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第四章 七話

 ミラーは昨日の夕食と同じ品目の朝食を食べて食器を片付けると、ポムに先ほどまでの儀式について詳しく説明を始めた。

 ポムは熱心に耳を傾けていていくつか質問もしたが、年頃の少女の繊細で恥ずかしいであろう部分は深く追求はしないでおいてくれていた。

「ふむ、ではもうあまり心配するような時期は過ぎたと言う事じゃな。奇跡もきちんと発動しておるようじゃし。とは言え、まだまだミラーの手を借りる事には変わりはないのだがな」

 ポムはミラーを見つめて済まなそうに言った。

 ミラーは静かに首を横に振って答える。

「いいえ、ミルトを治す事は私の役目だと思っています。それにこれは私が希望してしている事ですもの。このミルトの治療を他の誰にも任せたくはありませんし、私が自分自身で最後までやりたいのです」

「ふむ。分かった。ありがたいことじゃが、一つ提案がある。それはとにかく無理はせんようにと言う事じゃ。先程ミラーは徹夜でミルトを癒やしていたと言っていたが、これからはミルトの身体を癒やす時間と身体を休める時間をきちんと区別する事を薦める。癒やしの術とはいえ身体に全く負荷をかけない訳ではない。ミルトにとってもお主にとってもな。何もしない時間も肉体と精神にとって必要なものなのじゃ。……だからそうじゃな、こんな感じにしたら良かろう。朝起きて昼までは特に何もしない時間として、昼から夜までは何度か休憩を挟みながら治癒の術を施す時間とする。そして夜から朝までは愛の絆のみで癒やして、お主はきちんと睡眠を取って休む時間とする。こうすれば癒やしの期日が多少長くなっても無理が少なかろう」

 ミラーは神妙に深く頷いた。

「はい、申し訳ありません。そこまで考えが及んでいませんでした。……私は今のポムお爺様のご忠告がなければ、自分が疲れ切って倒れるまで治癒の術を行使していたと思います。そしてそれはミルトにとっても悪い影響を及ぼしてしまっていたかも知れません」

 ポムは落ち込むミラーを慰めるように優しく見つめて言った。

「うむ、では今日のところは昼まで休みなさい。全く寝てないのだから少し仮眠をしたほうが良いのかもしれんの。では、ミラーが仮眠が出来る場所は……」

 ポムはそこの長椅子を見て、ミラーが寝やすいようにするにはどうすれば良いかを考え始めたが、ミラーはあっさりと言い出した。

「はい、それでは私はミルトの寝ている隣で少し休ませてもらいます。だってこれからの私の居場所はずっとミルトの隣になるのですから」

 ミラーはにこやかにそう言って、ポムに一礼してからミルトのいる寝室に向かったのだった。

 だがミルトの寝室に入ったミラーは、ポムにはあんな風に強がったものの、入り口の扉を背にして大きな溜め息をついていた。

 ミルトの寝ている布団に潜り込むと言う行為は、やはりかなりの度胸がいるのである。

 ミラーはとにかく出来る事からと何度もつぶやいて、ミルトの枕元にまでやって来たが、ミルトの寝顔を見おろして、その隣に寝ている自分を思い描いては赤く頬を火照らせていた。

 ミラーはさんざん迷った末に、掛け布団をめくらずにそのままミルトの隣に横になってみる事にした。これならミルトの裸を見る心配は全くないので抵抗が少なかったのだ。

 ミラーはその体勢で少し横になったあとに何か少し寂しく感じてきて、ミルトの左腕を伸ばしてそれに頭を乗せて腕枕をしてもらった状態で寝る事にした。

 ミルトの横顔が間近にあって少々気恥ずかしかったが、とにかく目をつむりミルトの匂いに包まれる感じでまどろんでいると、次第に眠気を催してきた。やはり体力的にも精神力的にも疲労は蓄積していたのだろう。

 ミラーはこれからの事を思いながら安らかな眠りに落ちていった。


 ミルトが半死半生の状態でこの家に担ぎ込まれ、ミラーが愛の絆の奇跡で癒やし始めてから十日目の朝が来た。

 ミラーはいつもの通りのミルトの隣という定位置で目を覚ますと、その場で身を起こして片手を挙げてぐっと伸びをした。裸の上半身が露わになっていたがミラーはもうあまり気にしなくなっていた。

 ミラーは身体の向きを変えてミルトを上から覗き込み今朝は何か変化がないかとじっと見つめた。

 ミラーはミルトの髪を手櫛で梳かして額と頬を優しく撫でながら語りかけた。

「ミルト。もう朝よ。そろそろ目を覚まさないかしら……?」

 ミラーはしばらく待っていたが、昨日と同じ様に反応がないと分かると、小さく溜め息をついて寝具から起き出した。そして壁に掛けておいた治療師風の丈の長い服を着ると、髪を後ろでざっくりとまとめて大きな髪留めで留めて、汲んである水で洗顔と歯磨きの簡単な身繕いをした。

