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聖剣はケツに刺す ~勇者だけど世界救ったら暇になった~  作者: ああああ/茂樹 修
第一章 勇者だけど世界救ったら暇になった
10/22

勇者ヤキを入れる① ~つわものどもがゆめのあと~

「勇者様、勇者様」


 朝、カーテンの隙間から日差しが差し込む。天蓋付きの特注ベットで、俺はまだまどろんでいた。小鳥のさえずりが聞こえ、コーヒーの香りが俺に鼻孔を刺激する。


「もう、勇者様ったら、お寝坊さんなんだから……えいっ♪」


 頬を、彼女の指がつつく。目を覚まさなくたってわかってるよ、ハニー。

 彼女は、俺専属の巨乳メイドだ。俺の身の回りの世話を進んで買って出てくれる。料理がとっても上手で、コーヒーを淹れるのだって名人だ。


「う、う~ん」


 俺は、寝ぼけた振りをして彼女の胸を鷲掴みする。


 揉む。


「いや~ん♪」


 どこまでも続く天国への階段のように甘い嬌声。右手に伝わるおっぱいの貼り。指先の指紋の一つ一つが、そのなだらかで豊満な丘に生い茂る快楽を享受する。そして、弾力。力をいれれば、返ってくる。力を抜けば、名残惜しそうにおっぱいが反響して俺の指を逃さない。

 こいつめ!


「あっれ~、コーヒーはどこかな~? どこかな~?」


 揉む。モミ、揉む。


 一つ揉んでは俺のため、二つ揉んではムスコのため。

 三つ揉んではふるさとの、兄妹我が身といまそかり。


 僕のロケットは準備万端待ちきれないぜ発射オーライ。

 目指すは宇宙大気圏超え行くよロケットおっぱい星。


「ちょっと、このエロメイド! アラト様から離れなさいよ!」


 突如部屋にやってきたのは、ある日異世界から突然召喚された巨乳ジョシコウセイ。


「えぇ~、でもぉ~? 勇者様を起こすのは私の役目ですよぉ~?」


 おいおいハニー、そんなこと言っちゃ他の子が嫉妬しちゃうだろ?


「なによ、その役目役目って! そんなに役目が好きなら、役目と結婚すればいいじゃない!」


 おいおいハニー二号、何いってるのかよくわからないゾ?


「まあまあ、まてよ二人とも。俺は一人しかいないけど、なんと手は二つもあるんだ。さ、そこに並んで」


 ハニーと、ハニー二号をベットに招き入れ、川の字になってみんなで寝る。

 右手には、優しく疲れた体を癒やす、神から与えられたおっぱいを。

 左手には、生意気だけど本当は知ってる、その気持ちのよいおっぱいを。


 揉む。

 幸せ。


 揉む。

 幸福。


 揉む。


 ジャスティス。オールオーケイロッケンロー。世界は平和だウォウウォウウォウ。


 そんな幸せな生活が、長く続くはずもなく、窓ガラスが割れたくさんの女の子が俺の部屋にやってきた。


 エルフの国からやってきた妖精おっぱい竜巻起こすぜハニー三号。


 ありとあらゆる道具をつかうぜおっぱいマスターハニー四号。


 森の方からやって来ました野性味おっぱいハニー五号。


 鍛えぬかれたムチムチボディ喰らえ少林ハニー六号。


 なんて素敵なパラダイス。


 これが望んだ勇者の生活。


 日替わりおっぱい揉み放題、寝ているだけでお金がもらえる。ノーおっぱいサンド、イエスおっぱい四面楚歌。


「勇者様♪」

「アラト様~」

「あーらーとさん♪」

「ゆーうしゃーくんっ?」


 周囲から聞こえる甘い声は、まさに俺の故郷の歌。


 あれが、おっぱい星の歌。


 聞こえるだろうか同士たちよ、これが、世界を包む平和な歌だ。


「アラト、あんたさっきから何言ってんの? さっさと起きなさいよ」


 むっ、お前はおっぱいがないから屋敷の燃えないごみ係に任命したローリエじゃないか。だめだぞおっぱいヒエラルキーの欄外にいるくせに俺の部屋に土足で入るなんて! 


 悔しい―ッ!


