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テンプレ?……ってさせねぇよ

さて……頑張るか


……俺は頑張らないけど(笑)


by凛


「よう!」


今は夏の昼下がり。さっさと帰ってクーラーの効いた部屋でごろごろしたいと思いながら足早に学校から帰る道を歩いている時だった


「……あれ、無視?」


俺の不快指数を上昇させる男が一人声をかけてきた。その男は文句のつけようもない程の美形で、性格もよく、そしてとてつもない鈍感で様々な女を泣かせてきた男の敵


「……ねぇ?」


強くないくせにいつも危険なところに飛び込んでいっては俺を頼ってくる迷惑者。しかも助けた女の子は俺じゃなくてこいつに礼をいいやがる。……頬を染めるオマケ付きで


「なあ、鈍感天然主人公野郎?」


「なんかすごい言われようなんだけど……」


「ものすごく主人公主人公しているから側にいる俺はイライラしてんのさ。このぐらいは甘んじて受けとめろ。そして、ハーレムメンバーと共に次元の狭間に消えてくれ」


なんで俺がこいつと一緒にいる理由は一方通行な友達関係が原因だ

なんでか知らんがこいつは俺のことを親友だと思っているらしい。おかげでこいつのハーレムメンバーに何度罵倒されたことやら……

俺? そんなことがあってこいつのことを友達だと見れるとでも?


「それは酷くない!?って、あれ……?」


唐突に困惑した声をあげた(前回はヤクザに攫われそうになっている少女を発見した)ので、またフラグ(恋愛)でも建設するのか?

と思って、思考の海から帰還すると


「え……?」


俺も異変に気が付いた


普段は……というかさっきまでは人であふれていた道には人が消えていたのだ

うだるような太陽の恩恵(めいわく)が消え、気温は変わってないのにも関わらず、不気味な涼しさがある

わずかに風になびいていた木々の葉も、高速で動いていたはずの車も俺たち二人を除いてすべてが色を失い、動きを止めていた


「結界……?」


某魔砲少女とか出てきそうだな。もしくは刀持った炎髪少女とか

……エセオタですが、なにか?


「なんなんだよ……これ……」

というかなんで俺が巻き込まれているんだ?

こんな主人公的イベントに遭遇するのは俺じゃなくてこいつのはずなのに……

……そうか。こいつが近くにいたからか


「なるほど……」


一人納得する俺

もうなんかね。諦めの境地に至ったわけよ……。金が無いから遠くに引っ越すわけにはいかないし

まあ、俺は戦いで余裕で死んでいくモブにしかなれないとは思うが、それもいいさ。俺、こいつのせいで友達いないし、元々親戚は全滅してるし

なんで友達がいないかって?

そんなもん、こいつの周りのハーレムがうるさすぎて誰も寄り付いて来なかったんだわ


「なるほど……勇者召喚イベントか」

見れば光の扉的な物が鎮座している。にな○うや理想郷を旅した俺にはこの先の展開は読めている

というわけで


「逝ってこい」


なんかぶつぶつつぶやいていた自称親友(笑)を光の扉に蹴り込む


「ちょっ……!?」


なんか言いかけていたが気にしない。さて……人を一人飲み込んだ光の扉は消えたし、ここから出してくれないかな?


返事がない。ただの結界のようだ


ってええ……あなたの目的は達成したよ?

だから俺をやつのいない輝かしい現実に戻してくれない?


とか考えてもうんともすんともいわない結界さん(仮)


「いや……真面目に出せよ。ここで餓死とかシャレにならんから」

しかし返事がない。いや、あったらあったで怖いけど


「おい、そこの人間。何をしている?」


……フラグを回収してしまった

声が聞こえた方(地面から大体上方に六十度ぐらいのところ)を向くと巨大な鎌を持った骸骨がいた


「巻き込まれて、置いてけぼりを食らいました」


「……簡潔すぎて理解ができなかったのだが」


骸骨は地面に降り立つと大鎌を地面に突き刺しカラカラと苦笑い(たぶん)


