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15 幸せな秘密

 髪も呼吸も乱れさせて部屋に飛び込んできたザクラス殿下は、立っている私を見ると全身をざっと一瞥し、一度目を閉じてため息をついた。

「……倒れたのではないんだな? 大丈夫だな?」

 私が何度もうなずくと、リドリース陛下とラメルさんを見て、再び私に視線を戻す。

「俺を呼び出さなくてはならないような、何があった?」


「え、と、その……」

 私がつい、ちらちらとリドリース陛下を見ると、陛下は

「ユマ、全部話して。私たちのことも話していいから」

と微笑んだ。ラメルさんと視線を交わす様子は、「いいな」「はい」という感じでとてもいい雰囲気だ。

 私は長袖Tシャツの袖口をいじりながら、ザクラス殿下を見た。

「あの……リドリース陛下とラメルさんが、お互いに想い合ってらっしゃったのは、お気づきでしたか?」


 ザクラス殿下は目を見開いて、二人を見た。気づいてなかったらしい。

 陛下とラメルさんは、それぞれ別の方向の床を眺めている。何なのこの可愛さ。


「それで、そのう、お二人がこっそりと愛を育めるように、ですね。私がこれからもちょくちょくこちらに来て、リドリース陛下の妻の役を継続することで、目くらましになろうかな、なんて思ったんですけど……」

 もごもご言う私を、ラメルさんが援護射撃。

「ユマ殿は、こちらに残りたいという気持ちがおありのようです」


 私は慌てて「でも」と顔を上げ、驚きの表情のザクラス殿下を見た。

「ザクラス殿下は私との結婚を解消して、アリーウィアさんと結婚して後継ぎのことを考えないといけないんでしょう? それって、私がリドリース陛下の『妻』役を続行していても可能かな? そうだ、実は日本も一夫一婦制だってことをバラしちゃうとか。そうすれば、私は非難されるかもしれないけれど、殿下は被害者になるから他の人と結」

「待て。少し待て、ユマ」

 ザクラス殿下は右手を眉間に添え、左手で私を抑える仕草をした。さっきから、一人一回は「待て」を言ってる気がする。

 殿下はしばらく何か考えていたけど、やがて手を下ろして私を見た。

「俺のことは後でいい。とにかくそういうことなら、表向きはまだ、三人で夫婦の状態でいいと思う。俺はその状態で、またお前がこちらに来るのを待つ。一度は帰るんだろう?」


「はい……でも、アリーウィアさんを待たせたらまずいと思います。他の人に求婚されちゃうかも。そ、それとも、アリーウィアさんはもう待ってくれることになってる、とか?」

