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ドリー、襲来

「いやー、あの時のやつか。そいつはすまなかった」


バンバンと俺の肩をサンドバックのごとく叩きながら豪快に笑うドリー

……そんなことでダメージを受けるような柔な鍛え方をしてないが、そろそろ切り刻むぞおまえ


「それでおまえはこれからどうするんだ?」


「どうするとは?」


「パーティー組むとかパーティー組むとかパーティー組むとか……」


「パーティー組むしか選択肢がないじゃねぇか……」


「というわけでうちのパーティーに入らないか?」


「切り刻むぞ。五?角ぐらいに」


とにかく、一応俺は大学生なので一旦あっちに戻って休学申請しないと。……外国に行くで通るかな?

勇者(笑)?知らんな


「おい、大体半刻ぐらい経ったぞ?」


ドリーではなくドリーのパーティーメンバーのうちの一人が声をかけてくる

……ドリーよりしっかりしてるな


「おう、ありがとう」


俺は先ほど登録した受付に向かう。途中で三人ほど昏倒させたけど

だって明らかにチンピラですって顔をした筋肉共が行く手を阻んでなにか言おうとしてたんだもの

反射的に延髄斬りをたたき込んだ俺はきっと悪くない


「レイン様ですね?」


「あ、はい」


「ギルドマスターがお呼びです。私に付いてきていただけますか?」


「は?」


いきなり呼び出しだと……。呼び出しなんか中学生の頃、例のやつのせいで巻き込まれた暴力団二つの闘争の時以来だぜ

たしかその日、暴力団二つが消えたんだったっけ?

あの頃は若かったなぁ


「わかった」


別に断る理由もない。戦闘では負ける気がしないしな

そう返事をすると受付の女性は立ち上がるとカウンターを跳んで乗り越えた

……予想外です


「こちらです」


あまり目立ちたくはないのに、なんでこんなにイベントが盛りだくさんなんだろうか


受付の女性の後ろに続き、カウンターの横にあった階段を登る

筋肉たちの視線を浴びながら

ぎゃあああ……身が焼けるぅぅぅ!

……そんな気がした


階段を登るとそこは無骨な下とは違ってしっかりとした赤い絨毯が敷かれ、見事な装飾があり、貴族の館といっても過言でもないだろう

……貴族の館を見たことないけど


「受付の者です。レイン様をお連れしました」


そんなことを考えながら受付の後を歩いていると一番突き当たりにあった扉を受付の女性がノックした


「入ってもらいなさい」


「どうぞ」


受付の女性が扉の前をどき、中へ入るように促される

中をサーチすると奥の方に一人。あとは屋根裏に二人。……明らかに警戒されてるな


「失礼します」


とりあえず良き日本人としては挨拶は基本……だよね?

最近の日本人はよくわからん


「君がレイン君か」


部屋は落ち着いた内装。赤い絨毯はここにも敷かれており、足場としてはかなり悪い。簡単に沈み込む足は戦闘に不向きだろう。敢えてこうしてるとしたら中々の設備だ

そして、中にいたのは髭を湛えた好好爺といった容姿を持つじいさん。顔には微笑みを貼りつけてはいるが目が笑っていない


「一介の初心者冒険者になんの用でしょうか?」


「まずは聞こうかのう。お主、この国の王族か?」


「なるほどな。登録の時に採った魔力から属性を調べた、と」


まさか俺の属性をピンポイントで調べてくるとは思わなかった

……油断した


「その通りじゃ。今まであの元Aランカーの酒場のマスターの推薦をもらってきた者はいなかったのでの。特例として属性を調べさせてもらったわ」


ホッホッホと笑うタヌキ爺。丸い耳が幻視できる

酒場のオッサン、強かったんだな


「そこで出た属性が問題での」


タヌキ爺の目が細くなる。これは人を見定めている目だ

俺は目を細めるとタヌキ爺の次の言葉を待つ


「時と空間だったかの?問題の属性は。本来この二つはこの国の王族のみが持つ属性のはずじゃが……」


言葉尻は消えていったが明らかにこう言っている。なぜおまえが持っているのか、と

まあ、俺が答えることは一つだわな


「残念ながらその質問にはお答えできん」


屋根裏の二つの影が殺気づく

……短気だねぇ


「理由を聞いてもいいかのう?」


「答える義理がない……っていうと屋根裏の二人が襲ってくるだろうから……」


屋根裏の二人に視線を向けると目が合った二人は冷や汗を流す


隠蔽魔法を発動していたみたいだけど、空間サーチからすればないも同然だぞ?


