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軽四駆X異世界疾風録 〜異世界転移したら愛車も一緒だったので、ボロボロになりながら帰ることにした  作者: タキ マサト
第一章 異界のもの

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6 新たなる危機

羽を持つ猿の群れが死骸をむさぼる音が、恐ろしいほど生々しく響いていた。


 ひときわ大きな個体がこちらを睨み、爪のついた足で馬の死骸をぐしゃりと踏みつぶした。

 冷や汗を背中に感じ、田崎はルーの首輪をつかみ叫んだ。


「乗れ!今すぐ!車に!」

 言葉は通じないが強く伝わる何かがあったのか、小柄な戦士と女戦士が顔を見合わせ、かすかにうなずいた。


 田崎はすぐさまジムニーのバックドアへ駆け寄り、ドアを開け放った。

 最初に飛び込んできたのはオムカだった。

 続いて田崎は商人の胴に手を回し、軽い体を後部座席に放り込んだ。

「次だ、戦士……!」

 戦士は、血まみれの仲間に何か叫びながら名残惜しそうに振り返ったが、田崎は強引に荷台から後部座席に押し込んだ。

 首を噛まれた男はすでに動かない。

 倒れた戦士が、羽を持った猿の群れに飲み込まれていくのが視界の端に見えた。


「乗れっ!」

 女戦士に叫び、助手席のドアを開け彼女の背中を押して強引に乗せる。

 続いてルーが女戦士の膝の上に飛び乗った。

 彼女は一瞬ぎょっとした表情を浮かべたが、すぐに肩の力を抜いた。


「来る……!」

 背後で木の枝が折れる音。

 獣の唸り。羽ばたき。


 田崎はスコップを振り上げ、猿の一体を全力で殴り飛ばした。

 重い感触とともに、血がスコップに跳ねた。目の前に、牙が迫る。

「うおおっ!」

 叫びとともにもう一匹を押しのけ、すぐさま車内へ身体を滑り込ませた。


 ギアを四駆に入れ、サイドブレーキを一気に引き下ろした。フットブレーキから足を離すと、ジムニーが地面を蹴った。


 ヘッドライトが闇を切り裂き、落ち葉を巻き上げながら車体が急加速した。


 馬車と木の隙間をこじ開け、強引に突破する。

 羽つきの猿が驚き、一斉に飛び散った。


 逃げ遅れた一匹を跳ね飛ばし、馬車のホロを引き裂きジムニーは山道を駆けた。

 後方では、異形が追いすがり、牙を剥き出して吠えていた。

 ヘッドライトの光だけが、黒い闇に細い道筋を描いていた。

 ハンドルを切るたび、四輪駆動が粘り強く地面を噛み、車体が激しく揺れた。


 両側から木々が迫り出し枝がボディに細かな傷をつけた。

 大木を擦りながら避けた時にバキン、と鋭い音を立てて助手席側のサイドミラーが砕け散った。

 ミラーで後ろを確かめようとするが、もう役に立たない。

「くそ……」愛車が傷つくたびに田崎の心は深い悲鳴を上げた。

 助手席の女戦士は剣の柄を抱え、肩を上下させながら前を凝視していた。

 その膝の上のルーは鼻をひくつかせ、心配そうに田崎を見上げた。


 車内は沈黙に満ちていた。


 小柄な戦士は、倒れた仲間のことを思い、歯を食いしばった。


 突然、戦友を失ったことに現実感がなかった。

 こんな森であんな猿どもに殺されていいはずがなかった。

 そして自分が、この魔獣のような乗り物に助けられたことも夢なのかと疑った。

 しかし、あの猿に食い殺された仲間たちの姿は脳裏に焼きついていた。

「絶対に許さない!……この商人を守り抜いて生き延び、やつらに復讐する!」


 激しい揺れが戦士たちを襲い、鉄の壁に肩を強打した。

 揺れは馬車で慣れてはいたが、この速さは経験がなかった。


 まるで魔獣のように猿どもを跳ね飛ばし、馬車の何倍もの速度で山道を走り抜ける。

 乗り心地は決して良いとは言えないが、これに乗っていれば助かるかもしれないとわずかな希望が湧いてきた。


 だが、この鉄の車、そして自分の目の前にいるこの大きすぎる人間は一体何者だろう?

 戦士の今日までの常識はもろくも崩れ去った。


 考えるのは向いていない…

 頭を振ると戦士は次の揺れに備えた。


 その時、後方の気配が慌ただしくなった。

 戦士が振り返ると、木から木へ飛び移る黒い影が見えた。



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