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第263話 両建て

「それで、インフィニティスターズですが――」


翔太は長町が出演した歌番組でインフィニティスターズが優遇されていたことを橘に報告した。


「ふむ、そして女性アナウンサーを使った接待をしていることからも、メトロ放送がフォーチュンアーツと何らかのつながりがあることは間違いなさそうですね。

実は、インフィニティスターズ以外にもフォーチュンアーツのタレントが接待を受けているという情報もありました」


橘の情報が事実であれば、メトロ放送は明らかにフォーチュンアーツに便宜を図っていることになる。

彼女の性格上、確度の低い情報を鵜呑みにはしないだろう。


「巷で報道されているように、船井さんと刈谷社長は敵対関係のままです」

「イーストリースの件は片付いたのですか?」

「はい、途中から全部石動に任せていましたが、エッジスフィアは事業を継続できそうです」


イーストリースは業界最大手のリース事業者だ。

自動車、航空機、医療機器、建設機械など、多岐にわたる商品を提供している。


エッジスフィアはコンピューター機器の多くをイーストリースからリースで調達していた。

メトロ放送社長の刈谷とイーストリース社長の高畑は強いつながりがあり、刈谷は船井を追い詰めるために高畑に働きかけた。

その結果、エッジスフィアはイーストリースからリース契約を打ち切られ、窮地に陥った。

これに対応すべく、石動はエッジスフィアを助けるために色々と動いていた。 ※1


「シュナイダーの情報でも、船井社長と刈谷社長は敵対関係のままですね」


神代が扮するシュナイダーは船井と刈谷の両名から情報を得ていた。

特に刈谷は船井に対して強い対抗意識を持ったままだという。


「そうなると、メトロ放送がフォーチュンアーツに肩入れする理由が見つからないですね」


エッジスフィアとフォーチュンアーツは資本関係にあるため、メトロ放送がこれに反発してフォーチュンアーツを冷遇するなら理解できるが、現状は逆であった。


「柊さん、ほかにメトロ放送かさくら放送に影響力がある人物や組織はありますか?」

「……ああああっ!」


翔太は橘に指摘されて自分の見落としに気がついた。


「北山ファンドです」

「あぁ、なるほど」


橘は翔太の意図をすぐに理解した。


NZアセットマネジメントは投資顧問会社グループ、北山ファンドの通称として知られている。

エッジスフィアがさくら放送株を大量取得する前に、さくら放送の株主名簿にはNZアセットマネジメントの名前が加わっている。

その保有比率は10%にものぼっており、筆頭株主のエッジスフィア、メトロ放送に次ぐ大株主だ。


「フォーチュンアーツ……または東郷が北山ファンドに出資している可能性がありそうです」


ファンドの出資者は匿名性が高く、これを確認することは難しいが、フォーチュンアーツが優遇された時期を考えると辻褄が合う。


「北山ファンドはエッジスフィアに持ち株を譲渡する意向を示していましたが、TOBでより高値をつけたメトロ放送に寝返りました」

翔太はかつて自分が経験していることを言ったが、状況としては、その可能性が高まったと言えるだろう。


「おそらく、東郷はどちらが勝ってもいいように動いていたのでしょう」

「両建てか……してやられたな……」

※1 「俺と俺で現世の覇権をとりにいく」 177話 https://ncode.syosetu.com/n7115kp/177/

※2 同じ金融商品で買いと売りの両方のポジションを同時に持つこと

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