筋肉サンドイッチ……勘弁してくれ
ギルド。それは異世界物ならば必ず存在する物
例に漏れずこの世界にもちゃんと存在していた
酒場の向かいにある建物。それがギルドだった
剣と剣が組み合ったマークが入り口の扉の上についている
扉は常に解放されていて冒険者と思わしきムサイ男(たまにゴツイ女)が出入りしている
「あそこに入るのか……」
今の俺は武器も防具も持ってないし……あんなムサイ男(たまにゴツイ女)が大量にいるであろう場所に入りたくない
だが、入らないとギルド登録もできないので意を決して入ってみた
「へぇ……」
正面にはカウンターが並んでいて、複数人の女性が手分けをして働いている
その前に並ぶムサイ男たち(たまにゴツイ女、というかモンスター)となにやら話していたり、モンスター(女の方ではない)の素材と思わしき物を積み上げたりしている
あとは特筆するようなことはあまりない。強いていうなら多数の紙が貼ってある板か?
なんだかんだ言いながらワクワクしている俺がいる
だって俺も男だもの……
「さて……ちゃっちゃと登録しようかな」
ムサイ男女(もう、これでいいよね?)に混じって列に並んだ
……ムサイ男にサンドされたorz
「こんにちは。ギルドになんの御用でしょうか?」
半ば意識が飛んでいたらしい。気がついたら受付の前にいた
……心が洗われるようだ
ギルドの受付の人が天使に見える
「あーっと冒険者登録しに来たんだが……」
「はい。冒険者登録でしたら一番右のカウンターでお願いします」
にこやかな笑顔と共にそう一言、言われた
俺の苦行はいったい……
改めて一番右のカウンターに行くとそこは誰も並んでいなかった
まあ、そう登録しにくる人も少ないよな
考えればわかったよな
……そう考えないとやっていけないんだ
「ギルドでようこそ。冒険者登録でしょうか?」
さっきの人といいこの人といい……ギルドの受付の人はなんでこんなに美形が多いんだ?
「あ、はい」
「では、この紙に記入をお願いします」
一枚の紙を渡された。えっと……名前、特技、備考?
名前はレインでいいとして……。特技は料理かな?ついでに魔法。備考?……ソロがいいです
「はい」
書きあがった紙を受付の女性に渡す
……簡潔すぎたか?
「はい、大丈夫です。それでは登録料1000Gをいただきます」
「あ、こんなものを持っているんですけど」
鞄から例の推薦状を取り出し受付の女性に渡す
余談だが、俺の鞄は空間魔法で拡張+時魔法で時間を止めてある素敵仕様。入れたものは入れた時点で時をとめ、さらにいくらでも入るという
これを可能にしたのは魔方陣という技術なのだが、それはまた後で
「推薦状……ですか」
受付の女性は俺の推薦状に目を通していく。そして、一番下にある差出人の名前を見た瞬間、固まった
「……おーい」
なんで固まる
「酒場のマスターの推薦状ですってー!!」
硬直から復活すると女性はギルド内に響き渡る声で叫んだ
当然の帰結として次の瞬間あれだけうるさかったギルド内がしんと静まり返り、全員の目線がこちらを向いていた
すごく……居心地が悪いです
そんな状況を作った女性を半眼で睨む
「し、失礼しました。ギルド公認酒場のマスター、ギリィ・アルバート様の推薦状を確認いたしましたので、登録料はいただきません」
ギリィ・アルバート。その名前を聞いた途端、ギルド内が騒めきだす。一斉にこちらをチラチラ見ながらすぐ近くの人と話し始めた。……筋肉ダルマが
と、鳥肌が
「規約に従い新人研修も免除されます。よろしいですか?」
「ああ、構わんよ」
き、筋肉ダルマたちの視線が痛い……というより暑い
「ではギルドカードの製作に入りますので、この紙に魔力を流してもらえますか?」
一枚の何の変哲もない長方形の紙が渡される
「魔力を流す、といったけど属性とかはかるのか?」
だとしたら少々めんどくさいことになる
時と空間なんて……どこの厨二だよ
「いえ、個人認証のために魔力の波形を測るだけです。属性や魔力量を調べるようなものもありますが、そんなものを使ってたらいろいろ問題になりますので。……高いですし」
最後の理由、かなり俗っぽかったんだけど
