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第六章 一話 外界での戦闘

 そして翌日になり、まだ夜が明けきらない朝もやの中で、ポムの家の庭から馬がいななく小さな声が聞こえる。

 夜明けを告げる鐘の音が小さく一つ鳴る約束の刻限になると、子ども達がちらほらとポムの家に集まってきた。

 その子ども達と一緒にミルトの母マレスとミラーの母ミレーヌも、前日に急いで準備をした大きな荷物を持ってやってきている。

 そしてそれぞれが持ち寄った荷物を、皆で庭の立木に繋がれた二頭の馬の背にくくりつけて、やっと出発の準備が整った。

 これからの街中の道中ではあまり目立ちたくない事情もあり、マレス達の母親組とはもうここで別れる事にしておいた。

 ミレーヌは娘のミラーを抱き締めて強い抱擁を交わしていた。マレスも子ども達を順番に抱き締めていき、ミルトも最近は母の抱擁から逃げがちだったが、今回は大人しく母の胸に抱かれていた。

 ポム達一行はマレス達に見送られて出発すると、出来るだけ人気のない道を選んで街の中を進んでいった。

 ポム達一行の目的地は南の大手門ではなく街の北側にある小さな北の通用門であった。ここは普段はほとんど開かれる事のない常閉門であり、警備の人数も少なくいつもなら護人が二人いるくらいなものだ。

 ポム達は遠くから北門の様子が見える位置までやって来ると、そうっとその門の様子を建物の角から覗き見た。

 やはり今は時期が時期だけに警備の人数はかなり増えていて、いつもいる護人だけではなく城の衛兵も何人か混ざっている。

 城の衛兵と言うのは格式張っていたり融通がきかなかったり、何かと面倒臭い者が多いので、門番としてそこにいられると街の住人は皆一様に眉をひそめてそこに向かう事になるのだった。

 密かに覗き込んでいたポムも、城の衛兵達を見て一瞬嫌そうな顔になったが、そこに一緒にいる護人の一人を見て愁眉を開いた。

 ポムはぼそりと嬉しそうに呟いた。

「ふむ、よしよし。上手いこと北の警備に入れたようじゃのう」

「何の事?」ミルトがポムを見上げて訊ねる。

 覗くのをやめたポムが皆に向かって話し始めた。

「実はのう、前もってゾルトには今回の計画での手助けを頼んでおいたのじゃよ。街を出るのが難儀してくるような気がしたのでな」

「え?ポムお爺様ですら外界に出るのを止められると言う事ですか?」ミラーが驚いたように言う。

「うむ。この街にはすでに外界に出るのを禁止する命令が出ていると思われるのう。都市の玄関口である大手門すらもう固く閉ざされておるしな。まあ狂月期を前にして街を出ようとする酔狂な者もおらんじゃろうがな。大手門の封鎖は通例より時期が少しばかり早いと思うが、あのラビリオン禍の事を考えれば当然と言えば当然の処置じゃな。都市の偉いさん連中はあれらが重なりもう戦々恐々としておるのじゃろう。北門の警備に衛兵の隊長格を派遣している事からでもそれは伝わってくる。まあとにかく衛兵は規律を固持しようとする傾向がある故に、儂に対してもどう出るかの予想が立てにくいのじゃ」

 キルチェが不安そうに質問した。

「あのう、それじゃあ僕らみたいな子どもが外界に出るなんて問題外もいいとこになりませんか?」

「まあ、普通に考えたらこの時期に子ども連れで外界に出るなんて行為がまかり通る訳はなかろうな。衛兵はこの街の住人を守る義務があるからのう。儂が本気になれば無理に押し通る事は出来なくもないが、出来ればそんな事はしたくない。だから、その為の策はあらかじめ練ってある。まぁ、お主達には少々頑張って貰わねばならんがのう」

