第301話 女優たちの盤外戦
「光琳製菓杯? って何ですか?」
翔太が止める間もなく、雫石が興味を示してしまった。
案の定、前潟は不敵な笑みを浮かべていた。
「将棋の団体戦の大会なんですよ!」
すかさず八街が説明を始めた。
こうなってしまったら、翔太には流れを止められなかった。
八街によると、女性の将棋人口を増やすことを目的とした大会で、団体戦で行われるようだ。
特徴として、出場する団体は男女二名ずつで構成される必要がある。
さらに大将戦はペア将棋で行われる。
ペア将棋は男女のペアが手番ごとに交互に指し、女性が初手を指す。
スポンサーはその名の通り、光琳製菓だ。
アマチュアの大会のため、プロや奨励会員は出場できないが、前潟は元奨励会員であるためか出場資格には問題ないようだ。
「へぇ、面白そうな大会ですね」
「ちょっ!……神代さん?」
神代まで乗り気になっていた。
(こ、この流れは……)
「だって、光琳製菓さんにはいつもお世話になっていますし」
「そうですね」
神代の返答に檜垣が同意した。
「そ、そうだった……」
神代は光琳製菓のCMに出演しており、その商品は誰もが知っている。
檜垣としては雫石を売り込むチャンスでもあり、この場では翔太だけが孤立無援となっていた。
「私はこの大会で、必ず優勝します!」
「おおぉっ! ちなみに、誰と組まれるんですか?」
前潟の宣言に、八街はメモを取りながら興奮していた。
「それはまだ秘密です。ですが、きっと八街さんも満足されると思います」
前潟は不敵にそう言いつつ、雫石に視線を送った。
「面白そうですね。私も参加します」
(ああぁ……やっぱりいぃ……)
「なんと! これは盛り上がるぞ!」
八街の興奮は最高潮に達していた。
「あら? 団体戦だけど、一緒に戦ってくれるアテはあるの?」
前潟は上から見下ろすように雫石に言い放った。
対する雫石は王者のように悠然と構えながら、神代に目線を送った。
「私も参加したいです」
(だよなぁ)
神代も勝負事が好きなことはわかっていた。
そして、その後の展開も容易に想像でき――
「「皇さん、出てくれますよね?」」