 私が目を逸らしながら言うと、ザクラス殿下は首をがくっと前に倒した。

「あのな」

 そして、顔を上げて私をもう一度見つめながら、リドリース陛下に言った。

「……陛下、申し訳ありませんが、俺とユマを二人きりにしていただけませんか。話があグハッ!」

 リドリース陛下が、横からザクラス殿下の頭を私のトートバッグでパコンとやっていた。

「するわけがないだろう。まだユマの気持ちを聞いていないのに、密室で男と二人きりになど」

「陛下、俺は」

「いいから、さっさと外へ出ろ」

「外……?」

 私が戸惑って陛下を見ると、陛下は優しく微笑んだ。

「ユマ、ティキアを呼ぶからもう一度ドレスに着替えて。庭園の東屋ででも、二人でゆっくり話すといい。ザクラス、離れていてやるが、話は私の目の届く範囲でな」


「ユマ殿、お倒れになったとか」

 神殿の吹き抜けホールに出ると、神導長が驚いて近寄って来た。

「すまない、少し立ちくらみがしただけなのを、陛下が心配して俺を呼んだらしい。陛下はユマのこととなると大げさだからな」

「神殿の荘厳さに、何だか気が遠くなってしまって。ちょっと庭で風に当たれば大丈夫だと思います」

 ザクラス殿下と、再びドレスを着た私はもっともらしく言い訳して、陛下やラメルさんと一緒に外に出た。何が何だかわからない様子のティキアさんも、後をついてくる。


 急にふわっと身体が持ち上がって、気がついたら私はザクラス殿下にお姫様だっこされ、神殿の大階段を降りていた。

「うわ、歩けますから!」

「立ちくらみしたことになってるんだから、演技しておけ」

 殿下はなぜかとても嬉しそうに、足取りも軽く階段を降りきると、そのまま私をさっさと庭園に連れて行った。

 リドリース陛下とラメルさんは、ティキアさんを階段の下のベンチで待つように指示し、そのまま庭園を散策するらしい。竪琴はいったん通常の機能に戻っているので、こちらの会話は聞いていないと思う。


「えと、この組み合わせで二人きりの所を見られていいんでしょうか!?」

「もう俺の我慢はやめだ。三人で夫婦の状態でいいと言っているだろう」

 うろたえる私を東屋まで運ぶと、殿下は私を膝に乗せるようにして座った。

「ユマ」

 その声の調子にドキッとした私は、反射的に手を突っ張って、殿下の膝をお尻からずりっと滑り落ちた。うう、お尻が石のベンチに当たって痛い。

「……この間と態度が違うな……まあいい」

 殿下は軽く咳払いをした。

「あのな、ユマ。俺たちはお前を無理矢理こちらに呼び寄せた。そしてその後も、お前にとってこちらの世界にいることが益にならないと思うからこそ、元の世界に帰そうと思ったんだ。しかし、お前がこちらにいたいと思っているなら、話は別だ。わかっているのか?」


 私はやや強い調子で言い返す。

「で、殿下こそ。あのですね、私は私がこちらにいても役立たず、むしろ邪魔だと思ったから、最初の約束通り元の世界に帰ろうと思ったんです。でも、リドリース陛下とラメルさんのお役に立てるなら残りたい。ただし、さっきも言った通り、私の存在がザクラス殿下とアリーウィアさんの結婚の邪魔になるなら、その辺をどうにかしないと」

「そこだ」

 ザクラス殿下が、私の鼻先に人差し指を突きつけた。

「なぜ俺がアリーウィアと結婚するんだ? お前が残るなら、俺の妻はお前に決まってるだろう」

「は? だって……アリーウィアさんと結婚するつもりだったんじゃ?」

「愛する女がいれば、そちらを選ぶくらいの甲斐性はあるつもりだが?」

「だから、アリーウィアさんのことでしょう? だって、アリーウィアさんがお城に頻繁に来ていたのって、殿下に会うためじゃないんですか?」


 ――数秒間の沈黙。

 東屋の手すりにとまった小鳥が、ピイ、と鳴いてまた飛んで行った。


「……お前、俺とアリーウィアが愛し合っていると思っていたのか?」

 やっと合点がいったというように、ザクラス殿下は苦笑した。

「知らなかったのか。あいつは、馬術の師範だ。城に頻繁に出入りしているのはそのためだ」


「……へ?」

「あの若さで、我が軍の精鋭を尻目に、馬術大会三年連続総合優勝だからな。教えを請わないわけにもいくまい」

「えええーっ!?」

 とうとう、私は口を開けて絶句したまま言葉が続けられなくなった。


 ザクラス殿下は破顔すると、片手で私の鼻の下と顎の下を挟んで口を閉じさせた。そしてそのまま、その手を私の頬に添える。

「理解したか? ……俺の妻は、お前だ。リドリース陛下にラメルという存在ができるなら、例え姉でも陛下でも、この上お前まで一人占めさせておく気はない。お前は、俺だけの妻だ」


