表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/42

大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 18 side アラン

【アラン】



(くそ・・・・冗談じゃねー、なんで俺だけこんな目に・・・)


(なんで執拗に追ってくるんだよ。あのクマ達はっ!)


 クマの待ち伏せが失敗し、アランはクマの群れから一人で逃げていた。

 その表情は必死だった。

 余裕がなかった。



  【上から見た配置図】

 

         ◆    ◆    ◆   ◆   ◆

  

   ◆ ◆◆◆◆    私&タイラー  オカリナ 

     ◆◆◆        ↓       ↓

 ◆           |――――――――――

 ◆   イーグル →| ◆    ◆    ◆◆

 ◆    アラン→  |    谷底     ◆◆

 ◆    ウイナ→ | ◆  ◆   ◆   ◆◆       ◆←クマ          

              ―――――――――――

 A ◆◆◆ ◆◆◆      ↑   

 ↓       ◆◆◆      エクト     

 ↓   

アランが逃げた方向



 アランの後ろには、かなりの数のクマの群れ。

 一心不乱に追いかけてくる。


(イーグルの方にもかなりいったようだが、俺の後ろにも多いっ)


 バンッ バンッ バンッ

 走りながら銃をうつが、イーグルの様に一発でヘッドショットとはいかない。

 クマの体にはあたるが、一発あたったところで倒れはしない。

 クマの体、筋肉と脂肪の鎧は、それ程分厚いのだ。


(くそ、他の奴らと合流すべきだった。イーグルかウイナと・・・・)



 アランは逃げる時、瞬時にそう考えたのだ。 

 自分、イーグル、ウイナが敵の包囲網の甘い場所 (A地点)を一緒に目指せば、危険度は低いと。


 だが、現実は違った。


 ウイナはいきなり狂ったようにエクトの元へ向かったのだ。

 クマの群れの中に突っ込んでいったのだ。

 多分、エクトを助けにいったんだろう。

 だが無謀だ、危険性が高い。


 しかし、俺が「ば、ばか、ウイナ。そっちにいくなっ!」と叫んでも、意味をなさなかった。

 ウイナは一直線にクマの群れに突っ込んだ。

 彼女を追うのは無理だった。クマの群れに自ら突っ込むのはさけなかった。


(まぁ、エクト狂いのウイナなら仕方がないが)


 もしかしたら、ウイナが突っ込むかもしれないとアランは予測していた。

 だが、もう一人の仲間、アランがイーグルの方向を見た時には、イーグルも既に移動していた。

 

 アランがウイナに注意を向けた瞬間に、アランとイーグルの間にはクマの壁が出来ていたのだ。

 時既に遅し。

 イーグルと合流するのは無理だった。

 

 一瞬の判断をアランは誤ったのだ。

 いや、遅れたのだ。

 ウイナを見るのではなく、イーグルを見るべきだったのだ。


 こうなったアランの最善解は、最初から逃げようと思っていた包囲網が甘い地点 (A地点)に全力で逃げることだった。

 だから移動した。

 もう一度間違えないように。



 バンッ バンッ バンッ

 アランは銃をうって逃げるが、このままではジリ貧だった。

 少しづつクマに追いつかれているのだ。

 クマの移動速度は速い。

 普通に走れば人よりも早いのだ。

 それに、アランは銃を撃ちながら走っているだけあり、出せる速度に限りがある。


(このままではまずい・・・)


(いっそ、立ち止まって正面から倒しきるか・・・)


(いや、もしかしたら、このまま逃げられるかもしれない。クマが途中で追うのをやめるのかもしれない)


 アランは迷っていた。

 だが、容赦なくクマは追ってくる。


 バンッ バンッ バンッ

 アランは銃をうって逃げるが弾が切れる。

 すぐに鞄から予備の弾奏を補充する。


 その隙をついてクマが距離を縮めてくる。


(あっ、しまった)


 アランは焦って弾奏を地面に落としてしまう。

 だが、取りに戻ることは出来ない。

 そうすればクマに追いつかれるのだ。


(っち・・・・)


 唇を噛むアラン。


(次は冷静に)


 彼はもう一つの予備の弾奏を鞄から取り出して銃に補充した。


 バンッ バンッ バンッ

 銃をうってにげる。

 だが、すぐに弾が尽きる。


 クマはまだ追ってくる。


(だめだ、このままじゃ逃げ切れない・・・)


(・・・・・・・・)


 アランは考える。

 自分が生き延びられる方法を。

 今アランを追ってきているクマは、ざっと10匹程。

 体長は3m、4mのクマ達だ。


(奴らを倒す方法はある)


(やるか?精霊術を使うか?)


(使えば奴らを倒すことが出来るはずだっ)


 しかしアランには不安があった。

 精霊術は精霊様が認めた絆の力。想いの力。

 今、アランは一人。傍にパートーナーがいないのだ。


(くっ、あいつがいない・・・・)


(あいつがないと・・・俺の精霊術は満足に発揮できないかもしれない)


 精霊術の源となる力が不安だったのだ。 

 その源を自分ひとりだけで供給できるかどうか分からない。

 自信がなかった。


 すぐにガス欠になる未来が頭をよぎる。

 もし、ガス欠になって失神でもすれば・・・・俺はクマに食べられて終わりだ。


 死体になった自分の姿が頭に浮かぶ。


 だが頭を振って追い払う。


(やるしかない・・・・今、やるしかないんだっ!)


