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第89話 一触即発

「赤澤はここで待機」

「はっ」


少女は運転手らしき男性に指示を出し、黒塗りの高級車から降りて翔太の元へと歩み寄った。

絶体絶命のピンチに現れた可憐な少女は、翔太がよく知る人物であった。


「あ、綾華?!」


白川が乗ってきた車のほかに、数台の車が押し寄せ、中からは黒いスーツを着た屈強な者たちが翔太と白川を守るように控えていた。ちなみに、サングラスはかけていなかった。

(え、SPのはずはないか……ボディガードか?)


「なんだぁ? 嬢ちゃん」


血の気が多そうな組員が白川に近づこうとしたところ、ボディガードにあっという間に押さえつけられた。


「くっ……この!」

組員は鬼のような形相で白川を睨みつけていたが、彼女は凛とした表情で眉一つ動かさなかった。

背筋はピンと伸びていて、無機物を見つめるように相手を見据えていた。


「この方は私が引き取らせていただきます」

「はい、そうですか……とは言えねぇな」


若頭が白川に凄んでみせた。

組員たちとボディガードたちとの間に、ピリピリとした緊張が走る。

翔太には、マッチやライターなどの少しでも可燃性のあるものが投下されれば、一瞬にして燃え上がりそうなくらい危険な状態に見えた。


こんな空気にもかかわらず、白川はまったく意に介さず、話し続けた。


「庭場組のみなさんですね。すでに柏葉不動産とは話が付いています」

「ってことは……白鳥の……」

「ご想像にお任せします」


若頭は「ふむ」と言いつつ、少し考え始めた。


「……」


その間も、組員たちはボディガードたちに敵意を剥き出しにしていた。

指や首をポキポキと鳴らす者、中には武器と思われるものに手をかけている者たちもいた。

正に一触即発の状態である。


「おい、お前ら、引き上げるぞ」

「し、しかし……」


若頭の一言に組員たちの動揺が走った。


「俺の言うことが聞けねぇのか!!!」


若頭の一喝に、組員たちは「ひぃっ!」と声を上げながらビルの中に引き上げていった。

残ったのは若頭だけだった。


「嬢ちゃん、名前は?」

「綾華と申します」

「どこかで見たことがあるような?」


よもやトップアイドルがこのような場にいるとは思いもしないだろう。


「……」


若頭は白川を頭のてっぺんから爪先まで舐めるように視線を這わせていた。

再びボディガードたちから、緊張感が漂った。


「気の所為ではないでしょうか。失礼いたします」


白川はそう言って、踵を返した。

続いて翔太の手を引き、車の中に引きずり込んだ。


「へ? ちょっ……」

翔太は目まぐるしい展開に頭が追いつけなかった。


「赤澤、出しなさい」

「承知いたしました。柊様、シートベルトをお締めください」


翔太と白川を乗せた高級車は音もなく走り出した。

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