 顔が、火を吹くかと思った。頬に触れている殿下の手が、冷たく感じるくらい。


 私はスカートの前を握ってしわくちゃにしながら、それでも色々と考えて――こう言った。

「私は……自分が本当に殿下の妻だなんて、思ったことありません」


「……ユマ」

 殿下が絶句して、ゆっくりと手を下ろす。

「私にも、話していない秘密があるからです。聞いて頂けますか?」

 おそるおそる殿下を伺うと、殿下は険しい顔だったものの、うなずいた。

 私は一気に言った。

「結婚した時の書類に書いた名前が偽名なんですっ」


「……何?」

「で、ですから……嘘の名前を書いたので書類は無効かな、と。私、つまり本当は、陛下とも殿下ともちゃんと結婚してないんです。だから、ずっとニセモノ気分で」


 ふ……と、殿下が笑った。

 そして、もう一度、私の腰に手を回して言った。

「俺たちの秘密に、もう一つ秘密が加わるだけだ。必ず守る」


 そりゃまあ、ね。日本の戸籍と漢字が違ったところで、こちらには関係ないし、「日本花子」と書いて「なおかわゆま」って読ませることにしとけば……って、それどんなキラキラネーム。


 殿下はさらに続けた。

「もういいか? なら、俺の子を産んでくれ」


 話が飛びましたから!!


「もうっ、殿下、わかってない! 妻だとも思ってなかったのに、いきなり子どもの話をされても困ります!」

 もう一度、私を引き寄せようとする殿下の胸に手を突っ張って、身体を逸らす。

 私が抵抗する様子を見て、視界の隅でリドリース陛下が一歩こちらに踏み出した。それをラメルさんが引き止めている。


「急に異世界の王家の後継ぎを産む覚悟なんか、持てるわけないです! そんなの、日本よりこの国を選ぶようなもので……私だって、夢のために勉強したいし……それに日本に両親だっているし」

 ぐだぐだ言う私に、殿下は間髪入れずに返す。

「お前の夢なら陛下に聞いた。こちらでもできる仕事だと思ったぞ。それに、ユマの両親をこちらに呼ぶことができれば、いくらでも説得する」

 両親を……あ、写真をこっちに持ってくれば、絵を使うより確実にこちらに呼べるかも……っていやいや。

「だから、そこまで今決めろって言われても! せめて……そう、進路を決める大学三年まで待って下さい。それまでは、行き来させて。二つの世界に二股かけさせて下さい……!」

「その時までは、俺たちは表向きだけの夫婦だと……そういうことか?」

「で、できれば、それでお願いしたいと……」

「…………」


 殿下は私の腰を両手で抱いたまま、いったん口をつぐんだ。

 私は腕から力を抜き、殿下の胸に両手を添えたまま、殿下の表情をうかがった。


「お前の気持ちが知りたい」

 ぽつっ、と聞かれた。


 それが最初じゃないの!?


 突っ込むのは心の中だけに留め、私は視線を逸らしながらも正直に言った。

「……最初は殿下のこと、ちょっと怖かったんですけど……いつの間にか、殿下のそばにいられるのが期間限定なんだってことが辛くなっていて。どうせ帰らなきゃいけないなら早く帰ってしまいたい、でもやっぱり、側にいたい、って……。な、何だか滅茶苦茶。リドリース陛下のお役に立てるかもってわかった時、そのこと自体もすごく嬉しかったけど、これでザクラス殿下のお側にいられると思ったり、殿下とアリーウィアさんが結ばれるのを見なくちゃいけないんだと思ったり」

