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恥ずかしい話 ~あさきゆめみし~
「よ、ローリエ。今起きたか」
朝、目が覚める。
というか、アラトに起こされる。
「コーヒー飲む?」
体を起こし背筋を伸ばし、のんびりとあくびをしてみる。春の日差しは、平和だった。
「ええ、お願い。砂糖山盛りで」
「あいよ」
しばらくすると、アラトが私のマグカップを手渡してくれた。
「ほい」
「ありがと」
受け取って、それを啜る。苦さは消えて、ただ甘い。
「甘いわね」
「そりゃそうだろう」
本当にその通り。自分でも驚くほど甘く歯が浮き笑えてしまう。
変な夢。素直にそう思う。
ご都合主義で、現実の事は全部無視。夢というと聞こえはいいが、そんな立派なものじゃない。
こんな突拍子もない物を、夢なんて言えるわけがない。
――馬鹿ね私、本当に。
コーヒーを飲み干せば、少しづつ眠気が消える。
――せめてもう少し、わかりづらい奴にしなさいよ。
さあ、あの馬鹿を起こしに行こう。それが私の出来る事。
――あいつが早起きなんて、するわけないじゃない。