第269話 意図的?
─────
またも当番組だけのスクープです!
この写真には人気アイドル白川綾華さんが若い男性と一緒にいる姿が写っています
とても仲睦まじいですね
どうやらお相手の方は一般人のようです
詳しくは続報をお待ちください
─────
テレビのワイドショーでは司会とコメンテーターが意気揚々と話していた。
以前に神代の熱愛報道をしていた番組だった。
「あ、綾華と……白鳥!?」
翔太は橘と社長室でこの番組を呆然と眺めていた。
「一人は綾華で間違いなさそうですね。もう一人は――」
さすがの橘も驚きを隠せない表情を浮かべていた。
「断言はできませんが、背格好からすると綾華の兄、白鳥義人だと思います」
「そうですか……」
一般人のプライバシーに配慮したのか、一緒に写っている相手の男性の顔は隠されていた。
写っている男性は白鳥でほぼ間違いなさそうだ。
柊翔太になってからも白鳥とは仕事で面識があったので、白鳥に関する記憶はしっかり残っている。
橘は情報として白川に兄がいることを知っているようだが、白鳥と直接の面識は無いようだ。
「このことは事務所には?」
「えぇ、一切報告は受けていません」
「そうですか……」
白川は神代と同様、誰にも気づかれないほどの変装ができる。
にもかかわらず、明らかに白川と判明する姿で公の場に出ていることに翔太は違和感を覚えた。
「色々と腑に落ちない点がありますね」
橘も同じ考えのようだ。
「変装は義務化しているのですか?」
「建前上、プライベートの行動に制約を入れることはできませんが、自衛はするように周知しています」
「なるほど……」
いかに芸能人といえど、外出時に常時変装をするのは非現実的であろう。
芸能界に疎い翔太でも、帽子やサングラスなどの最低限の備えは普段からしていると考えるのが自然だ。
「普通に考えれば、気を抜いたタイミングで撮られたということでしょうが……」
「綾華はそのようなミスをするとは思えません」
翔太は一緒に写っている相手が白鳥というのが気になった。
まるで身内であれば迷惑がかかる範囲が最小限になると言わんばかりだ。
「この件について黒田さんからは――」
マネージャーはプライベートの行動までは把握していないのが一般的だろうが、黒田は白鳥家の関係者だ。
彼女が白川の行動を把握していないことは考えにくい。
「ちょうど電話がきました」
翔太は橘に電話に出るように促した。
橘の通話中、翔太は思考を張り巡らせていた。
(この電話もタイミングがよすぎるな……)
「プライベートのときに撮られたようです、綾華が言うにはうっかりしていたそうです」
「やはりそうですか……おそらく意図的にやっていますね」
「そうですね」
おそらく橘は翔太と同じ考えを持っているのだろう。
そうなると、次にコンタクトをとるべき相手は――
翔太の携帯電話には予想どおりの相手から連絡が入っていた。