 子ども達はポムに少し面白がるような目で見つめられて、何か不安そうな顔で仲間と顔を見合わせるのであった。


 ポムを先頭にした一行が馬を引き連れて街角から現れた。

 衛兵達がそれに気づいてポムの元に向かう前に、護人の隊長格であるゾルトがいつも通りの口調で対応してきた。

「あ、これはポムさん。こんな朝早くにお疲れ様です。出立でありますね?少しお待ちを」

 ゾルトはさも当然と言った口振りで事を済まそうとしたが、一際立派な衛兵の武装を身に纏った男が横から口を出してきた。態度と口振りからしてこれが隊長格だとすぐ分かる。

「待て待て。一体何事だ。今この都市は厳戒態勢に入り全門封鎖の処置をとっている。今この門を開く事は出来ん。……しかも何だ馬まで連れてこの時期に旅でもするつもりか?」

 最後は馬鹿にしたような口調であった。隊長格の後ろに付き従っていた衛兵が愛想の様に笑い出す。

 ポムはただ黙ってその衛兵連中を見返すだけだったが、ゾルトはかちんときたらしく棘のある口調で言い返した。

「いやいや、待ってくだせえ。兵長さん。あんたは臨時で門の警備に来たものですからこのお人の顔を良く知らないんですよ。このお人は大賢樹と称されるポムイット・ヴォルハリス様でありますぜ」

 それを聞いた後ろの衛兵連中は慌てた様子でたじろぎだし、兵長も取り繕うように姿勢を正して、急いで言い訳がましく話し始めた。

「……おほん。それは失礼を致しました。しかし貴方様ともならば今の状況を良く分かっておられるはず。兵士や住人が一丸となって街を守らねばならないと言うのに、貴方様はこの時分に馬を引き連れて外に出ようとなさるなど……、まさかこの街から脱出しようという訳でもありますまい」

 ポムは無表情で目の前の兵長の言葉を聞き流すと、鋭い目をゾルトに向けて話し始めた。

「護人の長の一人でもあるゾルト殿よ。貴殿宛に先日王城から極秘特務が本日行われる旨の通知が送られているはずだが」

 ゾルトは急にそわそわし出した。

「ああ、あれですかい。当日まで他言無用を定めた特殊書簡の。あ~あれはですねえ……特に大事な物なんで、届いた当日からきちんとこの懐に入れて大切にしまい込んでおいたんですが、何故かいつの間にか懐からいなくなっていたと言うとても不思議な……」

 ポムは怒り心頭したような剣幕でゾルトを怒鳴りつけた。

 それは見ている者にすら怖れで震えがくるような迫力であった。いや実際に周囲の大気と大地が震えているようにも感じられる。

「こんの馬鹿者が!この街に刻一刻と近づく脅威に対しての大魔術的見地から見た大儀式魔法の準備をする刻限がどんどん近づいて来ておるというのに!こうやって門の前で何者かに引き留められる可能性があるが故に、先んじて護人の長に対して手紙を送るように前もって城の役人に申請しておったのじゃ!お主らがこうやって儂を引き留めた事で、どれだけこの街を救う可能性が減じているかちゃんと分かっておるのか?」

 ポムは小さくなって平身低頭の姿勢で謝るゾルトから、今度は怯んだようにその二人のやり取りを見つめていた兵長に冷たい目を向けた。

 すると兵長は自分には非はないと言わんばかりの態度で対応をしだした。

「……あ~なるほど。そうでありますか。そう言った訳があるのなら致し方ありませぬな。まあポムイット様も怒りをお鎮め下され。誰にも失敗はあるものですからなあ。あ~もちろん、通行は許可いたします。彼のせいでお時間を取らせてしまい大変申し訳ありませんでした」

 兵長は今度はポムの後ろに黙ってつき従っている二人の人物を見て言った。

「それでは人数といたしましては、ポムイット様と後ろのお二人でございますか。……白い仮面をつけた不思議な者達ですが、私にもまるで見覚えない出で立ちをしてますな。一体どのような者達でございますか?」