「自称友がおそらく勇者召喚か何かで呼ばれる。近くいた俺も巻き込まれる。召喚の待機場所だと思われるここで不必要な俺が置いてけぼりをくらう。……わかったか?」


「あー……なるほど。それは災難だったな」

ウンウンと頷いて同情してくれる骸骨。なんかすごくいい人(骨?)なんだけど


「ここは召喚の待機場とかじゃなくて世界と世界を繋ぐ狭間ってところだ。その形は不定形で、そこに来た人間がいた場所が色を失った状態であらわれる。俺は境界を守る番人ってところだ。見たところ、どうやら地球から来たらしいな」


「番人? ならなんで来た瞬間に来なかったんだ?」


「おそらく召喚のための魔方陣に気配やらなにかを消す効果が付与されていたんだろうな。おかげで気が付けなかった」


魔方陣とかなんてファンタジー。まあ、現在進行形でファンタジーを体験している俺が言えたことじゃないけど


「それで俺はどうなるんだ?その巨大な鎌でスパッといったりするのか?」


「うーん……基本的に境界に迷い込んだやつはそうなるんだが……」


俺の人生終了のお知らせ。いや、俺は基本じゃないんだな?

そうだと信じたい


「お前は何故か知らないが、この境界の属性と同じになってしまっている」


「と、言うと?」


「俺の同僚」


「把握」


拝啓

天国の両親へ

私はどうやら人外になってしまったようです


「……なんで?」


現実逃避してもなにも変わらないと気づき我を取り戻す


「推測でしかないんだが、その召喚魔方陣に世界の色を塗り替える効果があったんじゃないか?」


「……すまん、全くわからない」

そもそも世界に色なんてあるのか?


「世界の色ってのは、簡単にいうと世界の意志に阻害されないためのマーキングってところか? 今は違うが元のお前の場合は地球といった具合にな」


「色が違うと世界の意志とやらに潰されるのか?」


「そういうことだ。まあ、今回は色を塗り替える効果が魔方陣に組み込まれていたからそんなことはおきないがな」


ちょっと待て。ということは


「……到着と同時に塗り替えが終了するみたいだったらしいな。お前は半分しかその召喚に巻き込まれなかったから地球と召喚をした世界……ユグドラシルの色を半分ずつ得ることになったってわけだ」

それって大丈夫なのか?


「まあ、俺も二色持ってるから言えるんだが大丈夫だ。むしろラッキーだったと思うぜ?」


「……俺はどちらの世界でも生活できるっていうわけか」


「もの分かりの良い奴は好きだぜ。まあ、正確に言うと連続で500年以上は無理なんだが、おまえら人間にとっては十分過ぎるだろ」


人間の寿命は長くても150年だと聞いたことがある。……たぶん


「世界間を守る番人は一つの境界につき一人(?)なんだ。俺としてはおまえに押しつけたいところなんだが……」


骨の両手を挙げてやれやれと首を振る


「寿命が短すぎて可哀想だ。おまえは自由に生きろ。で、どっちがいい? 地球かユグドラシルか」

「とりあえずユグドラシルがどんなところか聞いていいか?」


「剣と魔法のテンプレな世界」


「……平凡な一大学生な俺にそんな物騒な世界で生きていけるとでも?」


平凡……とはちょっと言えない戦闘力はあるが、それは平和な日本での話。そんな過酷な世界で生きていけるとは思えない


「いや、二つの色を与えられた時点で時と空間の魔法属性が与えられるから大丈夫だと思うぞ?」


なにそれ怖い。いつの間にか厨二っぽい属性が追加されていたらしい


「扱えて初めて力といえる。俺は魔法なんて扱ったことも見たこともないし、初めてで使えるようになる主人公補正というものも持ってない」


当たり前だ。内に秘めていても使えなければ意味がない。仮に使えたとしても暴走して自滅しましたー、じゃ話にならない。教師役。それも暴走を止めてくれるような強い奴がいなければ無謀すぎて練習することもままならない

初っぱなから安全に使用できるなんてそんな小説みたいな話があるわけがない


「なら、俺が教えたろうか?」


「えっ? いいのか?」


「どうせ暇だしな」


ボソッと寂しげに呟く番人(骨)……ぼっちなのか


「じゃあ、お願いします」


「おうよ! 俺が一人前の番人に育ててやる!」


あ、ヤバ。地雷踏んだかも……










「俺の名前はヘルボーン・アース・ユグドラシル・スコルプだ。よろしくな」


「長い……。あ、神川凛です。よろしくお願いしまーす」


「ちなみに女だ」


「えええぇぇぇぇぇ!?」


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