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第296話 オーバーテクノロジー

「負けました」

静謐な離れの和室で、屋神は深々と頭を下げて投了した。


(あ、危なかったぁ……負けるかと思った……)

翔太は中盤の屋神の鋭い手の連発に、形勢では押されていたのではないかと思っていた。

逢妻も翔太と同じ判断だったようで、興奮を抑えながら盤面を見つめていた。

しかし、そのときの盤面は極めて難解であり、アマチュアの翔太では理解できる範囲を超えていた。


「そんな……A級棋士が負けるなんて……」

逢妻は目の前に起きたことが信じられないようだ。

冷めたお茶を一気に飲み干しながら、再度終局した盤上を見つめている。


「うーん……途中、余せそうな場面もあったように見えたのですが、終盤では完敗でした」

対する屋神は晴れ晴れとした表情だった。


「皇くん、彼は一体誰なんだ? 本当はプロなんだろ? まさか生稲さんか!?」

逢妻は翔太に詰め寄った。

逢妻の中では正体不明の指し手が男性であることが確定しているようだ。


(さて、どう説明したものか……)

今の翔太は、電話の向こう側にいた指し手のことを明かせる段階ではなかった。


「皇さん、神代さんと雫石さんの件ですが、ぜひ私に協力させてください」

「いいんですか!?」


屋神からのあまりにも都合がよい申し出に翔太は驚きを隠せなかった。

これは泳ぎを覚え始めた子供に、オリンピックでメダルを取った水泳選手が泳ぎを教えるくらい贅沢なことだ。


「その代わり、また、()()()と対局させていただけませんか?」


***


「ただいまー」

「おー……えらい遅かったな……」


翔太は、石動と新田が待つ白鳥ビルに戻ってきた。


「えぇっ!? 柊なの!?」

新田は皇に変装した男が、翔太であることを聞き、珍しく感情を露わにして驚いていた。


「新田、今日は助かったよ」

「べ、べつにいいわよ……このくらい……」

「それにしても、この板っきれがA級棋士に勝ってしまうのか……」


石動はスマートフォンを眺めながら、信じられないと言った表情でつぶやいた。

新田は翔太から電話で伝えられた手を、スマートフォン上で代わりに指していた。


「ちょっと危ないところがあったんだけどな」

屋神は局後の感想戦で中盤の解説をしてくれていた。

翔太はスマートフォンの評価値を確認し、実際の形勢を確認していた。


「今日はプロ棋士が初めてコンピュータに破れた日になるんだな」

「非公式だけどな」


本来であれば、その日がくるのはもう数年後だが、オーバーテクノロジーでこれが実現してしまっている。


「いずれはコイツに追いつかないとな」

石動はスマートフォンを見ながらつぶやいた。


翔動ではプロに勝つことを目的とした将棋ソフトを開発している。 ※1

現在は三桁のサーバーがスマートフォンの対局棋譜を学習データとして、強化学習を進めていた。

この時代のハードウェアには限界があるため、性能差を量で埋める作戦だ。


「新田、このスマホとネット将棋と連動できないか?」

「うーん……難しいけど……やってみるわ」


翔太は屋神にインターネット上なら再戦できると約束していた。

今日のように代指しをすれば約束は果たせるが、いずれはこれを自動化したかった。


「盛り上がっているところアレなんだが……お前ら明日は休みな」

「「えっ?」」

※1 「俺と俺で現世の覇権をとりにいく」 第211話 https://ncode.syosetu.com/n7115kp/211/

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