 ポムは詳しく説明する気はないと言った口調で答えた。

「魔導庁に属する特殊狩人じゃ。殆どの者がその存在を知らぬ」

 白い仮面を顔につけて足のつま先まで隠れる長い黒外套を身に纏ったその者は、一言も発さず兵長のほうを静かに窺っている。痩身で長身の彼らは少しふらふらと上半身を揺らして、何かとても不気味な雰囲気を醸し出していた。

 何だかうっすらと薄気味の悪さを感じた兵長は、彼らの目の前からそそくさと逃げ出すようにして門を開ける指示を出しに行った。

 兵長が開門を命じると、錆び付いた鎖が巻かれて門の扉がゆっくりと開いていく。重く濁った音が周囲に響き、門を警備している全員が外界のほうへ注意を移した。

 ゾルトはその隙を狙って、ふらつきながら歩く仮面の者に素早く近寄づくと小さく声をかけた。

「頼んだぞお前達。必ず帰って来いよ!絶対に絶対に無事に帰って来るんだぞ……」

 その言葉に仮面の者達は黙ったままこくんと頷き返したのだった。


 ポム達一行は護人と衛兵に見送られて北門を通り抜けた。

 街の北側の外界の風景は南の大手門から見た地形とは異なり、草原の中に大小の林が入り混じるような地相で、背の低い灌木の数も多い。

 そして目の前には荒れ果てた街道が北にくねくねと延びて、山地の麓にある大きな森林地帯へと続いている。

 ポム達はそのまま街道を黙々と歩いていく。

 その内に後ろから門がきしみを上げて閉まる音が聞こえてきた。

 ポムが後ろを振り返り、もう誰からも見られていないのを確認すると仮面の者達に声をかけた。

「よし。もう大丈夫じゃ。その変装を解いても良いぞ」

 仮面の者達はもぞもぞと長い外套を脱ぎ捨てた。そこには汗だくになった肩車状態の子ども達の姿があった。

 まずトーマが力尽きたかのようにキルチェを勢いよく下ろして、その場で大の字に寝転がって荒い息をついていた。キルチェもそのトーマの横に疲れたようにぺたんと腰を下ろした。

 ミルトは慎重に腰を曲げてゆっくりとミラーを地面に下ろした。そしてあまり疲れた様子は見せずに体をほぐすような感じで首と肩を回している。

 ミラーはミルトに向かって申し訳なさそうに話しかけた。

「ごめんなさいね。重かったでしょう?」

 ミルトは気楽な感じで答えた。

「ううん。全然平気だよ。だってキルチェよりずいぶん軽いと思うからね」

 ミルトはへばっているトーマを横目でちらりと見て言った。ミルトはそれにと心の中で付け加えた。

 こっちは色々と柔らかかったし、あと好きな女の子を肩車して頑張れない男はいないだろう。

 ミルトは不思議そうに見返してくるミラーを見つめながら、さっきまでの感触を思い返していた。

 ポム達一行はその場で少しばかり休息を取る事にした。

 そして改めて全員の装備を整えて、きちんと隊列を組んでから出発した。先頭にミルトが立ち、次にトーマ、そして馬の轡を持ったポムが続き、その右後方にキルチェ、その反対側にミラーといった隊列だ。それぞれがポムから貰った装備をすでにきちんと装着している。


 ミラーがまずは索敵をとキルチェから指示された。

 ミラーはすぐに毛摸乃耳の感度を上げて周囲の音を探り始める。

 だがミラーは周囲の音を聞き始めてふと眉を寄せた。結構見渡しが良くて、今は特に何も見えないのに驚く程に生き物の気配が多い。

 すぐそこの茂みには小さく大人しそうな獣が二匹もいるし、そこいらの草葉の影には大小の虫達がいて、かさかさと音を鳴らしている。そして進行方向から少しそれた大きめな林からは、その何倍もの多様な音が聞こえる。下生えの草をかさかさとかき分けて走るような音や鳥達の鳴き声や羽ばたく音などだ。