「あまりにも非現実すぎて言っても信じてもらえないだろうし、言うといろいろ面倒なことになる。……とりあえず、さっきの質問に答えておくと俺は王族でも、その血筋に連なる者でもない」


一息でそこまで言い切ると視線を強め、なんか文句あるか?とギルドマスターに言外に告げてみる

これ以上突っ込まれるようならギルドに加入するのは諦めて遁走するかね


「ふむ……ならば儂からはこれ以上言うことはない」


「へっ……?」


「ホッホッホ。そんな顔もできるんじゃな」


髭を撫でながら笑う爺さん。今度は目まで笑っている

……なんかしてやられた気分


「質問したのは単純な興味じゃよ。そんなに詳しく聞くつもりは最初からなかったのじゃ。そもそもギルドは自由なところじゃしの」


なんというか……この爺さんのキャラがわからん

厳格なのか優しいのか……


「空間と時の属性はこの国では神聖視されておる。だが、それがばれればお主は様々な国や組織から狙われるじゃろう。くれぐれも留意しておくのじゃ」


ちょっと真剣な顔になって忠告をしてくる爺さん

……ありがたく受け取っておこう

理由はわかるし……


「それだけわかってもらえれば儂からは何もない。このギルドのマスターとして新人冒険者、レインを歓迎しよう」


酒場のマスターの情報は確からしいな。結構な人格者のようだ

……ちょっと不意をつかれてアホ面を晒されてしまったのも含めて正式にタヌキというあだ名を差し上げよう


「新人の冒険者は普通はFからなんじゃが……お前さんはそんなに弱くないじゃろ?」


「まあ、そこらの冒険者には負けない自信はあるが……」


バグキャラであるヘルとランクのわからない雑魚としか戦ってないからわからん

あ、ドリーたちCランクパーティーと互角に戦ってたからそれぐらいはあるかも


「ふむ、ならば儂が試験をしてやるかの。ジン、カイ、出てくるのじゃ」


「ぐっ!?」


「ふぎゃっ!?」


天井裏から人が二人落ちてきた(・・・)

すいません、空間魔法で平行感覚を狂わせたのは私です

反省はしている。後悔?なにそれおいしいの?

人に殺気を向ける方が悪いのです


「なにをやっておるのじゃ……」


呆れたような声を出す爺さん

それもそのはず。自身の護衛にと置いておいた(たぶん)腹心の部下がこんな屋根から落ちるような体たらくでは不安にもなるだろう

気付かないレベルで少しずつ空間を揺らしていただけだが……案外使えるな、これ

やばい……なんか楽しい


「すみません……少々失敗いたしました」


二人を代表して背の高い男性が頭を下げた。赤い髪で鋭い目をしている痩せ形の男。少々ふらついてはいるが、かなり復活したっぽい。もう一人も赤い髪。兄弟と言われても違和感のないような顔だが、まだ子供っぽいのが抜けきっていない。まだかなり顔が青い


「まあよい。それより、客に挨拶をの」


「これは失礼しました。私の名前はジン・フロアディア。そしてこちらは弟のカイです。ギルドマスターの護衛をしております」


見事な一礼とともにそう言ってくる

立ち振舞いに隙が見当たらない。ギルドマスターが選ぶだけのことはあるな


「カイ・フロアディアです」


一礼もなく、こちらの力量を測るかのようにじっと見てくるカイ

礼儀はさておき、戦闘に関しての隙がない

こちらもなかなかの手練だ


「すいません。カイは礼儀だけはなっていませんので、ご容赦ください」


全く申し訳なく思っていないような口調。こいつらは……


「儂も名乗りたいところじゃが、戦いの前に名乗った方がよかろう」


ホッホッホとまた笑う爺さん。その目には笑いながらも好戦的な光が浮かんでいた

いい歳して戦闘狂(バトルジャンキー)かよ……


「場所はどうするんだ?まさかここでやるとは言わないよな?」


「心配はいらん。このギルドの地下に闘技場があるのでのぅ……」


ギルドの地下に闘技場なんて作って大丈夫なのか?

余裕で建築基準や耐震性を無視してると思うんだが……


「なあに、心配はいらんて。闘技場には結界が張ってあってその中では死にはせん。それに外に出ればすぐに治るでの」


その事を心配してるんじゃないんだが……

異世界で物理法則が地球と同じとは限らないし。そもそも同じ可能性(特に重力)の方が少ない


「どうかの?」


「まあ、受けます」


受けても損はない。時と空間は使わないつもりだし、この世界の住民の力を測るいい機会だ。せいぜい利用させてもらうとしようかな


「なら早速行こうぞ」


なんだこのハッスル爺さん。ジンとカイを見るとジンは苦笑い。カイは目を反らした

……いつものことなんだな

俺は苦笑しながら爺さんのあとについていった





あ、そういえば俺、時と空間以外の魔法が使えない……


〜勇者はその頃〜


訓練中……

そんな時間が経ってないからつまらん


〜作者の一言〜


謀略系の難しさを今更ながら知りました。どちらの立場も腹の探り合い、言葉選び。今回のギルマスとの腹の探り合いはギルマスの経験に軍配。まあ、謀略とはいえない稚拙なものですけど、難しさの一端を垣間見るには十分でした


こんな駄作者ですがよければこの先も凛の物語にお付き合いいただければ幸いです








蕾姫「こんな感じでどう?作者の一言」


凛「敬語が似合わない」


蕾姫「(´・ω・`)ショボーン」

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