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第90話 華麗なる一族

「ありがとう、助かった」


映画に出てきそうな高級車の車内で、翔太は吐き出すように言った。

張り詰めた緊張が解けたものの、まだ心拍数が落ち着くまでは時間がかかりそうだ。


「――それで、俺はどこに連れて行かれるの?」

「私の家です」


(やっぱりそうか……)

翔太の知る限りでは、霧島プロダクションの仕事でこのような高級車を見ることはなかった。

少なくとも名目上は白川の素性は明かされていないのだろう。


「ちなみに拒否権は?」

「ありません」


翔太は降参のポーズを取った。

助けてもらった手前、従うのが筋だろう。

それに、あの場になぜ白川がいたのかも気になっていた。


***


(うわー……すごい家だ)

到着した先は日本家屋の豪邸だった。

建物は伝統的な美しさと現代的な快適さを兼ね備え、洗練された空間を演出していた。

庭園は手入れが行き届いていて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。


「柊くんだね? 私は綾華の父で、白鳥詮人(しらとりあきと)という」


(綾華は本名なのか)

翔太は白川の本名を名字だけ知っていた。

石動の同僚である白鳥の妹が白川だと気づいていたためである。 ※1

ちなみに、石動は白川の存在を知らない。


渡された名刺には『白鳥不動産 代表取締役』と記載されていた。

白鳥不動産は白鳥グループの一角を担う国内でも有数の大手不動産会社だ。


詮人は白鳥をダンディにした感じのイケメンで、細身で紳士的な印象を持ちながら、圧倒的な存在感を漂わせていた。

その雰囲気から、白鳥グループの血縁だけの理由でこの地位に上り詰めたのではないと感じられた。


「柊と申します――」

「持っている名刺は全部ほしい」


詮人は名刺を差し出そうとした翔太に先回りして言った。

翔太の社会人としての肩書は、アクシススタッフ、アストラルテレコム、霧島プロダクション、翔動があり、どの名刺を差し出そうか迷っていた。

詮人は翔太の素性をよく把握しているようだ。


「うむ、聞きたいことはいろいろあるし、柊くんも知りたいことがあるだろう。

夕食を用意しているので、食事をしながら話そう」

「ごちそうになってしまってよろしいのでしょうか?」

「もちろんだよ。綾華もそのほうがいいだろ?」

「はい、ぜひ」


翔太は詮人と白川に先導され、食堂まで案内された。


「あら? 」

(うわっ! 筒井紗華(つついさやか)だ!)


翔太は食堂にいた美しい女性に驚いた。

子供の頃からよく知っている大女優だった。

艶やかな髪は白川と同様に美しく、肌は透き通るように白く、きめ細かい。

当時は憧れの存在であった美しい女性を目の前にして、落ち着きかけた翔太の心拍数は再び高くなった。


白川は表情には出さないものの、不機嫌に見える。

彼女はSOS団に所属する宇宙人のように無表情だが、それでも感情の変化は感じ取れるようになってきた。


「ご挨拶が遅れました。綾華の母、紗華です」

「……あっ! そうですよね……柊と申します」

「どうかしましたか?」

「失礼いたしました。てっきりお姉様と思ってしまいました」

「あらあらあらあらあら!……どうしましょ」


紗華はまんざらでもない表情でパタパタと火照った顔を手で仰いでいる。


(そっか、結婚して女優を引退したのか)

翔太は自分の勘違いが恥ずかしくなり、赤面した。

白川は翔太をジト目で睨んでいた。彼女がこのような表情をするのは日食を見るより珍しい。


「綾華、柊くんと少し話があるから、その間に着替えてきなさい」

「かしこまりました。柊さん、後ほど」


白川は丁寧な所作で会釈して去っていった。

(家でもこんな感じなのか……疲れないのかな? ……え、えええぇっ!)


詮人と紗華の取った行動に翔太は驚きのあまり悲鳴を上げそうになった。


二人は翔太に深々と頭を下げていた。

※1 「俺と俺で現世の覇権をとりにいく」 第4話 https://ncode.syosetu.com/n7115kp/4/

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― 新着の感想 ―
なろうでは 俺と俺なしで この小説だけで話進めて欲しいなぁ
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