 困ったミラーはキルチェに相談がてらに報告をした。

「ねえキルチェ。どうすれば良いのかしら。周囲の生き物の気配が多すぎるのだけど……」

 キルチェはミラーの話を詳しく聞いて少し考えてから言った。

「ははぁ、なるほど。ミラーにはそこまで聞こえてしまうのですね。……ふーん、それではこうしましょう。ミラーが報告をするのは、基本的にこちらが遭遇しそうな獣がいた場合と考えておいて下さい。あとは明らかにこちらの方向に来ていると思われる物に注意を払って下さい。あとは……そうですね、大きめな獣っぽい音とかあまり聞き慣れない異音とかは予め気に止めておいて下さい」

 ミラーはキルチェの話を聞いてほっと胸を撫で下ろした。

「うん。分かったわ。それなら今聞こえている音については特に問題なさそうね。でも助かったわ。これでこれから注意するべき音の指針が出来たもの」

 ミラーはそう言うと真剣な顔で索敵を続けた。

 キルチェはミラーにそうアドバイスしながらもその声は若干震えていたのだった。


 ポム達一行はしばらく順調に歩を進める事が出来ていた。

 この北に続く街道は平たい石をただ敷き詰めただけなので、石の隙間から草が生え石の表面が苔むしているようなところもあるのだが、ただ歩く分にはそんなに苦労はさせられなかった。

 この道は林を避けるように曲がりくねっていて、たまに林に隣接する事もありその時はみな緊張しながらその場を通り過ぎていた。

 何度かミラーの耳に林の奥の大型獣の存在が聞こえたり、ミルトの嫌な予感があったりして進行速度を速めたり立ち止まったりしていたが、まだ本格的な戦闘は起こっていなかった。 

 緩い上り坂が続きその内に回りの風景が変わってきた。

 茂みや林が少なくなり、大きな岩が目立つようになってきたのだ。こうなると視界が遠くまで見渡せるので、今度は音よりも視覚で索敵をする事なり逆に神経を使ってしまう。

 ポム達一行はより慎重に周囲を見渡しながら街道を進んでいった。


 その時ミラーの耳が遠くでたてられた不思議な音を聞き取った。

 ミラーはすぐにその方向に注意を向けてその異音の正体を探る。

 そしてミラーはあれがどんな音だったのかを想像した。

 あれは地面を足で引っかいたような音。そう、まるで飛び出す時に身構えるような……。

 そしてミラーはついに呼吸音のような音を捉えた。瞬時にそれが荒い鼻息だと推測する。

 ミラーはキルチェに向かって叫んだ。

「キルチェっ!進行方向の大岩を零点固定っ!二の方向三百歩の位置に獣の感ありっ!」

 キルチェはそれを聞き、すぐさま目の前にいるトーマと少し前を先行しているミルトに指示を出していく。何度も訓練してきた事だが実戦はさすがに皆緊張している。

「トーマッ、正面を零点で二の三百です。ミルト!一度本隊に戻ってきて下さい。ミラーが獣の存在を感知しました」

 トーマとミルトがその指示を受けてそれぞれ動き出した。

 トーマがよっしゃと手に唾を吐いて石の弓を握りなおす。ミルトはまだ抜剣せずに急いで戻ってきた。そして全員が集結し視線をその場へと向けた。

 すると、その岩陰に隠れてポム達の様子を窺っていたその物が、相手に気づかれたと感じたのかそこから勢いよく飛び出してきた。

 それは茶色の野牛のような動物だったが普通の野獣ではなかった。頭に先の尖った二本の大きい角、口には上に向いている二本の鋭い牙があり真っ赤な目を爛々と光らせている。そして肩と背には焦げ茶色の分厚い毛皮を纏っていてとても固そうだ。