 ミラーはミルトの寝ている寝室で自分の支度を手早く済ますと居間に行き、ポムに朝の挨拶とミルトの今朝の様子を報告してから自分達の朝食の準備をした。

 ポムと一緒に朝食を食べた後はいつもは休憩の時間なので、特にやることがなくなるのだが、今日のミラーは特別にやりたい事があった。

 ちなみに毎日の掃除や洗濯、炊事などの家事全般はマレスやミレーヌの母親達が昼頃に来て全てやってくれて、ミラー達の負担をかなり少なくしてくれていたのだった。

 ミラーは朝食を片付けたあとに鍋で湯を沸かしてそれをそのまま寝室へと運び込み、そして清潔な布と洗面器もミルトの寝室に用意した。

 ミラーは今日はミルトの身体を拭きながら傷の治り具合を目視で確認しようと思ったのだった。

 ミルトの身体の表面はもうあらかた治ってきたし、それに一番酷い状態で真っ黒にひび割れてうろこ状だった右腕の一部分が、昨日の夜にかさぶたが剥がれるようにぽろっと小さくめくれて、その下から新しい皮膚が見えてきた状態になったからだった。

 ミラーは布を固く絞ると取りあえずその右腕は後回しにして、ミルトの顔のほうから順に丁寧に拭き始めた。

 傷が新たに完治した所を拭くと、治って古くなった皮膚が汚れのように取れて、真新しいつるつるの肌になっていく。

 ミラーはなんか嬉しくなって夢中で身体中を拭いていった。

 今のミラーの心情を例えて言うならば、物置にしまっていた埃まみれの宝珠に、息を吹きかけて磨いているような感じだろうか。

 それにもうこの時にはミルトの裸の身体には慣れていたので、以前なら恥ずかしくて触れることも出来なかった下着の中の部分もきちんと拭けるようにまでなっていた。

 これまでの治療の過程で、ミラーの手がミルトの身体で触れていない所は、頭のてっぺんから足のつま先までどこにもないと言っても過言ではなかった。

 ミラーはもう確実に、ミルト以上にミルトの身体の事を知っている人物になっていた。

 ミラーは身体中を拭き終えて、お湯と布を新しい物に取り替えると、最後に残しておいた右腕に取りかかった。

 真っ黒にごつごつとした炭のような肌の所々が小さな四角い破片のように剥がれ落ちて、その下に桃色の肌が見えて、肌が段々と生まれ変わってきているのが分かる。黒い炭のような皮膚をそっと爪で引っ掛けるとそこだけ簡単にぺりっと剥けた。

 ミラーは楽しくなってどんどんと剥いていたが、固くて剥けない箇所と剥いて血が滲んできた箇所が出てきたのですぐに中止した。血が滲んだ瞬間に慌ててその箇所を術で治したが、ミラーに湧いた後悔の念はなかなか頭から離れなかった。

 ああ、やっぱり無理は良くないわね……。

 ミラーは深く落ち込んで、もう急ぐのはやめたのだった。 


 それからまた十日が過ぎて、ミラーが治療を始めてから合わせて二十日目の朝を迎えた。

 ミルトの外傷はほぼ全てが癒えて表面上はもう健康そうに見えるのに、まだ一度もミルトの意識は戻らなかった。ではどこか身体の内部に問題があるのかと言うと、ポムの術による精密検査でも何も異常を見つける事は出来なかった。

 この日は朝早くからミルトの様子を見に来ていたトーマとキルチェが食卓でポム達と話し合っていた。

「ではもうミルトは完治しているのですか?」とキルチェ。

「うむ。そう言って差し支えなかろうな。表面に傷はもうどこにもないし内部的な損傷も見当たらない。血色も良いし瞳孔の反射も正常にあるので頭の内部も特に問題はないと思われる。それに当初問題だった精霊達もその各々の宿り地で完全に落ち着いているしの。何も問題はないはずなのじゃが……何故だか一向に目を覚まさんなあ」ポムは腕を組みつつ首をひねった。

「そんじゃあ、いまは原因不明の眠り病になってるって事か」とトーマ。

 キルチェは原因不明と聞いて一つ思いついたようだ。

「もしそれが術とか呪いとかだったら逆に良かったかもしれませんね。ポム爺さんなら解き方も知っているでしょうに」

 ポムは唸った。

「う~む、呪いなあ。いわゆる肉体が原因ではなく精神のほうに何らかの問題が生じているという可能性か。確かに精霊融合は精神に大きな負担がかかり、何らかの影響が出る事も多いと言われておる。……ふむ、それならば精神に励起を起こさせるような衝撃を霊体を通して特定の存在から与えられるような仕組みを組み上げて……」

