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第68話 ファンクラブ

「コンコンコン」

翔太は歩けるようになっていたため、病室から出て歩こうとしたところで、ドアがノックされた。


「しょうたん!」「柊さん!」

「ぐはっ!」

ドアが開いた途端、星野と白川に抱きつかれた。

(おいっ、お前ら脇腹刺されてたの見てただろ……)


「うぐっ……えぐっ……」

二人は翔太に抱きついたまま、嗚咽を漏らしていた。

彼女たちは一般的な社会人よりも遥かに働いているが、年相応の感情を見せられると、翔太はそれ以上何も言えなかった。

翔太は脇腹の痛みを隠しながら、二人の頭をなでた。


(この場面を見られたら、社会的に即死だな……)

女性、未成年、アイドル、スキャンダル、取引先――どの要素を取ってもアウトである。


「川嶋さんもありがとうございました」

翔太は後から入ってきた川嶋に礼を言った。

現場の事後処理は橘から川嶋に引き継がれていたことを聞いていた。


「こちらこそ、鈴音を助けていただき、ありがとうございました」

翔太は川嶋からお見舞いの品を受け取った。

クッキーだった。


「二人共、柊さんに迷惑かけちゃだめよ」

川嶋はそう言って病室を出た。

どうやら、この状況からは助けてくれないらしい。


白川のマネージャーの黒田は来ていないようだ。

翔太は、黒田も白川と同様に謎が多いと感じていた。


***


「――それで、しょうたんがピンチのときに、れいちんが颯爽と現れて、回し蹴り一撃で仕留めたのさ」

落ち着いた星野は、橘の武勇伝をドヤ顔で語っていた。


橘は武術の心得でもあるのだろうか?

(もはや、どんなスキルを持っていても驚かないけど)


「橘さんがめちゃくちゃカッコいいけど、俺がカッコ悪いな」

「まあな」

「おいっ!……っていっても結局助けられなかったのは事実だからなぁ」


翔太は自分の不甲斐なさを嘆いた。


「でも、しょうたんがあのタイミングで来んかったら、あたしもどうなってたかわからんもんなー……

これでも、めちゃんこ感謝してるぞい」

「はいはい」


白川は、翔太と星野が照れ隠しで会話している様子を眺めていた。

相変わらずの無表情だが、ほんのり怒っているようにも見える。


「それで、Paws内に橘さんのファンクラブができてしまいました」

「そりゃ、できてもおかしくないよな」


傍から見れば、お姫様のピンチを救った王子様だ。

惚れない要素を探す方が難しいだろう。

男装した橘を見たら、ガチ惚れするのではないだろうか。

(あれ? 状況的には俺もお姫様じゃん……)


「で、しょうたんのファンクラブもできてしまったぞい」

「げっ?!」

「なんでじゃ?あたしのピンチを救った王子様ぞ!」

「そう見えなくもないのか……? 俺の場合はまんまと返り討ちにあったけど」

「あの、柊さんもかっこよかったですよ?」

「アリガトウ」


自分のフォローを信じてもらえなかった白川は「むぅっ」と頬を膨らませた。

このメンツであれば表情を取り繕う必要がないのだろう。


「まー、あたしが両方のファンクラブの会長になったから、安心しろや」


翔太は、立ち回りが上手い星野が管理してくれるなら、おかしなことにはならないだろうと安堵した。

杜氏原のようにヤンデレ化したら手に負えない。


「おまー、ほっこりしてるけど、アイドルだって性欲あるんだからな! 貞操がどうなってもしらんぞい」

「げほっ」


父親のような心境でほんわかと二人を眺めていたら、星野から強烈な一撃が飛んできた。


「あたしは分別あるから無害だぞ……多分」

「私も無害です……多分」

「……二人共、最後の二文字いらないよ?」

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