 これは気性の荒いしかも肉食の〈撃突の暴れ牙牛〉と言う名の野獣であった。

 これはこの地方に多く棲息している野獣で、旅人が襲われる事も多いのだが、この野獣は肉が美味しくて市場にも出回る為ミルト達も名前は良く知る野獣であった。

 キルチェはトーマに向かって叫んだ。

「トーマ!牙牛だ!こっちから先制攻撃。奴の足元を狙ってあの突進を止めて下さい!」

 そしてミルトのほうにも指示を出した。

「ミルト!君のほうは炎撃準備をしてこの場で待機!」

 その言葉に両者ともすぐに実行に移った。

 まずトーマが石の弓をぐっと引き絞り魔封具に呼び掛ける。

「それじゃあ行くぜ!石筍呼弓!敵を射る小さな矢を五本呼び賜えっ!」

 トーマは弓の正面に五本の石の矢を呼び出した。

 長さはいつもと変わらないが細さは通常の矢の半分程だ。トーマはそれらを全て弦の上につがえると、弓の構えを横向きにして一斉に放った。

 矢は凄い勢いで横一列に並んで飛び、牙牛の前方の地面に突き刺さった。

 その矢は地面を大きく炸裂させて広範囲にもうもうとした土埃を巻き起こす。

 牙牛は視界を遮られたせいで突進の勢いを落として立ち止まり苛立ちをこめた唸り声をあげた。

 その間にミルトは足元に風を溜め火宿りの刃に火の力を注ぎ終えて自分の出番を待っていた。ミルトは口元ぐっとを引き結びキルチェの指示を今か今かと待ちわびている。

 キルチェは土埃の切れ目から牙牛の姿がうっすら見えてきて、その視線がミルトのほうにいってないのを確認するとミルトに指示を出した。

「ミルトっ!今です!」

 ミルトはその言葉で勢いよく飛び出した。

 地面を滑るように駆けて行き、まるで一陣の風のように一瞬で相手に近づくと、その勢いのまま牙牛の胴体を横薙ぎに切りつけた。

 その刃は牙牛の固い肩の毛皮さえも何の抵抗もなく切り裂いていき、その刃で出来た大きくて深い傷からは真っ赤な鮮血の代わりに深紅の炎が吹き出した。その傷から立ちのぼる炎は一瞬で牙牛の全身に回り、その炎に包まれた牙牛は断末魔の叫びを上げて、その場に横倒しに倒れてそのまま絶命した。 

 ミルトは切りつけたあとに後ろに飛び退いて剣を構えて見守っていたが、自らが成したこの光景にかなり圧倒されていた。あの怖ろしげな野獣をたった一撃で倒したのだ。しかも特に何の苦労もなく。

 暴れ牙牛を倒して惚けていたのはミルトだけではなかった。子ども達全員がこの初戦闘の余韻にひたっていた。

 皆であれだけ頑張った訓練の成果が見事に出ていたからだ。

 ミラーの索敵から始まり、キルチェの作戦の考案と素早い指示出し、遠方からのトーマの弓射術、そして最後のミルトの炎の斬撃、これら全てが見事にはまり、うまくいっていた。


 ミラーはぶるっと身を震わせた。

 少年達の興奮もさることながら、ミラーでさえも武者震いがしてきたのだった。そして、あれだけ怖ろしかった外界の旅に少し余裕が出てきたような気さえしてきた。

 帰ってきたミルトに少年達がお互い賞賛の言葉を掛け合っている。

 ミラーもその場に混ざりに向かったが、ポムが少し眉を寄せてその少年達が称え合う光景を眺めているのが何か少し気にかかった。

 少年達の興奮はなかなか収まらず、ポムの出発の言葉が出るまでその騒ぎは続いていた。

 また全員で歩き出してからも、隊の前方ではミルトとトーマが楽しげに会話しながらといったような、旅の初めの頃の真摯な行軍とはまるで違う、何か気楽さが漂う雰囲気の行軍になってしまっていたのだった。

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