 うまくまとめられない私。殿下の声が、愛おしさを含んで私に届く。

「嫉妬してくれたのか。それは、俺を好いてくれているからだと思っていいか?」

 私は下を向いたまま、でもはっきりと一つ、うなずいた。

「……お前の気持ちが俺と同じだとわかれば、お前がこちらを選ぶまで待てる。絶対に後悔させないから……俺を、拒まないでくれ」


 拒んでなんか。


 そう言おうと顔を上げたら――殿下の瞳の切ない色に、吸い寄せられた。


 軽く前かがみになった殿下が、私の顔を覗き込む角度でいったんとまった。尋ねるような瞬き。

 息をとめて、瞳を閉じた。


 柔らかいものが、唇に重なった。甘い痺れが背中を走ってピクッとなってしまったけれど、私は拒まずに受け入れる。

 殿下の胸に添えた手が、大きな手に包まれ、やがて指と指をからめるように結ばれた。

いったん離れ、お互いに表情で気持ちを伝えて。

 広い胸に、すっぽりと抱きこまれた。

 身を委ねながら、ちょっと横目でうかがうと――


 リドリース陛下が満面の笑みでこちらを見ながら、ラメルさんの背中をバシバシ叩いていた。


 こうして、私はザクラス殿下と想いを確かめ合ってから、日本に帰った。

 リドリース陛下とザクラス殿下は、「ユマ妃は里帰り中で、休養後に復帰する」と発表したそうだ。

 私がそれを聞いたのは、日本で一ヶ月半を過ごしたあとのこと。


◇  ◇  ◇


 長い長いキスの後に、ザクラス殿下は額を触れ合せたままため息をついた。

「長かった。……お前が日本に帰って、それからすぐの時間にエガルテに戻ってくればいいものを、なぜ何十日も待たせる?」

 私は余韻にくらくらしながらも、ちょっと唇を尖らせた。

「時間の流れに逆らうのって、思ったより混乱しちゃうんですよ……それに、殿下と違う長さの時間を過ごすのは、何だか嫌なんです」


 大学二年生になった私は、再びエガルテ王国を訪れていた。

 日本の四月の終わり、ゴールデンウィークに入ったころに、ラメルさんにエガルテに再召喚してもらえるよう頼んであったんだけど、それが無事に成功したのだ。

 神殿にはリドリース陛下とザクラス殿下が迎えに来てくれていて、里帰りから復帰した『妻』を和やかに迎えてくれた。陛下とラメルさんが視線を交わす様子を見て、二人がとてもうまく行っているのがわかった。