まあ、何にせよ好都合だ
「これでいいか?」
「はい、結構です」
僅かな量を流す。もちろん燃やしたり粉々にしたりはしない。許容量をオーバーするのは簡単だったが
「ではレイン様。ギルドの説明をさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
俺の魔力がこもった紙を後ろにいた別の女性に渡すと居住まいを正した
「ああ、頼む」
長かったので箇条書きにして記すとしよう
・冒険者のランクはF〜A、それにS。もちろんAに行くにつれて高くなっていく。最高はSランクだが、全大陸に指で数えられる程度しかいないらしい
・クエストのランクも同じくF〜A、S。他にもオーバーランクとかあるらしいが受ける気はないので割愛
自分のランクと同じものが目安らしい。あくまでも目安だからFランクがAランクを受けても構わないらしい。しかし自分のよりも一つ下よりも下の物は受けられない
・ランクアップはポイントが貯まった時点でギルドから提示される昇格クエストをクリアすることでできる。ポイントはクエストをクリアするとそのランクに応じたポイントがもらえるらしい
昇格クエストは余程のことがなければ断ることができない
・国等の権力は冒険者には通じない……たぶん
・クエストを受けるには受注金がいくらか必要らしい。クリアしたら戻ってくるが
「複数のクエストは受けられるのか?」
「不可能です。複数のクエストを許してしまいますと、溜め込む冒険者が出てきてしまいますので」
同じ方向のクエストを多数受けて一気にクリアってのは無理か……
「ギルドに関しまして他に質問はございませんか?」
「特にはないな」
「ならば、ギルドカードの説明をさせていただきます」
そう言うと受付の女性は懐から銀色に輝くカードを取り出した
再び箇条書きで(ry
・身分証明書の代わりになる
・他人から見えるのは名前とギルドランクだけ
・ランクに応じてカードの色が変わってくる。ちなみに銀色はBとのこと
・ギルドカードには金をチャージできる。方法は店先にある魔水晶にかざせばいいらしい
……さすがはファンタジー
・犯罪とか起こしたら失効。金は差し押さえ
「以上です。詳しく知りたい方はマニュアルがどのギルドにも置いてありますので、ご自由にどうぞ」
「あ、はい」
「それではギルドカードができるまでお待ちください。後日受け取ることができますが、どうされますか?」
「どのくらいかかりますか?」
「大体半刻(三十分)ぐらいでしょうか」
「なら待ちます」
まあ、三十分くらいなら構わないか……。あ、でも筋肉ダルマがいっぱい……
「わかりました。半刻から一刻の間に私に声をかけていただければお渡しいたします。なお、ご本人じゃなければ受け取ることはできないのでご注意ください」
「わかりました」
さて……如何にして時間を潰すか……
「よお……ギリィ・アルバートの推薦状持ちなんてすげぇじゃねぇか」
振り返ると見知った顔。出たな野武士面
「俺の名前はドリー・ゲイル。一応パーティーの頭をしてるんだが……」
まさか、俺のことを忘れてる?
そう思ってドリーの後ろにいたドリーのパーティーメンバーに目を向けると苦笑いが帰ってきた
……ちょっと前にあったやつの顔ぐらい覚えておけよ
「よかったら、俺たちのパーティーに入らないか?大丈夫だ。うちには新人だからって差別するようなやつはいねぇよ」
お人好しばかりだもんな。顔は完全に海賊かなんかだけど
「勧誘するのはいいがあまりにもしつこいと嫌がられるぞ?」
「は?なにを言ってるんだ、おまえ」
不思議そうな顔をするドリー。後ろのドリーのパーティーメンバーは笑いをこらえるので必死だ
「今日会ったやつの顔ぐらい覚えておけ。レインだ、レイン」
これで気付かなかったら認知症を疑った方がいいかもしれん
この世界にあるかはしらんが
「おお、レインか!」
ぽん、と手をたたくドリー
……遅い
「じゃあ、レイン。うちのパーティーに入らないか?」
気付いてないだろおまえ!?
〜その頃の勇者(笑)〜
修行中
レベルが上がりました
しかし、特に特別なことはなかった
〜作者の呟き〜
ヒロインどうしよう……