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第312話 本気

「驚いた……マジで飛香だと思った……」

葵は小声で続けながら、翔太に渡された神代が映っている携帯電話の画面をまじまじと眺めている。


当然ながら、顔や服装などは目の前にいる見坂とは別人だが、神代の姿勢や表情が見坂を完全にトレースしていた。


「そこまで似せる必要なくない? でも、ホント凄すぎ……ん?」

以前から見坂と交流がある葵ですら見間違えるほどの神代の完成度に、彼女はしきりに感心していた。

一方で、そのモデルである見坂は盤面に集中している。


─────

葵さん、お願いがあります

─────


翔太は携帯電話のメモアプリに文字を打ち込み、見坂に気づかれないように見せた。

葵は「ええっい、まどろっこしい」と小声で言い、あろうことか翔太の携帯電話を取り上げ、連絡先を交換した。

この時代の携帯電話は、赤外線通信によって情報が交換される。


「ちょっ……大丈夫なんですか?」

翔太は努めて小さな声で言った。


葵は戦略的に露出を抑えており、芸能界の中でも葵とコンタクトを取れる人物はごく一部に限られている。

したがって、彼女の連絡先の情報は国家機密レベルと言っていいだろう。

彼女が所属する響音堂に知られたら、自分は消されるのではないかと翔太は思い始めた。


─────

葵奏> よろしくねん

─────


そんな翔太の内心もお構いなしに、葵はメールを送ってきた。


─────

皇> 大丈夫なんですか?

葵奏> ヘーキヘーキ

─────


翔太は霧島プロダクションの皇としての携帯電話が支給されている。

(まぁ、俺は悪くないよな……)

翔太は対局中の見坂に申し訳ないと思いつつ、携帯電話を操作した。


─────

葵奏> で、お願いって?

皇> これから、見坂さんに本気を出してもらいます、その様子を写真に撮っておいていただけませんか?

葵奏> シャッター音が聞こえちゃうよ?

皇> 私の端末は音が鳴らないので大丈夫です

葵奏> お主も悪よのう

─────


葵は悪代官のような表情をしながら、にまにましている。


─────

葵奏> ドラマの中にそういうシーンがあるのね

皇> ご理解が早くて助かります

葵奏> でも、どうやって飛香に本気出させるのさ?

─────


葵の疑問はもっともだ。

対局は平手で行われており、トッププロの見坂は万が一にも自分がアマチュアの翔太に負けるとは思っていないだろう。

翔太は葵の質問には答えず、そっと自分の携帯電話を彼女に渡した。


そして、翔太は☗6六銀と、パシーンという駒音とともに力強く指した。


「――っ!」

見坂の表情は一変した。

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