 ラメルさんや神導長に微笑ましく見送られ、私たちは神殿を後にして。

 星歌宮の皆さんにも温かく迎えてもらい、居間に落ちつき、リドリース陛下がちょっと席を外したその隙に――いきなりザクラス殿下のキスの嵐に襲われたのだ。


 嵐がおさまり、私たちはぴったりと寄り添ってソファに腰かけたまま、話をしていた。


「……同じ長さの時間、お前も俺を想って過ごしていたということか?」

 私の額のあたりでささやく、殿下の唇。

「そうです……ずっと」

 私はうなずく。


 離れていても、同じ時間を、同じ気持ちでお互い想い合っていた。

 再会した時にそれがわかるって、とても素敵なことだ。遠距離恋愛ってこんな感じなのか……と思う。


「十日くらいは、こちらにいられますから」

 私が微笑むと、殿下はちょっと顔をしかめたけれど、「まあいいか」とうなずく。

「今日は、陛下も殿下も星歌宮に泊まりますか?」

「ああ。お前がいる間は、こちらから本宮に通う。俺も、陛下もな……」

 語尾が微妙に苦みを帯びたので、私は首を傾げた。

「……何で残念そうなんですか?」

「お前と二人で夜を過ごせないからに決まっているだろう。陛下に『三人で仲良く眠ろうな、ザクラス?』と微笑まれてしまった」

 プッ、と私は噴き出した。


 私の覚悟が決まるまで、陛下は、その……私を「守って」くれるんだろう。頼もしい旦那様だ。


「しかもその十日のうち、一日はアリーウィアにお前を取られるんだからな。遠乗りに行く約束をしたから、と張り切っていた」

 殿下がぶつぶつと言っている。


 その時、ためらいがちなノックの音がした。

 慌てて殿下から離れながら返事をすると、入って来たのはティキアさん。お茶道具のワゴンを押してテーブルのそばまで来ると、膝を軽く曲げて嬉しそうにあいさつしてくれた。

「ユマ様、お帰りなさいませ」

「ただいま、ティキアさん!」

「ユマ様のお好きなもの、色々と用意してございますよ。まずはこれです」

 ワゴンの上にあったお皿の覆いを取ると、ずどーん。ボウルみたいな大きさのフルーツパフェ(?)が鎮座していて、私は思わず笑ってしまった。


「ユマ、ティキア」

 ふと、ザクラス殿下が声の調子を変えた。

「協力してほしいことがある。陛下とラメルとの逢瀬のために」

「はい?」

 私とティキアさんは顔を見合わせてから、ザクラス殿下を見た。

「陛下とラメルが、なかなか二人きりになる機会がないんだ。用がない限り、陛下はなかなか神殿に行くことができないし、ラメルはもちろんこちらに来れないのだからな」


 あ、そうか……それじゃあ、これまでと同じになっちゃう。せっかく想いが通じたんだから、たくさん会いたいよね。そうだ、あと、私が使わない時はこのチョーカーを貸してあげなきゃ。


 そう思っているうちに、殿下は続けた。

「今度日本に帰る時、また神殿に行くだろう? その時に、俺とユマの間に何かあったような雰囲気を作れないか?」

「何かって?」

「喧嘩している風がいいかな。ティキアもうまく合わせてくれ。そしてお前が帰った後、俺はさっさと神殿を出る。リドリース陛下とラメルは心配して、話し合いを持つ……というわけだ」


 なーるほど。これで、周りにおかしく思われずに二人きりの時間が作れるわけね。


「私とザクラス殿下の喧嘩がなかなか解決しなければ、陛下も何度かラメルさんの所に相談に通えますね」

 たくさんデートできるといいなぁ、とふわふわした気持ちで考えていたら、ザクラス殿下がぼそっとつぶやいた。

「あちらの二人の仲が進めば、こちらも進めやすいからな」

「え? ごめんなさい、何ですか?」

「いや。何でもない」


 すると、ティキアさんはいつものクールな表情でお茶の準備をしながら言った。

「それでもし、陛下が身籠られたら、いかがいたしましょう?」


「え」

 みごも……に、妊娠? ラメルさんの、子どもを?

 そ、そうだよねぇ、二人きりになったらそういう可能性があるのは当たり前。うん。何を照れてるの、私。


「え、あ、えーと……わ、私が妊婦のフリをします! で、陛下にはお腹が目立ち始めたら、病気療養のフリして星歌宮に籠ってもらって、出産……無理ですかね……?」

「星歌宮の全員の協力があれば、何とかなるんじゃないか? 医師もいるしな」

 ザクラス殿下がうなずいた。

 そっか、そうだよね。陛下には味方がたくさんいる。

「王家の子どもは、幼いころから神殿に通って神学を学ぶ。陛下が付き添えば、ますますラメルと会える時間が増えるな」

「そうなんですか!……本当にそうなったらいいな。リドリース陛下とラメルさんの子ども、きっとめちゃめちゃ可愛いですよね!」


 私はうっとりと思い描いた。

 もちろん、こればっかりは授かりものなんだからわからないけど、もし生まれたら表向きは私の子どもになるんだよね。その時は私もいーっぱい可愛がらせてもらっちゃおう。


 私の様子を見て、ザクラス殿下はニヤリと笑った。

「それで、お前が早く『二人目』が欲しいと思うといいんだがな」

「またそれですか!」


 そこへ、リドリース陛下が戻って来た。

 金の前髪をかき上げるその表情は、何だか前より柔らかさが増したみたい。

「賑やかだね、何の話?」

と微笑むので、私は「な、何でもありません!」と両手を横にぷるぷると振った。


 全く……エガルテの王室には、秘密が多すぎます。

 幸せな秘密だから、まあ、いいかな?


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