大自然、ヒグマ格闘編(石狩鍋) 12 +side集落
本編に戻ります。
題名の+ (+side)の場合は、本編+他視点の話になります。
完全に別視点のみの話の場合は、+をつけていません。
クマとの格闘を追え、「秋山の峰」に向かっていたノゾミとタイラー。
2人は、空を飛んでいるセスナ機を見た。
ノゾミは助かったと思った。
文明の利器を見たのだ。
セスナ機に助けてもらおうと思ったのだ。
だが、その飛行機は空中で爆発を起こし、どこかに墜落したのだった。
遠くで爆発音が聞こえた。
「タイラー・・・・」
私は呆然としてしまう。
そんな私を見てタイラーは。
「ノゾミ、気にするな。俺たちにできることはない。
俺達は俺たちの目標を達成する。あの飛行機が落ちたんなら、捜索隊がくるだろう」
「そうだね」
私たちは集合場所、『秋山の峰』を目指して再び歩き出したのだった。
◆
集落。
族長の家。
族長は周囲に飛ばした鷹の報告を得ていた。
クマと狩りに行ったものたちの動向を見守っていたのだ。
これは族長の精霊術『リンクビジョン』によるものだった。
刻印を結んだ動物と視界を共有することができる。
因みに精霊術とは、精霊の力を使役する、イップス族に伝わる技である。
「ほーう、チーム蛇は10匹、チーム虎は5匹、チーム龍は3匹の駆除か。中々だのう」
族長が戦況を確認していると・・・部屋の外から物音がする。
「ダメです。ハレルヤ様、ここに入っては」
「うるさいっ。俺はじじいに会う必要がある。そこを通せ」
「今、族長様は取り込み中で」
「うるさいっ。どうせ大したことやってないだろ」
誰かを止める補佐官の声と、近づいてくる足音。
そして、慌しく扉が開かれる。
目の前に現れたのは、族長の孫ハレルヤ。
彼は激昂していた。
「じじい。俺を行かせろっ!。俺がクマを倒してくる」
ハレルヤは叫ぶが、族長はほっとため息をつく。
「何度もいっておるじゃろ、じいいじゃない、族長だ」
「固いこというな」
「それにハレルヤ、主には既に任務を与えたはずじゃ。集落の警備という重要任務を」
「はぁ!最強の俺がそんな呑気なことできるわけないだろう。警護ぐらい他のものにやらせればいい。ここじゃ戦えない」
ハレルヤが声を荒げる。
だが、族長は落ちつたままだった。
「ハレルヤ、お主は最強ではない。主は精霊には愛されておらん。
それに、精霊様から部族最強の座、エクシードの名をもらっておらんじゃろう」
冷静に語り聞かせるように話す族長。
だが、ハレルヤは表情を固くする。
「それは、精霊様がお間違えになったんだ。現エクシード、あんなスカシタ奴より、俺の方が強いに決まってる。
昔は俺の方が強かった」
ハレルヤは唇を噛みながらも、強く主張する。
「現在は奴が一番じゃ。力の差が分からぬお主じゃないだろう。
腰にある文様がその証拠だ。『2』、それが精霊が決めたお主の実力。この里で2番目だ」
ハレルヤの腰には「2」という文字が刻まれていた。
これは精霊様が決める、戦士の序列であり、戦士の体に刻まれている刻印。
数字が小さくなればなるほど強力な兵士といわれている。
「う、うるさい、俺の方が強い。それをこの戦いで証明する。俺がNO1、エクシードになる」
ハレルヤは、自分の腰の数字をはじるように手で隠す。
「だめじゃ、主は守りの要だ、いくことは許さん。戦火をあげたい気持ちはわかるが、今しばらくここにおれ。
そして、ここで貢献するのじゃ」
族長が力強く言い放つと。
「ちっ、くそじいい」
ハレルヤはとげとげし声を荒げる。
「ハレルヤ、おとなしくしているのじゃ。精霊様は見ていてくださる。目だった戦果が全てではない」
「俺が行けば、すぐにこんな戦い終わらせる!」
「だめじゃ、お主は、ここにいるのじゃ。分かったな、ハレルヤ」
「くっ」
ハレルヤは唇を噛んでから、一旦落ち着く。
それから周りを見回す。
「で、その最強様、お偉いエクシード様はどこにいる?今日の集会でも姿を見なかったが」
「奴には既に任務を与えいる」
「いつもの秘密任務か・・・あいつばかり」
「奴は特別だ。誰しもが精霊に愛されるわけではない。ハレルヤ、もう、奴を追うのはやめろ。人にはそれぞれ道がある」
「うるせー!はけじじい!」
ハレルヤは叫んで部屋を出て行こうとするが、族長が声をかける。
「ハレルヤ、もうすぐエイナ族の方々が集落に訪れる」
「ふーん。精霊術で視たのか?」
ハレルヤは族長の精霊術を知っているのだ。
「あたりじゃ。エイナ続にはお主の婚約者もいるからのう。安全第一じゃ」
「それで?」
「そそうのないよう、出迎えるのじゃ。お前の妻になる人間もいるのじゃ」
「ちっ、分かったよ」
ハレルヤは族長の言葉を受け止める。
「上から見張っているぞ。くれぐれも面倒事をおこさんようにな」
「本当にめんどうな能力だな」
「族長には必要な能力じゃ」
「どうだか・・・」
悪態をつきつつも、ハレルヤは族長の部屋を出て行った。
彼の後姿を見て族長は呟くのだった。
「まったく。大丈夫かのう・・・・」
久しぶりに凄い&面白い作品を発見しましたのでご紹介です。
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「完成したら」(作:乳酸菌)
あらすじ
『遠距離になるのを目前にして、この頃の私には恋人の言葉が度々別れ話に聞こえる。
だから今言われた「似顔絵描いてよ」も、「別れよう」に聞こえてしまうのだ』
※ページ下部にリンク有り
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5000文字程の短編ですので、5分程で読めるかと思います。
しかし、さらっと軽く読むだけでは良さが「よく分からない」かもしれません。
「似顔絵書く話か~」ぐらいしか感想が出ないかも。
・ですが・・・
ちゃんと読めば (国語の読解問題風に読むと)、味わい深い作品でもあります。
思わず唸ります。
本作品は、直接心理描写を書かず、文房具で間接的に心理描写を表した作品です。
文学的な手法が使われた、なろうランキング作品ではあまり見ない作品であったりもします。
こう書いても正直よく分からないかと思いますので、下記で作品解説しました。(一つの解釈です)
『恋愛短編『完成したら』~よく分かるかもしれない作品解説』
※ページ下部にリンク有りです
こちらをご一読されれば、なんとなく作品の意味が分かるかと思いますので。
宜しければごらん下さい。




