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残念ながらテンプレには縁がない

的にはすぐに当たるようになったのだが、いかんせん力の加減が難しい。油断するとどうしても大きくなってしまう

なんとかその力に慣れ、調節も自由自在になり、時空属性である異世界間転移(ヘルが作り出した空間に転移するという修行だった)をできるようになったのは修行を開始してから一年ぐらい経った後だった


「よし、合格だ」


「やっとか……」


ヘルの作った世界から転移に成功しようやく合格宣言をもらった

あー……長かった


「これで俺からおまえに教えることは何もない。あとは地球でもユグドラシルでも好きに行き来するがいい」


そっぽを向きながらそう言うヘル

前々から思ってたんだが、ヘルってツンデレが入ってるよな……

前にそう言ったらグングニルを投げてきたけど。あれは死にかけた


「たまにはここにも来るよ」


「ふん……」


この世界も見納めだな。白黒の世界というのもなかなか……

まあ、修行の過程で壊れた建物(俺の自宅を含む)の瓦礫が散乱してたりしてはいるが


「最後に、異世界間転移に対する注意点だ」


改まったような口調で言うヘル

まあ、カタカタして恥ずかしがっているのはわかるんだが

一年間一緒に生活をしてみて骸骨の感情は大体読み取れるようになったぜ!

嬉しくないけど


「まずは持ち物についてだが……今持っている物以外は異世界に持っていけないからな」


物にも世界の色が存在すると聞いたのはいつの話だったか……


「あとは基本的に自由だが、もしお前が異世界間を繋げる等の道を外れた行為をした場合、俺が責任を持って殺しに行くから覚悟をしておけ」


「そんなことはしねぇよ。まだ死にたくないし」


リアル慢心王(神の武器限定)に時と空間が操れるようなバグキャラに挑むとかアホじゃねぇか


「そうか……なら安心だ。俺だって、だ……大事な愛弟子を殺すような真似は避けたいからな」


再びそっぽを向くヘル

人間なら赤くなっているんだろうが……残念ながら骨なんでわからん


「それじゃあ、な」


「ああ、元気でな」


最後に一つ言わせてくれ

……骸骨が笑ってるとか軽くホラーなんだが










「登場!」


草原の真ん中で存在を叫ぶ

……軽く欝になったのは秘密だ

しばらく白黒の世界にいたからこういう異世界に来たことでテンションが上がってしまったため、自分でも痛いとわかる行動をしてしまう

後々の黒歴史決定である


俺が転移したのはあいつが呼ばれてと思われる国の首都の近くにある草原

今ごろあいつは城の中で姫でも堕としている頃ではなかろうか?


「んー……しっかし風が気持ちいいな」


白黒の世界は風が全く無かったし、こういう草原とかも無かった。久しぶりに頬を撫でる風に懐かしさすら感じながら大きく深呼吸

少し固まった体を伸ばすとポキポキという子気味のいい音とともに体中の筋肉がほぐれていく気がする


「やっぱり都会日本とは違うよな」


この解放感は狭いくせに人口の多い日本では絶対に味わえない

草原なんてもんはもうほとんど残ってないよな……


「さて……ここはどこだ?」


解放感がありすぎるのも問題である

まあ、あいつのいる国に転移したんだしそこら辺歩いてれば着くだろ

……たぶん


草原に点在している森の影に街は隠れていると推測し、太陽がそっちにあるからという理由で一際大きい森の方向へ向かう


「はー……のどかだねぇ……そう思ってんのに」


横から聞こえてきた喧騒。見れば野党と思わしき集団が一つの馬車を襲っていた


「さて……俺のこの暖かい気持ち。壊した代償はキッチリ払ってもらうからな」


なんというか少しシリアス風味なこのセリフ。その実体はただの八つ当たりである


「こんにちは。いい天気ですね」


やっぱり人と人との付き合いは挨拶が基本。まあ、手には異空間からあらかじめ出しておいた巨大なサイスを持っているから友好度はゼロだが


「なんだお前?」


一旦戦闘の手を止めて汚い方の首領と思わしきやつが代表して話しかけてきた

言葉に険が多大に含まれているけど


「通りすがりの番人です。とりあえず、おまえらは商人を襲っているテンプレ的当て馬な盗賊であってる?」


「「「「誰が当て馬だ!」」」」


見事にハモッたな……。気持ち悪いだけだけど

まず、一番俺の近くにいる首領っぽいやつはバンダナ無精髭。装備は金属製のプレートアーマー。ただ……あまり手入れがされていないのか微妙に錆付いている。武器はちょっと錆付いたのシミター

……正直俺のサイスの壁にもならない気がする

他の盗賊も首領よりグレードは落ちるものの似たり寄ったりの疲弊度

片手剣が四、両手剣が二、杖が一

杖のやつは魔法でも使うのだろうか?