 ポムは眉を寄せてぶつぶつと呟いている。

 ポムは子ども達の言葉を邪険にせずに、いつもそこから理論を飛躍させて推論を始めるのだった。

 トーマは黙考し出したポムを見て、邪魔をしないように小さい声でキルチェに言った。

「呪いを解く方法なら簡単なのがあるじゃんか。なあ?」口元が楽しげににやりと笑っている。

 キルチェも眼鏡をきらりと光らせて答えてきた。

「そうですね。古来より眠りの呪いを解くと謂われる行為が一つあります。それも有名なのが」

 二人は顔を見合わせてからさっとミラーのほうを見て言った。

「口づけだ!」

「接吻ですね」

 ミラーはそんな二人に何の反応も見せずにすまし顔で静かにお茶を飲んでいた。

 ミラーも少年達から呪いの話が出た時点で、その言葉に連想が行くのは容易に想像出来ていたのだった。しかもその考えはすでにミラーが心の中に密かにずっと持っていたものであり、なかなか目を覚まさないミルトに試してみたいと思っているものの一つであった。

 しかしそれを試すのはかなり勇気が入り、羞恥心と罪悪感の問題もあって実行するのはとても難しかったのである。

 ミルトが寝ている間に勝手に唇を重ねても良いのだろうか?……ミルトの額と頬くらいになら挨拶がてらにもういくらでも出来るのだけど。

 ミラーはそう思い返して頬を染めている。

 まるで動じないミラーを見て、少年達はつまらなそうに口を尖らせて違う話を始めていたが、ポムの思慮深い瞳が少年達と少女を交互に素早く見据えた事には誰も気がつかなかった。


 昼時になってポムはミラーをそろそろミルトの治療の開始の時間だと言って自らミルトの寝室のほうへと連れて行った。

 そしてポムは寝室の扉のそばまで来て他に誰もいない事を確認すると、ミラーに遠慮がちに話しかけた。

「……ミラーよ。どうだろうか?あのトーマ達が言っていた事を一度試してみては」

 ミラーは一瞬固まってしまった。ポムの言わんとしている事をすぐに察したからだった。と言うのも実はミラーもずっとその事ばかりを考えていたからなのだが。

 ミラーはぎこちない笑顔を見せて一応分からない風の表情を作ることに成功した。

「言っていた事……ですか?」

 ポムは頷いたがかなり言いづらそうだった。ミラーから目を逸らして顎髭をもてあそんでいる。

「……うむ。その……、何じゃ、いわゆる口づけの事なんじゃが。このような事をお主に頼むのも何か妙な感じもするし、申し訳ないような、もしかしたら失礼な事にあたるかもしれんがのう。……実は口づけと言うものは、術の儀式としても特に多くの役割を持つものなのじゃ。生来、生き物と言うものは口という器官から生命の元となるものを得ている。それは食事にしても呼吸にしてもな。それにともない口は肉体という世界の内と外を遮断する門の役割を持っておる。そしてそのような場所には高次の実体である霊体に刺激や信号を送る霊的な回路があると古来より推察されておるのじゃ」

 ポムは学問的な説明になってきたので少し落ち着いて話す事が出来た。

「それでミルトを診た限りで、目醒めないのは肉体ではなく精神に問題があると推測すると、精神に何らかの刺激を加えて揺さぶりをかけるのが有効な手段だと考えられる。しかし精神にそのような事をするのはかなり困難で、普通の方法ではなかなか出来る事ではない。しかしじゃ、口づけならそれが容易に出来ると考えられる。すなわち自らの肉体の門を解き放ち、自らの精神を励起させて、相手の肉体の門の前で相手の精神に呼び掛ける。すなわちお互いの精神が一番近づく時が口づけの瞬間なのじゃ。そしてその呼びかけが自分の思い人ならばそれに応じる可能性は飛躍的に上昇する……と言う訳なのじゃが。……どうだろうか?」

 ミラーはポムの長舌に少し呆気に取られたが、ポムの心を軽くするためにもすぐに真面目な顔で答えた。

「はい、良く分かりました。その事は前向きに検討したいと思います」

 それを聞いたポムは、明らかにほっとした様子を見せている。

 ミラーはポムの心情を汲んで少しいたずらっぽく加えた。

「ですが、私もポムお爺様の仰ったその方法の事を、今まで一度も考えなかった訳ではないのですよ。では失礼します」

 ミラーはポムに向かって一礼をして寝室の中へ入っていった。

 ポムは嫌な考えを押しつけた訳ではないと分かってだいぶ気が軽くなり、そして次の方策を考えながら居間に向かって歩いて行った。


 ミラーは久し振りに寝室の扉にもたれかかって逡巡していた。

 額に手を当てて天を仰ぎ、しばらくその姿勢で思い悩んでいた。ポムの手前、ああは言ったが葛藤が物凄いのだ。

 ……どうしよう、口づけかあ……。何度か想像した事はあるけど実際にやるとなると……。

 ミラーはそのままぺたんとその場に座り込んでしまった。

 でも理論的に有効だってポムお爺様が言っていた事だし……。ポムお爺様の後押しがあると言う事はしても良いのよね……?そう、言うならば治療行為としての免罪符をもらったようなものだもの。

