未開の地 狩人は今日も行く
数年前、大陸に突如として未開の地が現れた。
新種の生物の到来は人々の探究心を沸かせ、冒険者というものができた。
一攫千金の夢見て未開の地に旅立つ冒険者達。
無論、帰ってこない奴も少なくない。それでも魅力的な世界に冒険者の数は減ることはなかった。
今日も一人の男が未開の地に挑む。
「ニナ、これを受けたい」
無精ヒゲを触りながら一枚の紙をヒラヒラとさせ受付嬢に見せる。
「エド、今日も懲りずに行くのね。そのうちいなくなっちゃうんじゃないの?」
「はっ!上等だ。知ってるかニナ?怯える奴ほど死にやすいんだぜ?」
「そうなの。じゃああんたは怖くないってわけ?冒険者様はすごいわね」
その言葉に俺は後ろに親指を指して言った
「俺にはこれがあるからな」
その先は俺の愛銃『サリー』が背負われていた。未開の地に合わせて魔改造した超大型のショットガンだ。
「幸運がある限り、俺は死なねぇ」
「はいはいそうですかっと。じゃあこれを受けるってことでいいのね?」
ニナが依頼の紙を奪う。その内容を確認した後、顔をしかめて俺を見た。
「ずいぶん高額ね……あんたらしいっちゃあんたらしいけど……これ信憑性あるの?」
「あ?どういうこった」
「いやね、しょぼい獲物を狩るわりに高額なのよね……指定された場所も初めて見るし……」
「こういうのにはリスクが伴うのは知ってる。さっさと受諾してくれ」
ニナは首を傾げながら受付の奥に行った。金になるんだったらなんでもいい。
少し時間を置いた後、一つの番号の書かれた札を持ってきた。
「はい、じゃあこれ依頼の番号ね。狩りの依頼だったら指定された物と共にこれをもってきてね」
「んなことはわかっている」
俺は乱暴に札を奪い、少し歩いた後ニナに振り返った。
「ニナ、言い忘れてたが俺は冒険者じゃねぇ。狩人だぜ」
そう言い残すと俺は未開の地へと旅立った。
冒険者とは未開の地に入り込み、そこで探検する者たちを指す。
地図を書くために探索したり植物の採取などが主な仕事だ。必ず戦闘に特化してるわけではない。
そこで戦闘に特化した狩人という部門が出てくることになった。冒険者の護衛と獲物を狩るのが主な仕事だ。
エドはその中でも獲物を狩るのに特化していった。ただでさえ未開の地、それも相手が新種だと危険度は限りなく高まるがそれだけ報酬金が高いのだ。
依頼所から未開の地の入り口までは馬で移動だ。依頼所は未開の地からは近めに設置してくれるおかげで時間は掛からない。
未開の地の入り口付近で俺は馬を近くの馬小屋に預け徒歩で向かった。
今回指定された場所は森。生命溢れる光景はいつ見ても息を飲む。
指定された場所は遠くない。道中は冒険者によって開拓されてるから少しだけ楽だ。
だがどっから狙われもおかしくない。森の中を愛銃サリーを構えつつゆっくりと目的へ向かった。
段々と開拓外になっていきその先を慎重に進んだ。
指定された場所は森の中の開けた場所だった。比較的大人しめの草食動物が何匹かいた。
「こりゃあついてる。あいつらぶっ殺して皮と肉剥いで帰るだけで報酬金で3日は遊べるぜ。」
サリーを構える。
目標は依頼にあった目の前にいる草食動物だ。
物好きもいたもんだ。あんなのに高い金支払うんだからな。
――森に銃声が響き渡った。
何発かぶっ放してやった。とりあえず二匹。二匹分なら十分だろ。
足りない言われたらばまた狩ればいいか。
ふと殺した獲物を見る。
よく見ると色違いだ。報酬金を考えても依頼人は研究所の奴だな。
そう思いつつ俺は獲物の皮と肉を剥ぎ取った。
「一服して帰るか」
時間には余裕がある。
俺は胸ポケットからタバコを取り出し、火をつける。
依頼をクリアして一服するのは最高だ。
そう思った時であった。
突如、ベキベキと木がなぎ倒される音が鳴る。
俺は思わずタバコを捨て、音がする方向にサリーを身構える。
銃声と血の臭いに釣られたか?クソッタレ、殺るならこいつの分も貰わなきゃ割りにあわねぇ。
音は徐々に大きくなる。木がなぎ倒される音と共にそいつは現れた。
「で……でけぇ……。」
初めて見るそいつは家一個分のでかさの『犬』だった。
いや、ただの『犬』のほうがまだよかったか?
