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IT2015年04月10日

−−−−−−−−IT2015−04−10−06:00−−−−−−−−



ぱちり。

私は何時も通りの時間に目を覚ます。

店にある大きな古時計が06:00を告げる。


ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん


その音を聞きながら、私は庭に出る。

朝の陽ざしも04月となればすっかり暖かい。


うーんっ


私は一度伸びをする。

そして、手こぎ式のポンプを漕ぎだした。


しゅこしゅこしゅこ・・・じゃーーー


井戸から出る水は、相変わらず冷たい。

そう言えば、街の方・・・イルマのお店なんかは精霊式の井戸を使っているです。

冬場なんかは羨ましくも思うけど・・・でも、これはこれで”あじ”があるでしょう?

ととと、顔を洗い、桶に組んだ水を台所に運ぶ。


「朝ごはんは、何にしようかしら?」


と、言っても大体パンなのよね。


「あっ」


私は室を開け、中からお鍋を取り出す。


「昨日、シチューをおすそ分けして頂いたんだっけ。」


シチューの入った鍋を火に掛ける。

その間にパンを手ごろな大きさに切って・・・っと。

今日の朝ごはんは豪勢だわ♪



−−−−−−−−−−



朝ごはんを食べ終え、片づけを済ますと仕事着に着替える。

私の仕事は『道具屋』です。

と言っても、普通の道具屋じゃありません。

『魔法』を込めた道具や、魔法に関する物、そしてお客様のご要望に沿った『魔法の道具』や『武器』、『防具』を作る『魔法の道具屋』なんです。


「ポーション・・・おっけ、ハイポーションも・・・おっけ、マナポーションにエクスポーション・・・うん、在庫確認おっけ。」


ぼーん、ぼーん、ぼーん・・・・


店にある大きな古時計が08:00を告げる。


それではっ本日も営業開始♪

私の名前は『フレイア』でも、みんなは親しみを込めて『フレイ』と呼んでくれます。

ここ、アースの田舎町の片隅で、母から受け継いだ魔法の道具屋を営んでいます。


いらっしゃいませ。『フレイ魔法道具店』へようこそ。




−−−−−−−−IT2015−04−10−11:00−−−−−−−−




「ねえ、フレイちん。『桜の葉』なんて、置いてない?」


「え?桜の葉・・・ですか?」


双子の冒険者、赤い方こと『知真ちるま』さんと青い方こと『葉和はわわ』さんが店にやってきました。

そして、開口一番に出た言葉が桜の葉です。


「もう、姉さん。やっぱり道具屋さんでは売ってませんって・・・」


「はい、売って”は”いませんね。」


「「”は”?」」


「はい、売り物じゃありませんけど、うちの庭に桜の木があるので、葉を取っていっても構いませんよ?」

「でもまだ、花が咲いていますし葉の時期はもう少し後になると思いますけど??」


「ほんとっ!?あ、フレイちん、その桜見せて貰っても良いかな?」


「はい、じゃあついて来てください。」


私は、店の入り口から出ると、二人をつれ庭の方にまわる。

庭の隅に一本だけある桜。昔、母が誰かに貰って育てたって聞いています。


「う〜ん、これは・・・多分、大島桜じゃないと思うけど、大丈夫かな?」


「でも、姉さん。八重桜とかでも、大丈夫って聞いた事がありますよ?」


大島桜?八重桜??・・・桜の種類があるんでしょうか?

その辺りには疎い私には分かりませんけど・・・でも、何に使うんでしょう?


「あの、知真さん、葉和さん。桜の葉を何に使うんですか?」


「ん?」っと頭をひねり、「ああっ!」っと何かに気づいたらしく話始める知真さん。


「そっか、ごめんごめん。私達の故郷では、桜の葉とか花を料理に使うんだよ。」


「へ?食べちゃうんですか??」

「実なら・・・あ、でもこの木になる実って美味しくないですよ?」


「うーん、それはですね。食用の木と、そうじゃない木があるんですよ。」

「食用の木になる実は、甘くて美味しいですよ。」


「あ、そういう事だったんですね。」


前に食べて見た事があったんですけど・・・酸っぱくて、美味しくなかったんですよね。

ほんと、双子さん達は食べ物に詳しいです。


「うん、じゃあ、後1週間位したら・・・かな?桜の葉を貰いに来るね♪」


「はいっその時には是非に、店内でお買い物も宜しくお願いしますね。」


「あ・・・忘れてたっ」

「・・・フレイちん、ハイポ10個お願いっ」


「私は、マナポーションを5個お願いします。」


「はい。ありがとうございます。」


私はぺこりとお辞儀をし、店内に戻ってハイポーション10個とマナポーション5個を用意する。


「そういえばフレイさん。この辺じゃ珍しいですよね。桜。」


「そうですね。母が昔に何方からか貰って育てたらしいんです。」


「へーどんなお母さんだったの?」


「どんなって・・・普通の母でしたよ。私の前にここで魔法道具店をやっていたんですよ。」


私の記憶では。

私の母は、私の前にこの場所で魔法道具店をやっていた。私の魔法道具の製法や、武器防具の属性付与とか全部、母から受け継いだもの。

庭の桜の木は、母が大事に育てたもの。そして、今は魔力付加の壺の中だけど・・・母から受け継いだ杖。

だけど、だけど・・・私には母の顔が思い出せない。


「どうしたんですか?フレイさん。」


「え!?ああ、ごめんなさい。少しぼーっとしてしまいました。」

「お客様が居るのに申し訳ありません。」


「あはは、じょぶじょぶ。よくある事さ〜」

「じゃあ、帰るね〜♪」


「また来ますね。」


「はい、ありがとうございました。」


結局、今日のお客様は双子さん達だけでした。




−−−−−−−−IT2015−04−10−23:30−−−−−−−−




私は日課である日記を付ける。


「今日は双子さん達が来ました。」

「桜って食べられる事が判明しました。」


双子さん達が帰っても・・・暫くは・・・いや、今ももやもやとしている。

母の記憶はあるのに、母から譲り受けたものはあるのに・・・母の顔がどうしても思い出せない。

そう、今の気持ちのと同じで、もやが掛かっているかのように。


「よしっ」


私は声を出して、暗くなりかけた気持ちを吹き飛ばす。

こんな気持ちで店に立っていたら、お客様にも失礼だもの。

明日は何時ものフレイで居られるように。


ぱたん。


私は日記を閉じるとベットに潜り込む。



おやすみなさい。


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