 ミラーは無意識に指で自分の唇を触っていた。

 ミラーは意を決して立ち上がると、ミルトの寝ている枕元に行き、ミルトの寝顔をじっと覗き込んだ。

 ミルトの頬にそっと手をやり、ミルトの唇を見つめていると、次第に自分の心臓が早鐘のように脈を打ち始めたのが分かる。ミルトの頬に添えた自分の手がうっすら震えているのが見えた。

 しかし、えいままよとそのまま勢いでいこうとしたが、唇が触れる寸前で一つの懸念が頭によぎった。  

 もし、この口づけで目を覚まさなかったらどうなるのだろう。あまり他に手はないような感じだけれど……。もしかしてこれが最後の手段なのだろうか?

 だがミラーはすぐにこの考えを打ち消した。

 ……ううん。奥の手はまだある。そう私には〈愛の絆〉の奇跡がある!あの奇跡の空間ならば効果はもっともっとあがるはず。……でもその時は私も裸な訳で……。そんな状態で口づけをするなんてまるで本当の愛の営みの最中みたいじゃない……!

 ミラーはぎゅっと目をつむり、その考えを心の奥底に押しやった。

 そしてミルトにどうか目を覚ましてと願い祈りながらそっと唇を合わせた。

 それは本当に一瞬の、小鳥がついばむほどの時間しかかからない様な口づけであった。

 ミラーは頬を真っ赤に染めて、急いで身を引きミルトの様子を見守ったが、すぐにミルトが目覚めると言うような劇的な変化は起こらなかった。

 ミラーは少なからずがっかりしたが、ミルトの様子を良く見ていると、細かな変化が出てきている事に気が付いた。

 これは毎日ミルトの事を見ているミラーだからすぐに気づけたのだった。

 ミルトのまぶたが一瞬細かく震えたり呼吸の間隔に若干の長短が出てきている。これはもう覚醒の予兆の一種と言っても良いだろう。

 ミラーはこのまま目醒めないかと、ミルトに呼び掛けてみたり揺さぶってみたり頬を軽く叩いてみたりしたが、ミルトが目を開ける事はなかった。それならばと、また先程のような口づけを試みてみたが、それ以上の進展が起きる事もなかった。

 しかしミラーはこの状況に興奮していた。

 今までまるで起きなかった反応があったからだ。これならば本当に目を覚ましてくれるかもしれない。そう、あの愛の絆の奇跡の空間の中なら。

 ミラーは服を脱いでその場で裸になると、服と下着を畳んで枕元の机の上にきちんと置いてからミルトの隣へと滑り込んだ。いつもの定位置なので、もうこの一連の流れは手慣れたものだ。

 しかし、この状態での口づけなんて本当に恥ずかしいし、念願が叶って目を覚ましてくれたとしても、裸で抱き付いているところを見られたら、それこそ自分がどうにかなってしまいそうだ。でも、それでもミルトには目を覚まして欲しかった。

 ミラーはミルトの横でミルトの事だけを思いミルトの事だけで心を満たした。

 するとまた二人の世界は次第に変わっていった。

 ミラーは二人一緒にふわりと浮かび上がるような感覚を覚えて、次にその自分達の周りを温かい良い香りのする濃密な何かが満たしていき、自分達二人を優しく包んでいくように感じた。

 ちゃんと愛の絆が発動したようだ。

 この空間に入ると全ての感覚が愛で満たされ身動き一つするのでも幸せを感じるようになる。

 ミラーはミルトにのし掛かって体重を預けてミルトの寝顔を愛おしく見つめた。

  そして顔をゆっくりと近づけていきそっと唇を重ねた。

  今回の口づけは今までのとは異なりしっかりと相手の唇の感触が分かるような熱い口づけだった。

 祈りの言葉も今まで以上の強さでミラーの肉体の門からミルトの肉体の門の内側へと確実に届いているようにも感じる。

 ミラーは心から祈っていた。

 ミルト。

 ミルト。

 ミルト。

 どうか起きて、目を覚まして。

 お願い、私の呼び掛けに応えて。

 みんながあなたの帰りをまっているの。私もあなたのそばでずっと帰って来るのを待っているわ。

 私の愛しい人……ミルト。

 ……私の意識を感じて戻って来て……。

 ……どうかお願い、その目を開けて……!

 ミラーの涙がぽとりと一滴ミルトの頬に伝わり落ちる。

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