰。
ノゾミはオカリナと一緒に縄を結んでいた。
罠を作っていたのだ。
縄を結んで網を作る。
この網でクマの動きを止めるのだ。
「器用だね。ノゾミは」
オカリナは、私の作った縄を見て驚いている。
「私、裁縫得意なんだ」
昔から得意なのだ。
裁縫をしていると心が落ち着いた。
何かあると、部屋で一心不乱に何かを裁縫していた。
オカリナが私の縄を確認すると・・・・
「うんうん、ちゃんと結べてる」
満足そうに喜ぶ。
そして暫く縄作業をしてから・・・・
「じゃあ、川から水を汲んでこようか」
「そうだね」
私とオカリナは川に向かった。
川に到着。
大きな桶に水を入れる。
が。
バシャン
いきなりクマが現れた。
どこからともなく現れたのだ。
オカリナではなく、私の傍に現れたのだ。
「ノゾミ、逃げてっーー!!!」
オカリナが叫ぶ。
彼女はすぐに銃を手に取ろうとする。
だが私は落ちついて背中の銃を手に持つ。
昨日2匹倒したんだから、もう1匹もいけるはず。
冷静にクマに狙いをつける。
そして。
バンッ
クマを銃撃する。
「GUOOOOーーーー!!!!!!!」
悲鳴を上げるクマ。
お腹にあたったのだ。
だが一発だと死なない。
こちらにかけよってくるクマ。
私はまともに狙いをつけられない。
銃撃の反動で照準がずれるからだ。
いくらあわしても必ず外れる。
だから、私が銃をあてる方法は一つ。
なるべく近くで撃つしかない。近づくのが大事。
私はもう一発撃つ。
バンッ
「GUAAAAAAAAA!」
クマにあたり、クマはよろめいた。
その瞬間、私はクマの直ぐ傍まで近づき、頭に銃をつきつけて・・・・撃つ!
バンッ
「GUOOOOOOOOOOOO!」
バタンッ
クマが倒れた。
(はぁーはぁーはぁー、倒した)
無我夢中で動いて倒したのだ。
(ほんとうに夢中で・・・・何も覚えてない)
その瞬間。
腕が痛む。
右腕が痛むのだ・・・
「うぐううううううううーーー!!!」
「ど、どうしたの?ノゾミ、怪我したの?」
私によってくるオカリナ。
それに。
「なんだ、今銃声が!」
タイラーも駆け寄ってくる。
私は腕の痛みに震える。
燃えるように腕が痛いのだ。
焼印でもおされているかのように、激痛が走る・・・
信じられないような痛み。
神経が焼ききれるかのような激痛。
体を無理やり作り変えられているかのような感覚。
(く、ぐるしいぃぃぃいいいい・・・・・・・・)
私が腕を押さえてのたうちまわっていると・・・
オカリナとタイラーが私を見て。
「ま、まさか・・・・この反応?」
「うん。タイラー・・・これって、あれなんじゃ・・・」
「あぁ、間違いない。この気配・・・・やっぱりノゾミは特別だったんだ」
「・・・・ノゾミ・・・・」
歯を食いしばって痛みに耐えていると・・・いきなり嘘の様に痛みが消える。
そして。
右腕が熱かった。
ジンジンと燃えるような暑さ。
熱さの元、熱い右腕を見ると・・・・
な、なんと、そこには記号が描かれたいた。
『21』
タイラーやオカリナと同じように、腕に数字が刻まれていたのだ。
「な、なんで・・・私に・・・」
私が驚いていると。
「やったなノゾミ。精霊様に認められたんだ。これでノゾミも戦士だ」
「凄いよ、ノゾミ。外の人なのに、初めてかも」
タイラーとオカリナが私を数字を凝視して喜んでいる。
「え、これって、やっぱり」
(2人と同じもの?)
「そうだ。戦士の証だ。精霊様のお認めになったんだ」
「やったねー、ノゾミ。これ、すごいことだよ」
2人は素直に喜んでいる。
とても目が輝いている。
表情がいきいきしている。
「でも、私はクマを殺しただけで・・・それにクマは前にだってタイラーと倒したし」
そう。
私はクマを倒しただけだ。
それに初めてじゃない。
「ノゾミ、数字は結果に大してではなく、精霊様が認めた時につくんだ。何匹倒してもつかない人もいる」
「そうだよ。精霊様にノゾミの力が認められたの」
「え・・・うん」
私は突然のことに戸惑いながらも、2人に喜ばれて心が暖かくなった。
それは腕に宿った力のせいかもしれない。
私はふわふわとした気持ちになっていた。
尋常ならざる力を手に入れて、心と体が沸き立っているのかもしれないのだ。
「21、ペインティウス・ウノ か」
タイラーが私の数字を見て呟く。
「21~21~。凄いよー。私もノゾミにすぐ抜かれちゃうかも」
オカリナははじける笑顔だ。
鼻歌も歌っている。
「そんな・・・偶々だよ」
私は謙遜しつつも、右腕に流れる強い脈動を感じたのだった。
これが・・・力なのかもしれない。