対して商人の護衛と思わしき野郎共は片手剣が二、大剣が一、杖が一

言わなくてもわかるだろうが全員男

柄が悪いが

ちなみに馬車は趣味が悪いレベルで装飾過多。太った悪徳商人とかが乗ってそう


「あー……なんかめんどくさいな」


可愛い女の子が商人とかならいいんだが、こんな柄の悪いやつを雇うなんて絶対女の子じゃねぇだろ

そう思うと一気にやる気が無くなった


肩にサイスをかける

俺のサイスはヘルが使っていた物のお下がりだ。……まあ、番人だけあって武器は最高級。地球やユグドラシルでは絶対作れないらしいが……俺には武器の良し悪しはよくわからない

大きさは刃の部分だけで150センチ。正直、空間属性が無かったら運ぶのすら困る存在だ

大きさに比例して威圧感も半端ないもので盗賊たちは護衛たちを気にしながらジリジリと後ろに下がる


「あ、相手はたった一人だ!全員でかかれば怖いことなんて……」


首領がなんか言いだすが最後まで言えなかった、否言わせなかった

言う前に俺が首領の首を刈り取ったからだ

というか初めて人を殺したのに少ししか罪悪感を感じない

……一年間も死と隣り合わせの。それも人を殺すための修行をしていればそうなるか

そこまで考えて苦笑する俺


「ヒ、ヒイッ!?」


盗賊たちが悲鳴を上げる

そうか、返り血を浴びながら笑っている俺が恐かったんだな


あいつは殺すなんて!と憤るかもしれんが、殺さないで自分たちがピンチに陥ったらどうするんだ?と思う

まあ、いきなり安全な(俺のおかげで)環境から殺伐とした、人の命が軽いこの世界にきたらそうなるか


「た、助けてくれ!頼む!」


和解もなしに一度は武器を向けた相手に命乞いとは少し虫が良すぎないか?


「そう言われて助けたことか一回でもあったか?」


全員の顔が青ざめて行く

……ギルティだな


「まあ、来世にご期待ください。……あるかはしらんが」


神がいるんだからあるかもな。……その前に地獄に行かなきゃならんか


「う、うわぁぁぁぁ!!」


片手剣の男が剣を振りかぶって走ってくる

なんだかな……すごく遅く感じる

周りにはヘル(バグ)しかいなかったから自分の強さがわからない


とりあえず剣をサイスで受けようとして……


「は?」


そのまま真っ二つ。豆腐より柔らかかった気がする

それ位手応えが無かった


「ううむ……斬れ過ぎるのも問題だな」


二、三振って血を払うとそうつぶやいた

手応えがあると思って振ったらほとんど無くてバランスを崩すのはマズいか……


「火よ我が敵を焼き尽くせ!フレイムゲイザー!!」


どうも魔法使いの男(盗賊)が呪文を唱えていたらしく火の波がこちらに流れてくる

火の波は幅四メートルほど

途中の草花を焼きながらこちらに向かってくる


「自然破壊をしてんじゃねぇよ」


そう言ってサイスを一閃。すると火の波がモーゼの十戒のごとく割れた

……ヘルが言っていた大抵は斬れるってのは本当だったんだな

まあ、斬れなくてもこっそりと空間魔法の鎧を発動していたからどちらにせよダメージは無かったのだが


空間魔法はバレたくないからよかったよかった


「「非常識な……」」


結構上位の呪文だったらしく肩で息をしながら(片方はしてないけど)絞りだすように魔法使いの男たち(盗賊&護衛?)


まあ、火の波を打ち消すのではなく斬り裂けばそういう反応になるのは予測できていた

この一撃にすべてをかけていたらしい盗賊たちは今度こそ蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく


もちろんその隙を逃す護衛たちプラスワン(俺)ではなく、結局一人残らず討伐完了した


「助かったぜ、あんた」


護衛たちが俺の周りにわらわらと寄ってきて肩をたたいたり握手を求めてきたりしてくる

……汚らしい格好をしている野郎共にも関わらずいい奴らだった


「しっかし、強いなあんた。どうだい?うちのチームに入らないか?」


いきなり勧誘しだすリーダー?。かなり図太い性格なんだな


「遠慮しておくよ」


「まあ、そうだろうな。そんだけ強いんだ。さぞや、名の通った冒険者なんだろ?名前はなんて言うんだ?」


マシンガントーク。なんというか一つ一つ順序だてて話して欲しいものだ


「り……レインだ」


凛、と言わなかったのには理由がある。……あいつにバレたくないからである

しかしレインか……。そんなに変わってない


明らかな偽名にもその男はにこやかだった

職業柄、そういうやつも多いのかも


「おう、そうか。俺の名前はドリー・ゲイルだ。一応ランクCの秘なる剣のリーダーを張ってる。よろしくな」


チーム名。厨二だな

いい奴だとはおもうが

うん厨二


総勢五人の秘なる剣の面々が自己紹介を始めるが……同時にしゃべるんじゃねぇよ

俺は厩で産まれた皇子様みたく多人数のセリフを聞き分けられるような便利な耳は持ってねぇ


「おいおい、同時にしゃべったら意味わかんねぇだろ」


ドリーが苦笑混じりに諫めてくれたが結局こいつらが止まることは無かった


蕾姫「女の子を期待していた方、残念でした」


凛「それよりレインってなんだレインって」


蕾姫「偽名。約五分考えた」


凛「それは考えたって言わねぇ……」

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