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軽四駆X異世界疾風録 〜異世界転移したら愛車も一緒だったので、ボロボロになりながら帰ることにした  作者: タキ マサト
第三章 道なき旅路

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7 闇の森を抜けて

挿絵(By みてみん)

【ジムニー進撃路】



 西に傾く陽光が森の奥に影を指していた。

 湿った瘴気が漂い、空気を重くしていた。

 

 ジムニーは街道を外れ、荒れた道をかき分けながら闇の森の境界を越えていった。

 道なき道のぬかるみをタイヤが噛み、蔦をかき分け倒木の隙間を縫って進む。


 そのとき、静寂を裂くような雄叫びが森に響き渡った。


「…来たッ!」

 グランが何か叫ぶと同時に、森の上から黒い影が飛びかかってきた。


 長い四肢と鋭い牙を剥き出しにして、鉄の箱に襲いかかる。

 リューシャが後部座席から身を乗り出し、小ぶりの弓を構えた。

 跳躍してきた一体の眉間に、鋭い矢が一直線に突き刺さる。


「次……!」

 矢筒に手を伸ばすが、残り少ない矢に焦りを感じる。


 グランも後部へ移動し、窓枠へ短剣を向ける。

 即座に獣に向かって応戦する。


「跳ね上がるぞ、掴まれ!」

 田崎はハンドルを握り直し、ダッシュボードにしがみついているオムカが杖で前方を指差した。


「そこか!まっすぐ! 木と木の間を抜ける!」

 道はないが、杖が示す先には不思議と通れる隙間があった。


 ジムニーが跳ね、斜面を駆け上がる。

 豹猿の一体が追ってきたが、岩に激突して倒れ込んだ。



 その後方、騎士団の部隊が闇の森に突入していた。


「影の獣に気をつけろ!」

 若き部隊長デルグラが叫ぶ。

 ジムニーの通ったあとにはまるで道のような跡が残っていた。


「……これは?」自然にはあり得ない。


「追うぞ! これなら馬でも追いつける!」

 騎士たちは馬でジムニーのあとを追い始める。


 一方、ジムニーはさらに険しい斜面を登っていた。

 豹猿が再び現れ、車体に飛びかかり田崎の肩をかすめた。

 冷たい衝撃が背を走る。


「危ない!」

 リューシャが矢を番えようとするが、ついに矢筒は空に。

……タサキがやられてしまう!


 リューシャは、車内で体勢を整えながら剣を抜き、後部座席から身を乗り出すと飛びかかる獣の腕を斬り落とした。


「グアアアッ!」

 血飛沫が舞い、獣は転落する。

 だが、すぐに別の一体が続いて襲ってくる。


 田崎はブレーキを踏まず、アクセルを踏み込んだ。

 飛び出してきた豹猿をフロントで跳ね飛ばす。


「っ……くそっ!」

 ハンドルを切りながら叫ぶ。

 窓のない車内へ、血が容赦なく吹き込んでくる。



 背後で、爆ぜるような金属音が轟いた。

 森の奥で誰かが叫んでいるが、振り返る余裕はない。

 騎士団が追いついたのだ、と田崎は直感した。

 剣と爪がぶつかり合う音が森に響き渡る。



「三、四番隊はここで闇の軍勢を食い止めよ!」

「一、二番隊は我に続け!鉄の車を追う!」

 デルグラが命じ、数十騎の騎士たちがジムニーを追って駆け出す。


 車内ではルーが低く唸り、ホーガイは震えるイリナを庇うように伏せていた。


「だいじょうぶ……だいじょうぶだと思う……」

 唇の隙間から絞り出すように、田崎の声が漏れる。


 ジムニーはやがて斜面の最奥、岩場へと差しかかる。


 森の暗がりが消え、乾いた地面と灰色の岩肌が広った。

 だが、タイヤは岩に取られ、車体が大きく揺れる。

 その先に、運命の扉が待ち受けているように感じられた。


「また来た……!」

 田崎は前方を睨み、歯を食いしばる。

 岩陰から豹猿が躍り出るのが見えた。


「下がれッ!」

 グランが叫ぶとともに短剣がうなりを上げ、獣の喉に突き刺さる。

 ぐらついた獣の身体をすり抜けるようにして、ジムニーは急斜面を一気に駆け上がった。


 日が傾き、山の向こうへと夕陽が沈みかけていた。


 エンジンは息継ぎを繰り返し、異音が響いている。

 バックドアがわずかに開き、各種警告灯が鳴り響いていた。


「もう少し!頼む!」

 田崎の手に汗が滲む。


 その時だった。


「…小人の里!」

 オムカが叫び、身を起こすと杖を掲げ、印を結び歌うように唱え始めた。


 風が止んだ。


 岩の隙間から光が滲み、空気そのものが震え始める。


 夕焼けに染まった岩場の空間が、波紋のように揺らぎ始めていった。


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