顔が三つもついていやがる。ここの番犬というか主に近いな。
一個一個が独立した動きをしながら俺を見ている。
獲物を横取りするハイエナの目だ。その辺に転がっている残り物のついでに俺も食っちまう気だな。
「新種だな。もし奴に名をつけるとしたら『ケルベロス』とかだな」
独り言を言いつつ俺はすぐさまサリーをぶっ放した。
距離は中距離、愛銃にはもってこいの距離だ。
だが奴は避けた。完全に弾道を読んでやがる。
サイドステップをしつつこちらを伺ってる。
3匹いればなんとかの知恵ってか?畜生にそんなこと考えられるほどの知恵はねぇ。
中距離は弾を避けられる。だが近づいたら弾をぶち込まれる。
下手に手出しできない状況にお互いは動けなかった。
すると我慢しきれなくなったのか、奴は動き出した。だがこちらに向かうことなく森の中に溶け込むように消えた。
音を聞きつつ警戒する。中心は俺だ。恐らく俺を中心に回っているのだろう。
狙おうとしても木が邪魔だ。おまけに速い。闇雲に撃っても意味がないのが目に見える。
ならばと思い、俺は背を大木に預けた。
背中は大木だ。こうすれば奴は前に出るしかない。動きを緩めた瞬間が勝負だ。
そう思った瞬間だった。
後ろからベキベキと不振な音がする。
その音に気がつき振り向いた。
「この野郎、誘導しやがったな」
すぐさまその場を離れる。
直後、なぎ倒される大木。
倒れる大木の先には鋭利なツメ。
そして追い詰めたといわんばかりの目。
片方の頭が回避に徹してる俺を食おうと噛み付いてくる。
俺は愛銃を構え、ぶっ放した。
銃声が鳴り響く。
すぐその後で真ん中の頭に思い切り頭突きをされた。
不安定な体勢だったためか、眉間にぶち込むことはできなかったが俺を食おうとしてきた奴の片目を吹き飛ばすことに成功した。
一つの頭が目を吹き飛ばされた痛みに悶え苦しむ。
もう二つは怒りでこちらを睨む。
俺は腹を抑えつつ必死に立ち上がる。
骨は何本か折れてるが、もしこれが頭突きではなく噛み付きだったらと思うとゾっとする。
姑息な手段をやめたのか奴が真っ直ぐ俺に向かって走ってくる。
傷を負った俺に避ける気力もない。
恐らく頭一つは確実に吹っ飛ばせるが、その後の二つの頭を吹き飛ばす前に俺の体はバラバラにされるだろう。
全部の頭をぶち抜かない限り勝ち目はない。
だが最後の手段はある。
「これを使うと俺もタダじゃすまねぇ……。」
ほんの少しだけ躊躇したが覚悟を決める。
すぐさま俺はサリーの銃身を切り替え、弾を収納するポケットから一発の弾丸を取り出しサリーに込める。
奴が先ほどの得意な中距離まで近づく。
まだ撃たない。ギリギリまで堪える。
咆哮が響き、涎を撒き散らす。
助走をつけ両前足を上げ、飛び掛ってきた。
――近距離、俺と奴とは目と鼻の距離だ。
奴と目が合う。俺は冷静に奴の中心の頭に向かってトリガーを引いた。
同時刻、観測していた人から聞くと、その場所から小さなキノコ雲が上がっていたらしい。
黒い煙を漂わせつつ愛銃を背負い依頼所の扉を開ける。
真っ直ぐ受付まで行き、札と獲物を剥ぎ取った皮と肉が詰まった袋を二つ置いた。
「ニナ、依頼を終わらせた。金をくれ」
あちこち焦げたような姿に驚きつつも、ニナがブツと札を確認する。
「確かに依頼通りの内容ね。もう一つのはなに?新種?それとエド……なんか焦げ臭いよ?」
わざと嫌な顔をつくりながら俺を見る。
「うるせぇな。新種に出会ったんだよ。もう一つの袋がソレさ。めんどうな奴だったぜ。愛銃がなきゃ俺は死んでいたさ」
「……ふーん。まぁ新種なら研究所行き確定ね。新種発見の報酬金は今回とは別だから後日連絡するわ」
そういうとニナが今回の報酬金が入った袋をテーブルに置く。
俺はその袋を取り、中身を確認する。
「畜生……やっぱ赤字だ」
「は?なんだって?」
「いーや気にするな。なんでもねぇ」
最後にぶっ放した弾。あれは火力を何十倍にした弾、ようはグレネードランチャーみたいなもんだ。
おかげで俺まで焦げちまった。まぁその弾のおかげで頭三つ吹き飛ばして事なきを得た。
だがこの弾は特注だ。作ってる奴も数人しかいないうえに弾薬が高い。
今回の治療費と合わせれば尚更だ。赤字になるのだから最後まで渋ったのだ。
まぁ命には代えられないが……。
そう思ってるとニナが語りかけてくる。
「あんたさぁ、たまには休んだら?ここんとこ連続で出かけてるんでしょ?いくら幸運があるとはいえ、いつ見放されてもおかしくないわよ?」
「あ?あぁ……そうかもなぁ……まぁ新種の件で金も入るしたまにはいいかもな」
そう言うと俺は金を内ポケットに詰めその場を後にした。
弾の補充、替えの防護服、サリーの点検……など思いながらふと横を見る。
掲示板に貼り付けられてる依頼の数々。
その中で一つ高額なものが提示されている。
内容は狩り。俺はにやけながらその紙を取る。
――ほんとに俺は狩り中毒だな。愛銃を背負いながら受付に向かった。
2作目です。
1人称視点を練習してみました。
今回もベタな展開ですが是非感想をください。




