【記憶】 ノゾミ高校時代編 1-2
◆登場人物紹介 (記憶編)
※ノゾミ、マイコは本編の若い時です。
ノゾミ 高校一年。二宮君と付き合っている。
マイコ 高校一年。ノゾミの親友。
二宮 高校一年。ノゾミの初めての彼氏。
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あくる日。
二宮君はいつも通り、なんとか仲直りしようと私に話しかけてきた。
もう私はなれっこになっていたので、さらっと無視した。
私は彼の目の前で、女友達と何気ない会話を続けた。
だが。
ここからがいつもと違った。
いつもならここで彼は諦めて帰ったのだ。
だが、今日は違う。
彼は私たちの傍にいた。
無言で。
二宮君はさすがに一週間無視され続けて怒りが溜まっていたのかも知れない。
私も毎日謝りに来る彼に対して、少しは気持ちが動いていた。
そのため、少しは話を聞いても良いかもしれないと思い始めていたのだ。
二宮君はしばらく私たちのそばにいて・・・・
それから、彼は大きな声で叫んだ。
私と私の友達、廊下の人全員に聞こえるような大きさの声で。
「知ってるかーこいつ。胸は離れてるし、乳輪は五百円玉サイズ。
下の毛は縮れてるし、やるとき赤ちゃん語になるんだよ。ざまーねーな、ノゾミ」
シーンと辺りが静まり返る。
それまで仲良く話していたのに、私も友達も黙る。
皆、時が止まったように表情が固まっていた。
誰も動かない。
まさに時が止まった瞬間だった。
不穏な雰囲気が漂っていた。
私は二宮君が何をいったのか理解不能だった。
だが、すぐに耳に反芻する言葉、音。
『知ってるかーこいつ。胸は離れてるし、乳輪は五百円玉サイズ。
下の毛は縮れてるし、やるとき赤ちゃん語になるんだよ。ざまーねーな、ノゾミ』
言葉の意味を理解すると、私はとんでもなく大きなショックを受けた。
皆の前、恥ずかしいプライベートなことを言われて、大声で叫ばれたのだ。
しかも、女友達も傍にいる。
よく知らない生徒も近くにいるのだ。勿論男子生徒も。
学校の廊下。教室の前の廊下なのだから。
(・・・・・え・・・・・・・・・・・)
私は何も考えられなかった。
友達も唖然とした表情で私を見ている。
周りの生徒も全員固まっている。
ポロリ
きづくと私の目から涙が出ていた。
涙が頬を伝わり、床に落ちていた。
私は無言で泣いていたのだ。
初めて人前で泣いた。
深く心に錘のようなものが落ちた。
二宮君は自分の失言にきづいたのか、オロオロとしている・・・
私は急激に羞恥心が高まる。
顔から火が出そうになった。
(ここにいられない)
強くそう思った。
(今すぐここから離れたい)
強くそう思った。
(ここにいちゃいけない)
だから私は、気づくと泣きながら走っていた。
後ろから、私を心配そうに呼び止める女友達の声が聞こえた。
何人かはすぐに私を追ってきているようだった。
足音が聞こえる。
それにもう何人かは残って彼を罵倒しているようだ。
『信じられない』『何言ってるの』『最低』『頭おかしいんじゃないの』等々と聞こえる。
でも、私にはすべて空虚な音だった。
ただの音として耳を通りすぎていく。
それぐらい精神が揺れていた。
現実感が急速に失われていた。
何も私の心には響かなかったのだ。
私の心に残っている音は、二宮君がいった言葉だけだった。
『知ってるかーこいつ。胸は離れてるし、乳輪は五百円玉サイズ。
下の毛は縮れてるし、やるとき赤ちゃん語になるんだよ。ざまーねーな、ノゾミ』
それが響いていた。
私はその日早退した。
次の日。
私は風邪ということで休んだ。
私はショックだったのだ。
学校に行って、皆の前に合わす顔がなかった。
皆が私のことをどう思っているか不安だった。
友達からは励ましのメールが来た。
いっぱい、いっぱい、きた。
よく知らない子からもきた。
でもそれは、皆に話が広まっていることを意味していた。
そのせいか、私の頭にはどんどん不安な想いが浮かんでくる。
不安、悪い予想を打ち消すように、私はベッドの中でもんもんとしたのだった。
とりあえず布団をかぶって寝た。
で。
一通り沈んだ後、冷静に考えた。
二宮君が行ったことは信じられなかった。
廊下でプライベートなことを、大声で叫ぶなんて、普通なら絶対にしないと思う。
ちょっと変わってる人でもしない。
聞いたこともなかった。
私は二宮君のせいで深く傷ついた。
彼があんなことをすると思わなかった。
つい数日前は本当に良いと思った人が、ひどい人だったのだ。
信じた人に裏切られたのだ。
いや、あんな男を信じるなんて。
あんな男を自分の彼氏にした自分の判断力を深く嘆いた。
思えば・・・
最初から彼、二宮君は女子の間では人気がなかった。
でも、私だけがビビっときたと思って、一人で舞い上がっていたのだ。
すっごく魅力的な人だと思っていた。
でも実際は、私の思いより、皆の評価の方が正しかったのだ。
私が間違っていた。
二宮君はとんでもないクズだった。
もっと、皆の声を聞いておけばよかった。
そうしたら・・・こんなことにもならなかったと思う。
こんな傷つくこともなかった。
私はこういう想いを二度としたくないと思ったのだった。
これが、ノゾミが初めて自分の判断が信じられないと思った出来事だった。
初めて付き合った人はクズだった~の巻
これからも、ちょくちょく過去話をいれていきます。