ギリギリ発言チキンレース その2
友愛のターンである「その2」が長すぎたので二分割しました。
内容はほんとすみません。偉そうに。
「禁句……」
唐突な宣言に困惑する3人。
カラオケの一番手を譲りあうあの現象である。
「はい、じゃあ友愛から」
友愛は、こういう時の切り込み隊長として頼りになる。
頼まれたら断れないだけとも言うが。
俺の使嗾を受け、少し考える素振りを見せた後に友愛はゆっくりと口を開いた。
「『なろう』の前書きで“今日は短めです”って書かれると読む前からガッカリさせられる、とか?」
「やめろ。なんとなく共感はできるが、そこに敵は作りたくない!」
「そういう苦情は別アカウントでコッソリやろうね」
「某誕生日ソングを火脚に最初の三文字だけ歌わせる、とか?」
「版権的な意味のギリギリじゃねぇよ!」
「まぁ版権もクソも無いんだけどね」
「ハハッ(裏声)」
「某ネズミ王国についてどう議論するんだよ!」
「ただのモノマネだしね」
「はんま1/2」
「読みてえ!!」
「勇○郎がパンダなの!? ねぇ、○次郎がパンダなの!?」
切り込み隊長の無益な綱渡りが止まり、隊員達はゆっくりと息を吐く。
しかしテーマを決めたのも、一番手を任せたのも俺であれば、非難することもできない。
「でもあたしが思いつく話題なんてそのくらいよ?」
結果、友愛の開き直りに、苦渋の選択を強いられることとなるのであった。
「……その中でと言うなら」
「『小説家になろう』しかないかな……」
視線を送り合って、初っ端から地雷たっぷりな話題を仕方なく選択する。
相手は“超えちゃいけないライン”を関係なしに突っ込んでくる脳筋女だ。俺達で適切なストップをかけていくしかあるまい。
「ていうかまず、友愛ちゃんが『なろう』を見てるってのが意外だね」
「まぁ児慈の影響でね」
「さすが元カップル」
「うるさいわね、高校時代の話よ」
実は高校時代に俺と友愛は交際していたという過去がある。俗にいう元カノってやつだ。
なんやかんやあって別れたのだが、飲み会メンバーにはとっくに周知の事実であるし、今更語り合うようなことでもない。
「コッチンの影響ってことはファンタジー系?」
「そうと言えばそうだけど、どっちかと言えば俺TUEE系かしら?」
俺が薦めたのはアニメ化された某劣等生の魔法バトルものだったのだが、あれ以降も自分で探しては読んでいたらしい。
「僕もヒークンもそっち系はカバーしてるから問題ないね」
「じゃあざっくりファンタジー系でまとめるか」
転生モノ、TSモノ、ネットゲームモノ、色々あるが男性陣はそれなりに広くカバーしているので問題ない。
「うーん……じゃあまず奴隷の描写についてから物申すわ」
「奴隷か。中世ヨーロッパベースの異世界モノでは定番だな」
「最近じゃお姫様や女冒険者なんかと同じぐらい出るよね。しかも結構ヒロイン級のメインキャラクターだったりして」
「……好待遇したり、傷や病気を直したりして懐かれるとこまでがお約束」
「そう! それよ!!」
火脚の言葉に、友愛が指をさして声を張る。
「単純すぎるのよ。そんだけ特殊な人生送ってたら、もっとこう葛藤とか、嫉妬とか、依存とか、憎悪とか、不信感とか、困惑とか、戸惑いとか、色々あるはずでしょ」
「落ち着け、困惑と戸惑いはほぼ同じ意味だ」
「……バックボーンがチグハグ」
「バックボーン?」
友愛の意見を簡単にまとめた火脚の言葉に、カナシゲが疑問符を浮かべる。
「……その人物の思想を支える精神的支柱」
「どゆこと?」
「キャラクターがその考えや行動に至る背景が、『奴隷』っていう設定と噛み合ってないってことだ」
言葉が足りない火脚の代わりに、俺が補足を入れる。
「あー、なるほど。先週の話で言うと、コッチンの『真理』に対する背景が『失恋』ってことか」
つまり友愛は、“自分を崇拝してくれる可愛い女の子”をお手軽に演出するために、わかりやすい記号として『奴隷』という属性を貼りつけただけでは、キャラクターの行動原理に納得できない言いたいのだろう。
「そう、それが言いたかったのよ!」
我が意を得たりとふんぞり返る友愛をよそに、議論は続く。
「僕は別に崇拝するまではわかるんだけどね。確かに最近の奴隷キャラは登場から信頼関係を築くまでの展開を簡素にしすぎてる節はあるかな」
「アニメしか見てないが、『まお○う』なんかはリアリティある描写だったぞ」
「リアリティありすぎるってのも好みが分かれる所だと思うけどね。ていうかそれ『なろう』発じゃないでしょ」
「……オレは奴隷ハーレムモノでも、キャラが立ってれば気にならない」
要は設定に深みがなく、都合の良すぎるキャラクターに見えてしまうことが問題だという結論に落ち着く。
ストーリーのテンポやスピード感も大事な場面では、バランスが難しい所ではあるが。
「ふう、珍しく大した反論もなく全員の意見が一致したね」
「議論というより、ただ物申しただけになったな」
「……ギリギリではある」
「じゃあ次、転生についてね」
脳筋の進撃は続く。
次話もほとんど書き上がってます。近いうちに。
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