第250話 すごいゲスト
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長町美優の『みうトーク』
みなさん、こんばんは! 長町美優です
今日もみなさんと一緒に素敵な時間を過ごせることを楽しみにしています
リスナーの皆さんからのメールをたっぷりとご紹介していきますので、最後までお楽しみくださいね
今日はすごいゲストをお呼びしています
さぁ、誰が来るのかな?
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翔太はさくら放送の収録スタジオのコントロールルームで、長町がパーソナリティを務めるラジオ番組『みうトーク』の収録を見守っていた。
この番組は、数あるラジオ番組の中でも最も聴取率が高い。
翔太は長町に対してブログの閲覧数を伸ばすために、このラジオ番組を利用することを提案し、アドバイスをしたことがあるが、実際に収録を目の当たりにするのは初めてだ。
スタジオ内はピリピリとした空気に包まれていた。
その原因は今日のゲストの存在だ。
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こんばんは、船井です
なんと! 今一番話題になっているかたに来ていただきました!
そして、みなさんご存知のとおり、船井さんは今我々が中継をしているさくら放送を買収しようとしています
いやー、とんでもない展開にスタジオ内はピリピリしていますよ!
ははは、そうですね
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「よく出てくれましたね」
船井は超多忙であるため、出演してもらえる可能性は低いと翔太は考えていた。
「ええ、美優のファンだそうです。それに、船井社長の方針を伝える良い機会だと思ったのではないでしょうか」
「なるほど……」
橘は船井のプロフィールをしっかりと調査していた。
「よくOKが出ましたね」
石動はさくら放送にとって最大の脅威とも言える人物を番組のゲストとして呼び込むことができたことに驚いていた。
石動はある目的で船井と会わせるために、とある人物を連れてきている。
「この番組は美優が強い影響力を持っているんですよ」
長町のマネージャーである槻木は、収録ブースの長町の様子をハラハラと見守っていた。
番組のゲストの最終決定権はプロデューサーが持っているが、この番組は長町の絶大な影響力によって成り立っている。
長町がいないとドル箱となっているこの番組が成り立たず、ひいてはさくら放送の収益を大きく左右する。
もはや、長町はさくら放送の看板といえるだろう。
「それに、局内では船井さんの意向を確認しておきたいという意見もあるようです」
橘は番組スタッフへの根回しも行っていたようだ。
局内では、他業界の船井が放送局を牛耳ることを面白く思っていない者がほとんどだろう。
実際にグループ会社のメトロ放送では、銀行出身の逢妻がトップになったことで大きな反発を買っている。
エッジスフィアの買収が成功した場合、船井がさくら放送に対して絶対的な影響力を持つことになる。
当事者であるさくら放送の関係者にとって、船井がどのような意図をもって買収を仕掛けているのか、気になるのは当然だろう。
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それではスタジオの空気を読まずに、じゃんじゃん質問していきますね
なんでも聞いてください
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さくら放送の開局史上、最も高い聴取率を記録した番組が始まった。




