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第320話 潜入

「はい、ユーザが増える時間帯があるので、そのときだけスケールしたいんです」

翔太はありもしない仕事の相談をしていた。


スーパーフィールドのオフィスでは、同社の担当社員に対して翔太と橘が新規案件の相談を行っていた。

オフィスはこじんまりとしており、会議室はなく、オープンスペースでの打ち合わせとなっていた。


橘は翔太が会ったばかりの頃のイケメンバージョンに変装し、商談を進めている。

翔太はその部下という設定だ。


「ふむ、そうなると単にハードウェアを増強すると効率が悪いですね」

対応した社員は親身になって要件を聞いてくれている。


スーパーフィールドはいたって普通のオフィスで、これといって怪しい感じはまったくなかった。

企業のウェブサイトもよくあるデザインで、取引先企業も名前が知れ渡っているところばかりだ。


(やっぱ、俺一人でよかったんじゃないかな……)

翔太は暴力団のフロント企業に橘を連れて行くのは抵抗があった。

橘のほうが強いのは百も承知だが、万が一彼女の身に何かあったりしたら、自分を許せないだろう。


しかし、橘は頑として同行すると言って聞かなかった。

たしかにスーパーフィールドの身元を確認したのは橘であり、庭場組で危ない目に遭った翔太を一人で行かせるのは心配だという気持ちも理解できたので、翔太は同行を承服するしかなかった。


「予算に関しては上の承認が必要なので、まずは概算がどのくらいになるかをお伺いしたいと思います」


今の橘は容姿もイケメンだったが、声もイケメンだった。

完全に別人になりきっており、もしかしたら演技の経験があるのではないかと思われた。

橘の経歴は神代と同様に謎が多く、それがより彼女の魅力を引き立てていた。


「ちょっと、資料を取ってきますので少々お待ちください」

社員はそう言って、席を外した。


「どう思います?」

橘は小声で翔太に話しかけてきた。


「至極真っ当なIT企業に見えますね。強いて言えば――」

翔太はとある女性にこっそりと目を向けた。


その女性は切れ長のつり目であるにもかかわらず、さらにそれをアイシャドウで強調しており、狐のような妖艶さを醸し出していた。

どこか日本人離れした整った容姿と、ブランド物を身にまとったその姿は否が応にも目立っている。


翔太はできるだけ目を合わせないようにしながら、その女性を観察したが、知っている範囲で思い当たる人物はいなかった。


「芸能界には?」

「いえ、見ない顔ですね」


橘は端正な顔で思案していた。

あまりのイケメンぶりに、数少ない女性社員の視線を一斉に集めていた。


翔太もメガネをかけるなど、軽く変装しているが、橘の変装は完璧だった。

それゆえに、その姿で翔太にだけ元の女性の声で話しかけられると、脳がバグりそうだった。


(見た目とか、身分とか、いろいろ準備してきたけど、今日は収穫なしかな?)

翔太がそう思った矢先に思わぬ人物が現れ、思わず反応しそうになり、必死にこらえた。


「リンファさん、あの件の首尾はどうでしたか?」

名瀬が現れ、キツネ目の女性に話しかけていた。

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