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軽四駆X異世界疾風録 〜異世界転移したら愛車も一緒だったので、ボロボロになりながら帰ることにした  作者: タキ マサト
第三章 道なき旅路

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6 激戦、そして迫る影

 悲鳴と怒号が森の南端に響いた。

 異形の猿の群れが、警戒部隊めがけて一斉に襲いかかった。


 槍が折れ、剣が血を浴びた。

 その上空では、羽ばたきの渦を作り、翼を持つ羽猿の群れが天幕を目指して急降下していた。

 帆布が切り裂かれ、書記官がそのまま連れ去られていく。 

 断末魔が尾を引いて森に吸い込まれた。


 羽猿の群れが襲い掛かる。

 弓兵たちが応射するが飛翔が不規則で的を絞れない。

 上空に翻るのは、濃い煙のような影と羽音、そして人の叫び。


 一際大きな鬼猿が、隊列を蹴散らすようにして突進していた。

 手には打撃用の鉄棍。一振りで数騎の騎士が吹き飛ぶ。

 地を這うように疾走する豹猿が、地面に落ちた騎士の首元に食らいつた。


 騎士団は後退し、陣形は乱れていた。

 数で圧倒されている。


 だが、


「本隊、前進!第二隊、左翼へ!騎馬隊は右側面を突け!弓隊は合図まで待てッ!」


 天幕の外、騎乗した部隊長ヴォルノが鋭く命令を飛ばした。

 剣の紋章が刻まれた天幕の周囲から、複数の伝令が一斉に走り出す。


 前線を指揮する騎士長が、戦場を睨みつけながら叫んだ。


「奴らの群れに惑うな!陣を保て!各中隊、中心へ集まれ!反撃の刻は近い!」


 展開していた部隊が、街道沿いから続々と命令に従って集結してくる。

 騎馬隊が迂回し、盾兵、槍兵、弓兵が次々に合流する。

 騎士団は再び陣形を取り戻しつつあった。


 連携と鍛錬が戻りつつある騎士団の戦列は、じわじわと押し返し始めていた。  


   *


 激戦には目もくれず、闇の森を西へ向かって走る一団があった。


 先頭に立つのは若い猿使いの男。

 その肩に、黒い羽根の生えた子猿が止まっている。

 彼の後ろに続くのは、鬼猿を乗せた豹猿たちの小部隊。

 毛並みを揺らし、全身の筋肉が弾けるように跳ねる。

 

 先頭には一つの影が走る。

 ジムニーの居場所へと軍勢を誘導していた。


「迂回する。奴らより先に……鉄の箱車を砕け」


 猿使いは低く呟いた。

 あの乗り物の異様さは森に伝わっている。

「忌まわしき鉄の箱車 、森を穿ち、獣を怯えさせる異物…」

 必ず止めねばならない。


 並行するように街道を駆けるのは、封印奪回班の騎馬軍団。

 馬を駆り、隊列を保ったまま、彼らは北西へと進んでいた。

 森の奥へ、封印の在り処へ。



   *



 一方、ジムニーはついに木立の間を抜け、街道上へと飛び出した。

 サスペンションはへたりきり、衝撃を受け止められない。

 スピードを上げるたび小さな鉄の箱は、跳ね馬のように街道を駆けた。

 しかし風圧でまともに前が見えない。目を細め焦る心を抑え、減速せざるを得ない。


「……出た……」


 激しく揺れる後部座席で、ホーガイが小さく呟く。

 胸に抱いた娘の顔は蒼白で、まぶたがぴくりと揺れている。


 助手席ではグランが剣に手を添えたまま、周囲の林を注視していた。

 リューシャは振り返り、田崎の背を見ていた。

 その姿に、何か祈るような気配を感じる。


 背後に狼煙が上がり、続け様に黒い気配が湧き上がった。


「……来るぞ」

 グランの言葉に、全員の緊張が跳ね上がる。

 森を見上げると、枝葉の間に黒い影がわずかに見えた。


 車内は張り詰めた静寂に包まれた。

 田崎はハンドルを強く握り、前を見据える。

 北西へ。オムカの杖が指し続けるその先へ。


 車体が跳ね、フレームが軋む。

 田崎はハンドルを押さえ込みながら、ちらりとメーターに目を落とした。


「後、どれだけ走れる……?」


 燃料計の針がまた下がっている。

 田崎の胸の奥に、小さく針で刺すような焦りが広がった。


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