 アランは心を決めるのだった。

 彼は逃げるのをやめる。

 これまでは全速力で走って逃げていたが・・・足を止めて、追ってきたクマに向き合う。


 クマは突然のアランの動きに警戒してか、彼の近くで足を止める。

 そして、警戒しながらもアランを囲む。


 全包囲されたアラン。

 既に逃げ場はない。

 360度、クマに囲まれている。


 だが、この状況でアランは冷静に深呼吸するのだった。

 新鮮な空気が肺の中に入っていく。

 極度の緊張感が頭がクリアになっていく。


 アランは自分言い聞かせる。



(心と頭を落ち着けて・・)



(気持ちを集中させる)



(そして思い描くのは・・・最愛の人の姿)



 次の瞬間・・・・アランは心で唱える。



 ―――『精霊術 解 蜂蜥蜴!』



 アランが光に包まれ、強烈な光が辺りを包む。

 白い光が辺りを包みこみ、熊たちはたじろぐ。



    そして・・・・・・・


    現れたのは・・・・・・・


    異形の姿だった。



 アランの腕は巨大な鎧で覆われていた。

 右腕の先には鋭利な針が現れ、紫の怪しげな針が鋭く尖っている。

 強力な毒針だ。

 

 彼の手足はウロコに覆われている。

 黄色に輝くウロコだ。 


 蜂の毒針と、蜥蜴の運動能力を特化させた精霊術。

 『精霊術 蜂蜥蜴』



 いきなり目の前に見知らぬ者が現れて驚くクマ達。

 動きが止まる。


 だが、アランはすぐさま動き出す。

 犬の様に4足を地面につけて、縦横無尽に動き回る。

 木の表面をだろうとどこだろうと、高速移動できるのだ。

 木々から木々へと飛び移り、目にも留まらぬ速さで辺りを蹂躙する。

 立体的に動くアランをクマ達は目で追うことすら出来なかった。



 ここからは虐殺だった。


 ブスッ ブスッ ブスッ ブスッ

 一体一体クマに毒針を差し込んでいくアラン。


 クマ達は刺されたことすら感じなかっただろう。

 それ程アランの動きは早く、針は鋭かったのだ。



 数秒後。

 アランは元の位置に戻っていた。


 クマ達はアランに向かって突撃しようとするが・・・・

 一匹も動くことが出来なかった。


 クマは不思議そうにアランを見る。

 アランはそんなクマ達に言葉を投げかけた。



「毒の味を・・・・知れっ!」



「GUAAA!!!!!」

「GUOOOO!!!!!!」

「GUAAAAA!!!!!!!!」


 バタンッ バタンッ バタンッ バタンッ バタンッ バタンッ バタンッ


 喉をかきむしり、苦しそうに倒れていくクマの達。

 毒が体に回ったのだ。

 数秒暴れた後、全てのクマが地面に倒れたのだった。




 静寂が訪れる。

 多くの命が散ったのだ。



 クマを一掃したアラン。

 だが、彼の力もつきかけていた。

 パートナー無しでの精霊術。

 それに耐えきれるだけの力は、まだアランにはなかったのだ。

 一人で精霊術を行使するには、まだ力が及ばなかったのだ。


 急速に力が抜けていくアラン。

 意識も抜けていくアラン。


 彼の体から精霊術がとかれ・・・普通の人間の体に戻っていく。


(くっ、せっかく倒したのに・・・・・・ここまでか・・・・)


 バタンッ

 アランは倒れたのだった。








 数時間後。



 アランが目を覚ますと、目の前には黒髪の少女がいた。

 見慣れない格好をしている。

 部族の者の格好ではなく、外の人が着るスカート姿だ。


「3620、3621、3622、3623、3624、3625・・・・」


 目の前の少女はぶつぶつと呟いている。

 アランを見たまま言葉をつむいでいる。


 アランは思ったことを言葉にする。


「何を数えている?」


 少女はじーっとアランを見る。


「あなたが私の前で寝ていた秒数」


 少女の答えにアランは戸惑う。


「はぁ?なんだそれ。お前、外の人間だろ?何故ここにいる?」

「私があなたをここに運んだ。あのまま寝ていたら、あなた食べられていた」


 アランは周りを見ると・・・ここは森の中ではなかった。

 先程クマ達と戦った場所ではなかったのだ。

 

 どこかの洞窟の中のようだった。

 

(確かに・・・・ここならクマに教われないだろう)


 アランはほっと安心しつつも、再び少女を見る。


「お前、名前は?」

「私はメイコ」


「そうか、俺はアランだ」

「アラン・・・3文字」


 目の前の少女を不思議に思いながらも、アランは実感した。

 自分はこの不思議な少女、メイコに救われたのだと。

次回は記憶編です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手ボタン設置中。一言感想を送ることができます。

 

【1/6】短編が好評?だったので、連載開始です↓
【連載版】生産職の俺は彼女を寝取られたので、パーティーを抜けて自立することにした

 

2章後半 (5話)から話の展開が異なります↓
妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか? 【連載版:全国ご当地グルメ編 】

 

新連載です~ (数話で完結予定です)↓
3日後、婚約破棄されます。

 

同時連載中です↓
7人の聖女召喚~料理スキルLV80の俺は、おねえちゃんと世界最強になる

 

止まっていましたが、連載再開です~↓
チートスキル「美容整形」持ちの俺は、目立ちたくないのにハーレムに

 

おすすめ作品→「完成したら」作:乳酸菌
完成したら

 

おすすめ作品の解説です
恋愛短編『完成したら』~よく分かるかもしれない作品解説
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