「出て行け貧乳! 貴様のような洗濯板に手足が生えた人間に、俺の寝室に入る権利を与えた覚えはない!」


 言った、言ってやったぜ。

 後悔はない。

 ずっとこの一言を、俺は言いたかったのだから。


「そう、あんた死にたいらしいわね」

「かかってこい、このペチャパイ帝国女幹部ローリエ! 貴様の巨乳全員を殺すという企みを俺は許さない! いくぞハニー達よ、力を貸してくれ! うおおおおおおおおおおお!」

 


 

 目が覚めると、氷漬けになっていた。


「あっ、おはようございますローリエ様」


 思わず、敬語になる。犯人に対して下手に出る辺り、俺はまだ紳士的なのだろう。


「おはようアラト。出来れば永遠に目を覚まさないでくれると嬉しかったわ」


 辺りを見回せば、見慣れない景色が広がっていた。暗く、狭く、鉄格子。どこからか吹く隙間風の音が、一層侘びしさを演出する。


 なるほど、ここは牢屋らしい。

 だが、心当りがない。


「なあ、俺たちどうしてこんなところにいるんだ?」

「覚えてないの? 村に着く度、いきなり後ろから殴られたじゃない。それで気づいたら牢屋の中。武器も全部奪われたわ」

「……まさか、魔物が復活しているのか?」

「違うわ、気を失う前に聞こえたけれど、オーブ様とか言ってたからあいつのせいよ」

「誰だよ、オーブ様」


 冗談みたいな名前。


「イノウエ」


 ああ、そんな芸名あいつだっけ。


「よし、殺すか」

「そうね、それが一番いいわね」


 ローリエも快諾してくれた。なぜ俺達が牢屋に入れられたのかは分からないが、少なくとも今後の方針だけは決まった。

 ここを脱出し、武器を回収し、イノウエ捕まえ、拷問にかけ、殺す。


「ところでセルジアは?」

「まだ寝てるわ、さっさと起こすわよ」




 ここはどこだろう。

 

 気がつけば、拙者は白い花の咲く丘の上に寝転んでいた。

 風が、頬を優しく撫でてくれる。


 自然が優しく包み込んで、世界は輝いていた。


 思えば、長い旅をしてきた。勇者殿と共に世界を救った。それは長く険しく果て無き旅路。

 平和を、人を守りたかった。

 ただ、誰かの涙を見たくなかった。


 ちゃんと、できただろうか?

 ちゃんと、救えただろうか?


 その証明は、きっとここに。


「お兄ちゃん……お、は、よ♪」


 拙者を、弟が起こしてくれた。優しく、美しく、純粋で傷つきやすい。


 だから、守ろうと誓った。生涯をかけて、ともに歩いて行こう。


「ごめん、ごめんよぉ。お兄ちゃん、ちょーっとおねむだったかな……さあ、今日はなにしてあそぼうか」


 そう尋ねると、弟はうれいそうにピョンピョンとはねて、こんな事を言うのだ。


「じゃあね、じゃあね。ぼく、かけっこがしたいな!」

「ようし、じゃああの木の下まで、きょうそうしようか!」


 拙者が走りだそうとすると、弟は袖をぎゅっと握りしめ、顔を真赤にして抗議してきた。


「もーう、ちがうよお兄ちゃん! そのかけっこじゃないもん!」

「グ、グヘヘ、な、何をかけるのかなあ~?」


 フラグ、フラグがビンビンですぞ!

 拙者のフラグもビンビンですぞ!


「お兄ちゃんが、ぼくにかけて……ぼくがお兄ちゃんにかけてあげるの!」

「よ、ようしじゃあさっそくあの物陰にいこうか! 拙者、グへ、グヘヘ、がんばっちゃうぞ~!」


 ここは天国、ポコチンヘブン。

 夢見た世界、永遠に開かない蕾の楽園。拙者、いまなら死んでもいい。


「なあ、ローリエ」


 端っこにいるモブその壱がなにか喋る。


「何よ」


 モブその弐が答える。


「あいつ、疲れてるんだよ。休ませてあげようぜ」

「そうね、そうしましょうか……少し働かせすぎたかしら」


 そんな台詞を言い残して、モブ壱、弐は世界から消失した。


 そんなことより、かけっこかけっこ!


「あいつ、弟いねぇだろ……」


 モブその壱の声が聞こえた気がした。




 だけど、それはきっと風の声。

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